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第49話 不穏な二人

「あの女がギルドマスターの娘。エクレアか」

「あぁ。今回のターゲットの一人だな」


 男たちが場所を変え密かに話し合っていた。


「後は勇者の紋章を持つガイというのがそうだな」

「そっちはパーティーごとやる必要があるだろう」


 二人の密かな話は続く。


「だがもう一人の魔法師――まさか俺達の紋章が視えていたのか?」

「そんな馬鹿な。これは同じ紋章を持つ者同士しか視えない。だがあいつは無能な水の紋章だったぞ。まさかお前の能力みたいのでごまかしてるわけじゃないだろう?」


 片方の男が怪訝そうな顔を見せる。


「わからないが念の為、偽装しておいたのは正解だったかもな」

 

 もうひとりの男が右手の甲に指を添えると黒い紋章が姿を見せる。


「だがもしこれが視えるとしたら組織でも面倒なことになる。どうやらトール家のエクレアと行動を共にしてるみたいだしな。一緒に片付けてしまうか」

「ハッ。ま、所詮水属性の雑魚だ。どうとでもなるだろうさ。あいつも準備を進めてるわけだしな――」


 そして二人組の男は人混みの中へと消えていった――





◇◆◇


 その足で僕たちは冒険者ギルドに戻ってきた。


「二人共おかえり。無事で良かった~それで二人で初めてのダンジョン攻略はどうだったのかなぁ?」


 説明するためにカウンターに向かうと、フルールは何故かちょっとワクワクしてそうな顔で聞いてきた。ただ、今回の攻略は色々なことが重なりすぎて説明するのも大変かもしれない。


「実はただの攻略では終わらなくて……途中でアクシス家からの妨害が入ったのです」


 元自分の家のことだけに、身内の恥を晒すようなものだけど放置してはおけない。僕とエクレアはダンジョンで起きたことを要約してフルールに聞かせてあげた。


「う、嘘。そんな危険な事があったの!? それにアクシス家って、えっと、どうしよう頭がこんがらがるよ~」


 あぁ! フルールが目を回している!


「おう。戻ってたのか。で、どうだった? てかネロ! おまえ娘に手ェ出してねぇだろうな!」


 フルールが目玉をグルグルさせているとタイミングよくマスターのサンダースが顔を見せてくれた。良かったマスターにも説明しておいた方がいいとは思っていたんだ。


「もうパパそれどころじゃなかったのよ。私ダンジョンで危なかったんだから!」

「……ほう。ネロちょっと来い。娘についてお・は・な・し、しようか」


 サンダースが拳をポキポキ鳴らしながら僕の首根っこを掴んだ。不味いこのままじゃ何だかよくわからないけどただでは済まないぞ!


「パパ何を勘違いしてるのよ!」

「スピッ、スピィ!」


 ずるずると僕を引きずっていこうとするサンダースへ、エクレアとスイムが誤解だとアピールしてくれた。サンダースが小首をかしげて口を開く。


「勘違いって、こいつがダンジョンで二人きりなのをいいことにお前を襲ったんだろう?」

「だから違うんだってば! そうじゃなくて私もネロも襲われた方!」

「あん?」


 そして僕たちはサンダースに言われてマスターの部屋で事情を話すことになった。


「はぁ……何か隠してるなと思ってたがまさかネロ。お前がアクシス家の人間だったとはな」

「あ、いや。それは元で今は追放されてしまっているので……」


 僕が家名を名乗らなかったのは追放され、今後アクシスの名前を使うのは禁ずるとされていたからだ。


 向こうからしても、もう僕はいなかったことになってるわけだし、敢えて自分から伝える必要もないと思ってたんだけどね……。


「まぁ冒険者ギルドはよほどのことがない限り過去の詮索はしない決まりだ。それ自体でどうのこうの言うつもりはねぇよ。だが追放しておいて殺しにくるとは穏やかじゃねぇな」


 腕を組みサンダースが真剣な顔で語る。


「おまけにうちの娘まで狙うとはな。絶対に許しちゃおけねぇ、が――そのハイルトンって執事には逃げられたんだろう?」

「はい……申し訳ないです」

「だから謝ることじゃねぇ。盗賊雇って襲ってきたのは向こうなんだろう? で、その盗賊の所持品は持ってきたわけだ」

「はい。それは回収してます」


 サンダースに聞かれて素直に答えた。何かしら証拠になってくれるといいんだけど。


「わかった。じゃあそれは後で受付で預けておいてくれ。それとこれから調査部を動かして二人を襲った盗賊の死体近くに向かわせる。まぁ魔物に喰われてる可能性も高いが、何かしらアクシス家に繋がる物が見つかるかも知れねぇしな。当然冒険者ギルドからもアクシス家には追求させてもらうがな」

「流石。やっぱりパパはこういう時に頼りになるわね」

「へっ、別に大したことじゃねぇさ」


 エクレアに褒められてサンダースもまんざらじゃなさそうだね。


「ただし、簡単では無いことも確かだ。娘狙われて頭に来てるのも確かだがアクシス家は魔法師の家系として名を馳せている名門だ。そう簡単に切り崩せるもんじゃねぇ。相手が素直に認めるとも思えないしな……」


 確かにそれはそうだと思う。自分で言うのも何だけど僕が育ったあの家は兄弟姉妹含めて曲者揃いだからね――

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