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第138話 着々と進む準備

「とにかく紹介状のないお前の仕事は受けられない。幾ら駄々をこねても一緒だ」

「な! 駄々だと!?」


 ガランに聞き分けのない子供のように扱われレイルが悔しそうに歯ぎしりした。


 その様子がおかしかったのかエクレアも笑いをこらえていた。


「貴様どうしても私の武器を作らないというのだな? このカートス家の血を引く私の武器を!」


 レイルが凄みを利かせガランに確認した。自分の家名に絶対の自信を持ってるようだ。


 しかしガランはため息を吐き目を細めるだけだ。レイルの家名など意に介さない。


「さっきから聞いてりゃ。装備を買うのはお前だろうが。家名で買うわけじゃあるまいしお前が扱う装備はお前自身が使うものだ」


 ガランがレイルに言い放った。レイルが事あるごとに家の名を持ち出すのが気に入らなかったのだろう。


「悪いが家をだしにしなきゃ装備品一つ買いに来れない相手に作ってやる装備はない。そもそも紹介状もないわけだしな。どうぞお引取りを」

「ぐ、き、貴様この私にこんな真似して、後悔させてやるからな!」


 結局レイルはそんな捨て台詞を吐いて工房から出て行こうとしたが。


「も、申し訳ありません! こんな筈じゃ」

「どけっ! この無能が!」


 足早に出ていこうとするレイルに向けてノックが謝罪しようと飛び出したが、レイルによって突き飛ばされて無様に床を転がる事となった。

 

 その姿に頭を抱えるガランである。


「くっ、くそ! なんでこんな」

「ノック! テメェは暫く雑用係だいいな!」


 うつむき悔しそうに愚痴をこぼすノックにダメ押しにガランの激が飛んだ。


「そ、そんなぁ……」


 ノックがガックリと項垂れた。様子を見るに事実上の降格のようなものなのだろう。


「全くアイツは――悪いな嬢ちゃん」

「あ、いえ。ただちょっと可哀想な気も」


 ぽりぽりと頬を描きながらノックの処遇について口にするエクレアだ。


「人がいいなあんたも」


 そういいつつやれやれといった様子を見せるガランである。


「あれ? 何かあったんですか?」


 するとセレナが戻ってきて不思議そうに聞いてきた。エクレアは簡単に今あったことを話して聞かせた。


「本当にあの弟にしてあの兄ありって感じですね。ですがカートス伯爵家ですか。大丈夫でしょうか?」

「そんなもん嬢ちゃんたちが心配することじゃねぇよ。それよりもあんたの希望を聞かないとな」

「あ、じゃあ依頼は」

「おやっさんのやる気を取り戻してくれた相手だしな。紹介状もあるわけだから気合い入れて取り組むぜ。だが必要な素材がある。本来なら冒険者ギルドにでも依頼するところだが」

「あ、それなら私が集めてきます!」


 エクレアが張り切ってみせた。勿論個人で勝手に依頼は受けられないのでギルドにはガラン工房から依頼があることを伝える形だが。


 何はともあれ、こうしてエクレアも無事新しい装備品の作成にこぎつけたのだった――






◇◆◇


「たく、面倒クセェ――」


 ガイが頭を乱暴に掻きながら独りごちた。彼の目の前には巨大な門が口を閉ざしていた。


 門の表面にはデカデカと紋章が刻まれいてた。マイト伯爵家の家紋であった。


 それを見てガイが不愉快そうに眉を顰める。


「……仕方ねぇ。報告に行くか――」


 そしてガイは門を開き久しぶりに家の敷地に足を踏み入れるのだった――

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