表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【WEB版】水魔法なんて使えないと追放されたけど、水が万能だと気がつき水の賢者と呼ばれるまでに成長しました~今更水不足と泣きついても簡単には譲れません~   作者: 空地 大乃
第八章 救いたい仲間たち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

305/306

第302話 アークレイズ行きの馬車に乗る

いつも感想や誤字脱字報告を頂きありがとうございます!

 山を越え、川を渡り、何日も野宿し、魔物にも襲われ、盗賊ともやり合った。


 そのすべてを乗り越えて――


 僕たちはついに、アークレイズ行きの馬車へと辿り着いた。


 森を抜けた先の開けた場所に、それは停まっていた。

 黒塗りの車体に、屋根はあるが側面に壁はない簡素な造り。

 御者台には、無精ひげを生やした男が無言で座っている。


 ライトニングさんが一歩前に出た。


「夜霧は深いかしら?」


 御者が一瞬だけ目を細める。


「深いが、星は沈まねぇ」

「なら道は閉じていないわね」

「……乗れ」


 短いやり取り。


 僕には意味が分からなかったけど、それが合図だったらしい。


 御者が顎で馬車を示し、僕たちは静かに乗り込んだ。


 馬車は既に数名の乗客を乗せていた。


 黒いローブに身を包んだ痩せた男。

 顔に古傷のある無口な女。

 豪奢な指輪を幾つも嵌めた商人風の男。


 どの人物も、どこか“普通”ではない空気を纏っている。


「これでやっと一息つけたな……」


 小声でガイが呟く。


「この馬車でどれぐらいかかるの、ママ?」

「ここから五日はかかるわね」

「そ、そんなにですか」


 思わず声が上ずった。


 結構歩いたし野宿も重ねたのに、まだ五日もかかるなんて。


「特殊な街だからな。舗装された道も少ない。途中、罠も多い」


 ウィン姉が囁くように言う。


 周囲に聞こえない程度の声量だ。


「それと――ここからは“初めて”だと分かるような会話は避けなさい」


 ライトニングさんの声が低くなる。


「常に見られていると思って行動して」


 ハッとした。


 これはアークレイズ行きの馬車。

 つまり――乗っているのは、訳ありの人間ばかりの可能性が高い。


 馬車に乗れたからといって、安全になったわけじゃない。


「しかし、もう夜だな」

「馬車の方が野宿よりはマシだろ」


 ガイが空を見上げ、ザックスが肩を竦める。


 確かに屋根はある。だが側面は開放型だ。

 日が落ちれば風は冷たい。


 野宿用の毛布が、ここでも役に立ちそうだ。


「ネロ。寝る時は交代制だ。分かってるな?」

「え? あ、うん。もちろん」


 周囲を見回しながら頷く。


 その時だった。


「全く見てられへんで……」


 かすかに、女の声。


「……え?」


 僕に向けられた?

 振り向こうとした瞬間。


「ネロ」


 ガイが低く言う。


「さっきからキョロキョロしすぎだ。素人丸出しだぞ」

「し、素人!?」

「スピィ!」


 スイムまで鳴いた。


 横を見ると、エクレアが苦笑している。


 ……そんなに目立ってたのかな。


 慌てて視線を落とし、スイムを撫でる。


 だんだん眠気が襲ってきた。


 まずい、寝る順番を決めないと――


「へへっ、ちょっといいですかい?」

「わわっ!?」

「スピッ!」


 目の前に突然、顔があった。


 小柄な男だ。

 左目が妙に大きく、右目は細い。左右で印象が違うせいか、どこか不気味だ。

 口元には薄い笑み。鼻先が尖っている。


「いやいや、驚かせちまいましたかね。あっし、ちょっと気になりまして」


 声音は軽いが、目は笑っていない。


「旦那方、もしかしてこの馬車は初めてで?」

「え? あ、はい。そ――ぐふっ!」


 答えた瞬間、ガイの拳が脇腹にめり込んだ。


 息が止まる。


「アークレイズは久々だが初めてじゃねぇよ」


 ガイが男を睨む。


「何だテメェ。怪しい奴だな」

「不届き者は凍す」


 アイスが静かに言い放つ。


 ぞくり、と男の肩が震えた。


「いやいやいや、落ち着いてくだせぇって! あっしはチンケな男でさぁ」


 両手をひらひら振る。


「久々にアークレイズへ戻るんでしてね。同じような“匂い”のする方々がいるなぁと」


 匂い、という言葉に少しだけ背筋が冷える。


「あぁ? 必要ねぇから席に戻れ」

「まぁまぁ、そう言わず。目的は何で? やっぱり珍しい品物?」

「答える義理はない」

「品じゃないなら……情報、ですかい?」


 その一言に、心臓が跳ねた。


「――お前には関係ない」


 ガイが低く返す。男はにやりと口角を上げた。


「関係ないとは言い切れませんぜ?」


 懐から小さな金属片を取り出す。

 表面には見慣れない刻印。


「これでも長年、情報屋をやってましてね」


 情報屋。


 もし本当なら――


 アークレイズに着く前に、フィアの手掛かりが掴めるかもしれない。


 だが。


 胡散臭さも、同じくらい強い。

 馬車は夜の道を進み続ける。


 アークレイズまでの道のりはまだ長い――

本作のコミカライズ版単行本第2巻がいよいよ本日発売です!

どうぞ宜しくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ