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【WEB版】水魔法なんて使えないと追放されたけど、水が万能だと気がつき水の賢者と呼ばれるまでに成長しました~今更水不足と泣きついても簡単には譲れません~   作者: 空地 大乃
第八章 救いたい仲間たち

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第303話 嘘つきの集まる馬車

いつも感想や誤字脱字報告を頂きありがとうございます!

 情報屋だと言い出した男の言葉に、僕は思わず身を乗り出しかけてしまった。


 けれど、その前にガイの腕が僕の肩を押さえる。


「……お前は黙ってろ」


 低い声だった。


 さっきまでの軽口とは違う。完全に警戒している時の声だ。


「ほうほう。随分警戒してますねぇ」


 男は笑う。

 目が細く、口元だけがやけに大きく歪んでいる。


「別に怪しい者じゃありやせんよ。あっしはただの情報屋。アークレイズにゃ長年通ってましてねぇ」


「だったら尚更怪しいな」


 ガイが吐き捨てる。


「情報屋なんて名乗る奴にロクな奴はいねぇ」

「いやいや、そんな言い方はないでしょう」


 男は肩をすくめて続けた。


「ほら、あんたらも何か探してるんでしょう? 恋人とか」

「違う」

「じゃあ商売?」

「違う」

「……人探し、とか?」


 その言葉に、僕の心臓がドクンと跳ねた。


 それを見逃さなかったのか、男の口元がゆっくりと吊り上がる。


「ほうほう。なるほどねぇ」


 その目は完全に僕たちを値踏みしていた。


「もし人探しなら、あっしは役に立てるかもしれやせんよ。アークレイズは広いですがねぇ、情報の集まる場所ってのは決まってましてね」


 そして男の視線が僕に向く。


「あっしの予想では探し人は――冒険者では?」

「え、あ、その」

「ネロ、何も言うな」

「あんたも警戒心高いねぇ。だけど冒険者なのは間違いないんでしょう?」

「――」


 ガイは沈黙を通す。男が顎を擦った。


「探し人は女――」


 ドキッとなった。


「やっぱりそうですか。実は行方不明になった女の話があっしの耳にも入ってましてね」


「え! 本当ですか!」

「スピィ!」


 思わず声が出た。一方でガイも訝しんでいるようだけど、男の情報が気になっている様子でもある。


「その情報くわしく!」

「おっと、気が早いですなぁ。でも、わかるでしょう?」

「――情報料を払えってか?」

「はは、よくわかってらっしゃる」


 男は手を擦り合わせる。


「情報には値段があるんでさぁ」


 やっぱりそういう流れだ。

 けれど、その瞬間だった。


「……全く見てられへんな」


 後ろから声がした。

 訛りの感じられる、少し呆れたような女の声。


 振り向くと、そこに一人の女が立っていた。


 長めの外套を羽織った細身の人物。

 少し吊り上がった目で、僕たちと男を交互に見ている。


「なんや兄さん」


 女は男に向けて言う。


「その手口、まだやっとるん?」


 男の顔が一瞬だけ固まった。


「……なんのことですかい」

「とぼけんでもええ」


 女は肩をすくめる。


「恋愛、商売、人探し。反応見てから話を合わせ、そこから話を掘り下げていき信じさせるんやろ。いつもの手や」


 馬車の中の空気が少しざわついた。


「こいつ、情報屋ちゃうで」


 女はあっさり言い放つ。


「ただの詐欺師や」

「な、何を言いやがる!」


 男が声を荒げる。


 けれど女は全く気にした様子もない。


「ほんまに情報屋ならな、最初から情報の種類言うてくるわ」


 ニヤリと笑う。


「それをせぇへんのは、何も持っとらんからや」


 男の顔が完全に引きつった。


 そして舌打ちをして、


「……チッ」


 そう言い残すと、そそくさと別の席へ戻っていった。


 馬車が静かに揺れる。


 僕はしばらく呆然としてしまった。


「……助かった、のかな?」


 思わず呟く。


 すると女は僕を見て苦笑した。


「まぁ、そういうことやな」


 そのまま席に戻ろうとする。

 けれど、その前にガイが口を開いた。


「待て」


 低い声だった。

 女が足を止める。


「……なんや?」

「お前は誰だ」


 ガイの目は鋭い。


「随分都合よく出てきたな」


 疑いの視線だった。


「詐欺師を追い払ったのも、芝居じゃねぇのか?」


 馬車の空気が少し張り詰める。

 女は一瞬だけガイを見つめてから、


「はぁ」


 小さくため息をついた。


「疑い深いなぁ兄さん」


 肩をすくめる。


「まぁええわ。うちはただの通りすがりや」

「名前は?」

「……ライカ」


 あっさり答える。


「それ以上は秘密や。素性を明かさんのはアークレイズなら当たり前やで」


 そう言って軽く手を振ると、


「ほな」


 自分の席へ戻っていった。


 しばらく沈黙が続く。


 やがてライトニングさんが静かに口を開いた。


「ネロくん」

「は、はい」

「今みたいに、言葉で人を騙そうとする輩は多いわ」


 さっきの男が座る席をちらりと見た。


「アークレイズへ向かう馬車は特にね。だから気をつけなさい」

「はい……」


 僕は頷いた。


 でも――


 さっきのライカって人。


 あの人も、本当にただの通りすがりなんだろうか?


 そんな疑問が、僕の頭の中に残り続けていた。

本作のコミカライズ版最新第2巻が好評発売中です!

どうぞ宜しくお願い致します!

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