04 はじまり－伊豆にて－ 義時
義時は母方の従妹：小枝と結婚して、江間を継ぐ事になっていたため、早くから月の半分は江間ですごしていた。
小枝は気立ての優しい娘で、二人は仲むつまじく暮らしていました。
小枝の実父は、伊豆に来た役人：平信兼（山木兼隆の父）で、母は信兼が京に戻った後、一族の男に嫁ぎましたが、男子に恵まれず。義時を養子に迎える事にしていました。
山木兼隆は代官として伊豆に来て小枝の存在を知り、何くれとなく小枝と義時に援助をしました。小枝は兄の優しさに感謝していた。
政子と頼朝の事や、挙兵の件などは、山木との縁があるため、義時は知らされていませんでした。
小枝に子供ができて、生まれるのを楽しみにしていた矢先、山木は討たれました。
小枝はショックで泰時を早産し、命はとりとめましたが、正気を失ってしまいました。
義時と自分が幸せだった恋人同士の記憶のままで「時」を止め、子供がいる事も分からなくなっていました。
宗時が戦死したため、義時が北条家の「嫡男」になります。
周囲は、小枝を離縁して妻を迎えるように勧めましたが、義時は小枝を愛していたので、離縁には応じず。泰時を育てました。
義時は、自分の妻は小枝だけであり、跡継ぎは泰時だけだと思いました。
有力な後ろ盾を持たない泰時を跡継ぎにするためには、自分が強くなるしかないと義時は思いました。
小枝は正常に戻る事なく数年後に亡くなりました。義時は、泰時が立派な跡継ぎになれるように、教育し、三浦との縁組も決めていました。
時政にとって（外孫）は沢山いましたが、男子の孫は泰時だけ。（時房は独り身で、末息子の政範はまだ生まれていません）時政は北条家の立場を固めるために比企氏との縁談を義時に命じました。
月子は夫に離縁されて京に子供を残して鎌倉に戻り、頼家の侍女となっていました。その美貌で頼朝の寵愛を受けるようになり、比企氏に頼朝の子供が生まれるのを恐れた時政は、月子を義時の正室にする事で、比企氏と協調しようとしていました。
義時は、嫡子は泰時である事を条件に縁組を承知します。一方、月子は、「夫から離縁はしない。生まれた子供を出家させない」という条件を出しました。（月子が先夫との間に産んだ息子は出家させられていました）義時は、月子が愛したのは先夫である事で、彼女との縁組を受け入れる事ができました。
二人の間に朝時が生まれます。子供が義時の子供であるのは明白でしたが、義時は朝時に対する愛情を持つことができませんでした。
月子が朝時を顧みないため、妹の日子が朝時を育て、日子の夫の三浦義村も朝時を可愛がるようになります。朝時が宗時に似てくると、時政は朝時を実朝の遊び相手として名越邸にも部屋を与えるようになります。
義時は、比企氏の血を引く朝時が、時政や三浦との縁を深めるのを苦々しく思っていました。
時房が有力御家人の娘と結婚しなかった事は、北条家にとっては不利と思いましたが、
白拍子の母を持つ時房の子供は泰時を脅かす事はないと思うと、ひそかに安心する気持ちもありました。
ただ、父が時房と沙羅の事を認めたのは、宗時への償いがあると思うと、また、自分にはない愛する女性との生活が時房にはある事を妬ましく思う気持ちがありました。
義時の最初の妻（泰時の母）については、「阿波局」という説もありますが全く不明です。
泰時はできが良かったらしくて、義時から（頼朝からも）目をかけられていた記述がありますが、どっかの家と親戚だったら、少しはその話がでそうなものなのに・・・と思っていました。
伊東入道の娘で頼朝との悲恋で有名な八重姫は「江間小四郎」という家来に嫁がされた云々という話があり、（また伊東入道の娘が政子の母説もあり）
違うだろうけど、八重姫と義時が結婚して、泰時が生まれたとしたら、「母親」の事はタブーだよね。とも思いました。
母の出自が分からないという事で、私は、頼朝が討った山木の身内（妹）という事を思いつきました。山木が討たれたショックで、精神的に錯乱してしまったとしたら、泰時の母の事は公然の
秘密となるという設定です。
また、義時は比企氏から妻も迎えていますが（どう考えても政略結婚）、次男の朝時と義時の年が10才離れている（はず）なので、後妻を迎えるまでにおそらくずいぶん時間がかかった（本当は迎えたくなかった）のではと考えました。
