第299話 道中は甘くない?
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無法街アークレイズに向けて、僕たちは足を進めていた。
ウィン姉とライトニングさんが道中に必要な物資を揃えてくれたおかげで、水分や食事に関しては当面の心配はない。
ただし――人目につかないよう移動する以上、街道を外れ、森や山道を選ばざるを得ない。
そうなれば当然、歓迎されざる住人とも遭遇する。
「ネロ! 気をつけろ! そいつの体当たりは強烈――!」
「わわっ!?」
「スピィ!」
ガイの叫びとほぼ同時、地面を抉るような音を立ててアルマジロックが転がるように突撃してきた。
全身を岩のような甲殻で覆った魔物だ。球体のまま回転し、質量任せに突進してくるその攻撃は、確かに直撃すれば只では済まない。
魔法で防ごうとしたけれど――距離が近すぎる!
「守護魔法・大盾召喚!」
その瞬間、僕の前にガイが飛び出した。
召喚された巨大な盾が地面に突き立てられ、アルマジロックの突進を正面から受け止める。
ドンッ、と重い衝撃音。
盾越しに伝わる衝撃に、地面が震えた。
「貴様ぁ! 大事な愛弟に何をする!」
跳ね返されたアルマジロックに、今度はウィン姉が風のように迫る。
一閃。
鋭い斬撃が甲殻の隙間を正確に穿ち、魔物は断末魔も上げず倒れ伏した。
……まさに疾風怒濤の一撃だったね。
「大丈夫か、ネロ!」
「う、うん。ガイのおかげで助かったよ」
「たく……だから言っただろ。お前は自分の身を守ることに関して、鈍感すぎるんだよ」
「ご、ごめん……」
「貴様。随分と偉そうであるな」
「事実しか言ってねぇ」
ウィン姉の圧を真正面から受け止めるガイ。
彼女相手に、遠慮なく言い返せるのはガイくらいだろう。
「ネロ、こっちは終わったよ」
「――余裕だった。ザックス以外は」
「おい! 俺だって一匹くらい仕留めただろ!」
エクレアたちは狼型の魔物を相手にしてくれていたんだよね。
大きな被害もなく、こちらも問題なし。
「エクレア、少し雷の紋章の力を過信しすぎね」
「うぅ……」
「力は強いけど、その分攻撃が大雑把になりがち。今後の課題よ」
「ママ、容赦ない……」
戦闘後とは思えない冷静な指摘に、エクレアが肩を落とす。
「師匠! アイは、アイはどうでしたか?」
「ん? 特に問題はない」
「本当ですか!?」
「あと二十四箇所ほど修正すれば、だがな」
「そんなに!? ぜひご指導を――!」
ウィン姉は相変わらず辛口だが、アイスはそれを糧にしようとしている。
この師弟関係、見ていて少し微笑ましい。
「そういえば、ケトルとネイトは?」
「こっちだよ~♪」
声のした方を見ると、ネイトを肩に乗せたケトルが戻ってきた。
しかも――巨大なイノシシを引きずりながら。
「……それを狩ったのですか?」
「うむ。食料として丁度よかろう」
「これは確かに……量は十分ね」
「処理も綺麗。やるじゃない」
マキアとライトニングさんが感心したように頷く。
「でも、こんなデカいの運べねぇだろ?」
「えっと……スイム、どうかな?」
「スピィ♪」
僕の声に応じ、スイムがぴょんと飛び降り――
そのまま巨大なイノシシを丸ごと飲み込んだ。
「お、おい!? 全部食ったのか!?」
「スピッ!」
「違うよ。スイムが体の中に収納してくれたんだよ。ね?」
「スピィ♪」
スイムは誇らしげに肩へ戻り、僕の頬にすりっと体を擦り寄せてくる。
「スイムは賢いスライムだからな。勝手に食べたりはしない」
「師匠の言う通り。ザックスは馬鹿。今日はイノシシ抜き」
「ちょっ!? 悪かったって!」
自然と笑いがこぼれた。
アークレイズまでの道のりは、決して甘くない。
それでも――この仲間たちとなら、きっと乗り越えられる。
そんな確かな感触が、胸の奥に残っていた。
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