表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

139/285

第137話 紹介状もないのに

「知るかそんなもん」

「な!?」


 随分と自信満々に家名を晒したレイルだがガランには通用しなかったようだ。


 あっさりと突っぱねられ悔しそうに歯ぎしりするレイル。その様子にエクレアが思わず吹き出していた。


「それよりも紹介状がないのにどうやって入ってきた?」


 訝しげな目でガランが問いかけた。


「ハハッ。そんなもの外にいた奴が私の名前を聞くなりすんなり通してくれたぞ」

「何?」


 レイルが堂々と言い放つがガランの表情は険しい。


「どういうことだ。おいノックいるか!」

「ここにいます親方!」


 ガランが大声でノックを呼びつけた。するとノックがダッシュで姿を見せた。


 ガランは明らかに不機嫌だったがノックは何故か誇らしげだった。


「どういうつもりだノック! 紹介状も無い相手をいれやがって!」

「それが聞いてください親方。この方はあのカートス伯爵家からわざわざ来てくれたそうなんですよ。これでこのガラン工房も益々発展しますよ!」

「馬鹿野郎!」


 ガランがノックを怒鳴りつけた。ノックの肩がビクンッと震える。


「うちは紹介状ありきでこれまでやってきたんだ。相手が誰だろうとそこを曲げていいわけねぇだろうが!」

「で、でも親方。そんな女の仕事を受けておいてカートス伯爵家の仕事を受けないなんてそれこそわけがわかりませんよ」


 ガランに叱咤されるもノックが反論した。どうやらノックはワンの紹介で仕事を受けてもらえそうなエクレアが気に入らなかったようだ。


「ちょっと待て。それは私も聞き捨てならないぞ。なぜそんな下品な女の仕事を受けて私の仕事を受けない。カートス家を馬鹿にしているのか!」


 エクレアは正式に紹介状を貰ってやってきているわけだがどうやらレイルもそれが気に入らないようだ。


「この嬢ちゃんはワンから紹介状を貰ってやってきてるんだよ。あんたとは違う」

「ワンだと?」


 ガランの答えにレイルの眉がピクリと反応した。


「とは言えうちのもんが勝手に紹介状もないあんたを通したのは確かだ。それについては悪かった」


 ガランがレイルに頭を下げた。その様子にエクレアは戸惑いを覚えている様子だった。


 同時に彼女に対して随分な物言いをしたレイルに嫌悪感を抱いているようでもある。


「そうかわかったならいい。ならばさっさとその女を追い出して私の仕事を受ける準備を始めるといいだろう」

「はい?」

 

 エクレアが目を丸くさせた。わけがわからないといった様子だ。何故今の流れでそういう話になるのか。


「……お前の仕事は受けない。謝ったのはあくまでノックが間違えて通したからだ。それと今も言ったが嬢ちゃんは紹介状を持ってきた。だから話を聞くんだ」

「ふざけるな! いいかその女はうちの弟に色目を使って取り入ろうとするような恥知らずな女だ。そんな奴と私が比べられるのも不愉快なのだぞ!」

「ちょっと! いい加減にしてよ。私は貴方の弟に色目なんて使ってないわよ!」


 流石に黙ってはいられないとエクレアが反論した。


 そんな彼女をレイルは見下した。


「大体今、お前はワンの紹介状を持ってきたと言っていたが、そいつは今じゃただの呑んだくれの杖職人だろう? だったらそんな物に意味はない。今頃弟が店を買い取ってる筈だからな」


 腕を組み堂々とレイルが言い放つ。その様子にエクレアが嘆息した。


「言っておくけどワンさんの店は買われてないからね。今もネロの杖を作るために頭を悩ませてくれてるんだから」

「……何を言ってる。弟は欲しいものは強引でも手に入れる奴だ。正直そんな店買うだけ無駄だとは思ったがあいつがそう決めたなら覆ることはない」

「そんなこと良く堂々と言えたな」


 悪びれもなく語るレイルにガランが呆れ顔を見せた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ノックとやらはクビにした方がいいんじゃね?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ