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第98話 再び酒場へ

 結局ガラン工房では何も見ることが出来なかった。セレナが工房の様子に感動していたぐらいだよ。


「話も聞いてもらえなくてちょっと残念だったね」


 エクレアが苦笑まじりに言った。結局エクレアは装備を整える事が出来なかったわけだしね……。


「ガラン工房はこの町では有名なんですよ。ただ工房の親方さんが気難しい人で有名なようで」

「だからって話も聞いてくれないってあんまりじゃない? 有名らしいけどそれでちょっと横柄になってるとか?」


 セレナがわけを話してくれたけどフィアはとても不機嫌そうだ。門前払いを食らったようなものだから気分を害してるのかも。


「職人はこだわりが強いんです!」

「セレナは職人が好きだからって肩持ちすぎだよ」


 セレナはガラン工房を悪く思っては欲しくないみたいだ。フィアはやっぱり不満そうだけどね。


 とは言えこんなことで喧嘩になっては欲しくない。


「店を見ていたらお腹減ってきたかも。お昼時だし一旦昼休憩にしない?」


 ここは話を変えたほうがいいと思ってお昼の提案をした。実際時間的にも丁度いいしね。


「賛成です! 私もお腹が空いてきました!」


 食事と聞いてなんとなくそんな気はしたけどセレナが食いついてきたよ。


「本当セレナは食いしん坊よね」

「むぅ、食事は大切なんですよ! 一日三食しっかり摂ってからこそ、いい仕事に繋がるんですからね」


 フィアが呆れたように口にするとセレナがほっぺを膨らませて反論した。


 とは言え工房について言い合いになってるよりは雰囲気がいい。じゃれ合ってる感じにも見えるし。


「ネロどこに食べに行こうか?」

「う~ん折角だからまた昨日の酒場に行ってみようか。何か昨日はサービスにしてもらったし」


 なんだかあれだけ食べて無料だったのが逆に申し訳なく思ってしまった。


 だから今度はちゃんと支払ってあげたいなって思ったんだよね。


 セレナも流石に夜ほどは食べないんじゃないかな……いや朝のパンの量考えたらなんとも言えないけどね。


「ネロはそういうところが律儀ですね」

「でもそこがネロのいいところよね」

「うん。私もネロのこういうところがいいと思うんだ」

「スピィ~♪」

 

 何か皆から妙に持ち上げられてしまった。これってもしかして――僕が奢らないといけない雰囲気!?


 う、うぅ。でも男だし――よし!


「わかったよ。お昼は僕が出す!」

「え? いいよそんなの悪いし」

「今は同じパーティーなんですからしっかり割り勘にしましょうね」

「あぁ、さてはネロってばこの間の事で報酬が結構はいったからって気が大きくなってるの~? 駄目だよお金は大切なんだからしっかりしないと」


 あ、あれ? 奢るって言ったら逆にちょっと諭されたみたいになっちゃったよ。

 

 エクレアからも子どもを叱るみたいに言われちゃったし。あれ~?


「女の子の気持ちってやっぱり難しいや」

「スピィ~」


 思わずため息が出る僕を励ますようにスイムが頭に乗って跳ねていた。


「ほらネロ行こうよ」

「あ――」


 思い切って奢るって言ったのに否定されてちょっとしょげてたら、エクレアが僕の手を引っ張って促してくれた。


 何かちょっとドキドキするかも……。


「そうだよネロ。ほら早くってば」

「へ!」


 そんなこと考えてたら今度はフィアが駆け寄ってきて僕と腕を組んで引っ張ってきた。


 な、なんだかエクレアとフィアに挟まれて歩く形になっちゃったよ。何か凄く心臓の動きが活発になってきた気がする!


「スピィ~♪」

 

 あ、スイムが肩に乗って頬にすり寄ってきた。良かったなんだか凄く落ち着く。


 そうだ二人共僕に呆れて急かしてるだけだよね。勘違いしちゃいけない。


 平常心を取り戻した僕は改めて冒険者ギルドに併設された酒場にやってきた。


 お昼もしっかりやっていたけど僕たちを見た店長がギョッとした顔を見せていた。


「今度はサービスと言っても飲み物一杯だけだぞ!」

「大丈夫ですよ! 今度はちゃんと支払いしますから~」


 店長の慌てぶりに僕たちも普通に食べに来ただけだと伝えてあげた。


「食事が美味しかったしまた来ちゃいました」

「そう言ってくれるのは嬉しいけどな。ま、昼は特に食事がメインだし腕を振るうぜ」


 セレナの話を聞いて店長が張り切っていた。昼は食事がメインなんだ。ただお酒を提供してないわけじゃなく気持ち的な意味合いなのかもね。


 冒険者は昼でも関係なくお酒を呑んだりもするからね。


「それに丁度よかったかもな」


 僕達を見ながら店長が意味深な事を言った。そして視線を僕たちから外して口を開く。


「ロット。朝話したお客さんが来てくれたぞ」

「本当ですか!?」


 店長が呼びかけると厨房から女の子が飛び出してきて慌てた様子で近づいてきた。


 可愛らしい少女だけど僕たちに何か用事があったのかな?

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