13 茜の恋
時房は沙羅に、畠山家との縁組は難しい状況だと伝えました。自分は父親として、娘の幸せをかなえてやりたい。しかし、自分は北条家の一員でもある。
自分は、時政の息子、義時の弟して、政治を補佐していれば良いと信じていた。自分は沙羅と娘達との暮らしで十分幸せだったが、自分の幸せは、北条家が流す血の上になりたってもいる。
自分だけが、平穏に暮らすわけにはいかない事を思い知らされた。
茜がどんなに辛い思いをするかと思うと、父親として身を切られる思いだと。
そして時房は戦に備えるため、由比の邸を後にしました。
重保は由比ガ浜で討たれ、畠山重忠は二俣川で討たれました。
沙羅は茜に言います。父上は戦を止めようとしたけれど、どうしようもできなかった。父上を恨んではなりません。母に後ろ盾がなかったから、父上はおじいさまたちに従うしかなかったのです。
父上は誰よりも茜の幸せを願ったいたのですと。
茜は、目に涙をいっぱいにためて、約束していなかったけれど、重保様が好きでした。自分も父上の立場は分かりますから、恨む事はしません。でも、こんなに辛いのなら、もう誰も好きにはなりません。一生、この家で暮らしていきたいと言って、泣き崩れました。
そして、ここ(鎌倉)では女でも御家人になれるから、自分が父上の後を継ぎますと言い、それまでも蹴鞠などで水干や直垂を着る事があったのですが、以後は、男姿で通すようになります。
沙夜も朝時も、事情は察していましたし、
真玉はまだ子供でしたが、重保の事を口にしてはいけない事は感じ取っていました。
表面上は、何もなかったような生活を続けていました。
沙夜と朝時は泰時の婚礼が済み、朝時が、正式に実朝の近侍として仕える事が決まってから、
一緒になる事が決まっていました。
時房の養子として、佐助邸にも部屋をもっていましたが、沙夜を母や姉妹達と引き離したくはないので、由比の邸を増築する手配を進めていました。
時房は、父・兄を補佐するために色々と勉強してきていましたが、朝時は義時の方針で学問をしていなかったので、武芸(特に弓)と笛が得意でした。
実朝とは幼い頃からの遊び相手でもあったので、朝時が近侍として仕える事は義時の意思でもありました。
政治は泰時に、実朝の近侍は朝時に任せ、一族の力を盤石にする事が義時の願いでした。
茜の恋は重保の死で終わりを告げます。
沙夜と朝時の婚礼自体には問題はありませんでしたが、時房にとっては、茜の幸せを守れなかったという後悔が残ることになります。
武家出身ではない沙羅にとっても、それは新たな試練でした。




