第51話 祝勝会
「さ、とにかく今晩は一杯飲み食いしよう!」
「スピィ♪」
ギルドを出た後、僕たちは夕食を摂るために店を探すことにした。
エクレアとスイムはどこかルンルンとした様子で一緒に歩いている。楽しそうな姿を見てると何だか僕もウキウキした気分になってくるね。
ダンジョンでは僕の家の事情に巻き込んじゃった。エクレアは仲間同士困ったときはお互い様とは言っていたけどやっぱり迷惑掛けちゃったのには変わりないし……うん。今日は僕の手持ちから出そう。
「あ、あそこなんてどうかなネロ?」
それに確か巷ではデートの時は男が支払うのが礼儀という話もあるようだし。いや、勿論これはデートではないけどね。でも、やっぱりこういう時に余裕を見せるのきっと男の甲斐性って奴なんだよね!
ま、女の子と付き合ったこともない僕にはまだまだよくわからないことではあるんだけど……。
「ちょっとネ~ロ!」
「え? うわ!」
エクレアの顔がひょこっと目の前に現れた。いやエクレアが覗き込んできたのか、び、びっくりした!
「もう! どうしたのよぼ~っとして」
「あ、いや。あははごめんごめんちょっと考え事してて」
「スピィ?」
エクレアが腕を組んで呆れていた。スイムは首をかしげたような仕草を見せているよ。
「あ、もしかして――」
「う……」
もしかして今考えていたことを見抜かれたかな? エクレアも結構鋭いところあるから……。
「街に戻ってきた時にすれ違った二人のことまだ考えてるの?」
「え?」
エクレアから指摘されて思い出した。そういえばそんなことがあったよね。エクレアはそのことを考えていると思ってくれたのか。
「違うの?」
「い、いや実はそうなんだ。どうも気になってね」
「う~ん。私からは普通の二人に見えたけどね」
「あ、うん。冷静に考えたらやっぱり気にし過ぎだよね」
エクレアが形の良い顎に指を添えて思い出してくれていた。僕も何となく思い出したけど、きっと何もないよね。
「そ・れ・よ・り。ねぇこの店どうかな? 安くて美味しいって聞いたことあるんだ~」
「へぇ。そうなんだ」
「スピィ~」
スイムも興味を持ったようだね。店の名前は安食亭だ。確かに安くて美味しいならいいと思うけど、今日みたいな日にいいのかな?
「ここでいいの? もっと高いところでも大丈夫だよ?」
「ネロはそっちがいいの?」
「いや。僕はエクレアが好きなところでいいんだけど」
「いや、私だけじゃなくてネロも気に入った店がいいよ」
「あ、でも」
「スピッ♪ スピィ~!」
僕たちで話してるとスイムがピョンピョンっと店の近くまで跳ねていき早く入ろう? といいたげに鳴いていた。
「プッ、ふふ、スイムには敵わないよね」
「はは、そうだね。じゃあ折角だからスイムの気に入ったこの店で食べようか」
「スピィ~♪」
改めてスイムを抱えて店に入る。中は結構広いんだけど今日は混雑してるのか席は満席に近そうだ。
「お客様はお二人ですか?」
「えっと僕と彼女と、あとこの子はスイムというのですが」
やってきた店員に聞かれたのでスイムも紹介する。スライムは駄目ってことはないよね?
「あら、ウフフ可愛い。勿論ペットも問題ないですよ~。ただご覧の通りかなり混雑してまして、可能なら五人掛けの席で他のお客様との相席をお願い出来ると嬉しいのですが」
あぁなるほど。そういうことなんだね。僕は別に構わないんだけど。
「どうしようエクレア?」
「私は構わないわよ。混んでる時はお互い様だもの」
「スピィスピィ~」
うん。エクレアがそういうなら問題ないね。
「はい。それなら相席でもお願いしたいです」
「わかりました。念の為もう一組のお客様にも確認してまいりますので」
あぁそっか。僕たちが良くても相手が駄目ってこともあるもんね。
「おまたせしました。相席でも問題ないようですのでどうぞこちらへ」
どうやら相手側も問題なかったようだね。そして店員に案内されて席に向かったのだけど。
「ではこちらの席で相席お願い致します」
「はい。て、あれ?」
「ゲッ! ネロ!」
「え? 嘘ネロ!?」
「こんな偶然あるんですねぇ」
あはは……僕もびっくりだよ。まさか相席の相手がガイ達だったなんてね――