第21話 水魔法で倒しました
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どうやって魔獣を倒したか、とサンダースは僕に聞いてきた。これについてどう答えるかなんだけど、やっぱり素直に伝えるしかないよね。
「僕が得たのは水の紋章です。だから魔獣も水魔法で倒しました」
「――本気で言ってるのか?」
サンダースの目つきが異様に鋭くなった。疑わしいと考え威嚇しているのかも知れない。
「本当です。水魔法は十分に戦える魔法なんです」
「スピィ~!」
僕を擁護するようにスイムも鳴いてくれた。そうだ僕の戦いはスイムも見ている。
「――にわかには信じられない話だな。大体どうやって水なんかで戦うんだ?」
僕とスイムの訴えにマスターも多少は聞く耳を持ってくれたようだ。これはいい機会かもしれない。
「マスター。実は――水は重たいんです。だから戦闘でも十分使い物になる」
そう僕はマスターに伝えた。この水の真実を――
「水が重たい、だと?」
「そうです!」
マスターが怪訝そうに再確認してきた。だから僕は繰り返し水は重たいという事実を伝える。
「ククッ、はは、あ~はっはっはっはっは! これは驚きだ! 水は重いか。これは愉快だ!」
「そんな僕は本気で言ってるんです!」
まただ。やっぱりマスターも水が重たいという話は受け入れられないのだろうか?
「――そうか本気か。だがそんな突拍子もない話、聞くだけじゃとても信じられん」
うぅ、やっぱり駄目か――
「本当にお前の言うことが真実だというなら、力で証明してもらうしかねぇな」
「え?」
てっきり聞く耳を持ってもらえないかと思ったけど、マスターが思いがけない提案をしてきた。
「小僧、俺と戦え。その上でお前の言う水が重いというのと、水魔法が戦闘において本当に使えるかどうかを見極めてやる」
「え? えぇええぇええぇえぇええ!?」
◇◆◇
どうしてこうなったのか……僕はギルドマスターのサンダースに促されて地下の訓練場につれてこられた。
ここでは冒険者同士で模擬戦が行える闘技場も用意されている。
「スイムはそこで見ていてね」
「スピッ、スピィ~!」
闘技場の外側にスイムを控えさせて話をした。これは僕とマスターとの試合だからね。スイムも納得してくれたのか見学に徹してくれるようだ。
「この闘技場には魔法が掛けられているからな。設定はマジモードだ。死ぬギリギリまで保護魔法は発動しない。だからまぁ死にはしねぇよ」
ギリギリって……何かとんでもないことを言われてる気がする。
「ちなみに俺は拳の紋章と雷の紋章――つまり複合持ちだ。よく覚えておくんだな」
複合属性――紋章を一つ以上持つタイプがそう呼ばれる。特に魔法属性の紋章と武系属性の紋章を持つタイプはハイブリッドと呼ばれ二つの紋章を組み合わせた強力な技を持つことも少なくない、というのは聞いたことあるよ。
ただ、そういうタイプは見るのも当然戦うのも初めてだ。一体どんな戦い方をするんだろう――
「試合は戦闘不能になるかもしくは場外に落ちた方の負けだ。最初の一発は撃たせてやる。お前は純粋な魔法系みたいだしな」
サンダースがちょいちょいと指をつかって攻撃を促してきた。僕の力を侮ってそうだけど、相手はギルドマスター。こっちも遠慮なんてしてられない。
「それなら遠慮なく行きます! 水魔法・放水!」
杖を突き出し魔法を行使。杖から水が勢いよく放出された。サンダースは両腕を交差させてそれを防ぐ。
「ムッ? ぬぉぉぉおお!?」
そのままサンダースが闘技場を後退していく。僕の放った水の勢いに押されているんだ。
「馬鹿な! チッ!」
だけど流石ギルドマスターだけある。舌打ちしつつ横に飛び出し水の勢いから逃れた。上手く行けば場外まで持っていけるかと思ったけどやっぱり甘かったか。
「これでどうですか?」
「うるせぇ! 勝負はこれからだ行くぜ! 雷拳!」
サンダースが飛びかかってきて雷の纏った拳を放った。まともに喰らったら不味い!
「水魔法・水守ノ盾!」
僕の生み出した水の盾にサンダースの拳が触れる。バチッと電撃が迸った。びっくりして思わず僕も飛び退いてしまった。
しかも結構自信のあった盾なんだけど拳の一撃で破壊されてしまった。こんなに威力が高いなんて――僕は視線を這わせサンダースに向ける。
あれ? 何か動きが――
「一体これは――」
「水魔法・水鉄砲!」
サンダースの動きが一瞬止まったのを見逃さず魔法を行使。左手を突き出し指から水弾を連射。
「舐めるなよ小僧!」
だけどサンダースは全ての水弾を手で弾いてしまった。鉄の鎧だって破損する程の威力なのに、やっぱりギルドマスターだけあってとんでもないね――
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スイム「スピッスピスピィ(応援貰えると嬉しいスピィ)」