6話 道具を買いに
お選びいただきありがとうございます。
皆さん、刀は好きですか?
私はだいぶ好きでして、よく居合の動画なんかを見てにやにやしてたりします(変人)。
今回は刀好きにはたまらない(はずの)回です。
ギンカガミがお送りします!
異世界に来てから3日目の朝。
「もらったお金も少なくなってきちゃったし、そろそろ仕事を始めよう。」
朝食のベーコンエッグを食べながら2人にそう言った。野菜はそのうち畑でとれるようになるはずだけど、肉や魚は結構高いから、この調子だともうすぐお金が無くなっちゃう。
「はーい」
「おう」
そろそろ本格的に生活のための道具が必要になってくるな。
今日は道具をそろえに買い物に行こう。
「ぼくは狩りのために弓とか買いに行くけど、2人はどうする?」
「俺も行く。」
「私は行かない~。」
「了解。じゃあ、9時ごろ出発しよう。」
「おう。」
今は7時。自分で決めておいてなんだけど、行くまでに結構時間があるな。
家の探索でもするか。
まだ家の中すべてを見たわけでもないしな。
とりあえず最初は、家の中で一番不思議な部屋、魔法陣がある部屋を見てみよう。
リビングを出て、魔法陣部屋に入る。窓がないので結構暗い。
ランプが欲しいな。
と思ったら、急に周りが明るくなった。
「へ?」
後ろを振り返ると、来夢が立っている。立てた人差し指の先には小さな光の玉のようなものが浮いている。
「…それも魔法?」
「うん。すっごく便利。」
本当に便利だな、魔法って。
そして来夢はそれをすでに使いこなしている。
「僕も魔法って使えるのかな」
そんなことをつぶやきながら、ふと視線を下に向けると、分厚い本がある。
転移してきたばかりの時に建治がつまずいた本だ。
よく見ると表紙には日本語で「異世界の生き方」と書いてある。
神様がくれたのかな?
横から来夢も本をのぞき込んでいる。指先にあった光の玉はふよふよと空中を漂っている。
「なかなか便利そうな本だね~。」
「こういうのは有難いね。」
来夢と会話を交わしつつ、ページをペラペラめくる。
簡単な生き物図鑑や、こちらの世界のルールやマナー、経済の仕組みなどが載っている。
情報量がすごく多いな。
読みたいけど、出発の時間が近づいてきた。
「そろそろ行くを準備をしないと。」
と言うと、来夢は
「狩寛が読まないなら私が読む。」
と言って、そのまま本を自分の部屋にもっていった。
さて、行く準備をするか。
といっても、荷物はお金とメモ帳、筆記用具だけなので、準備はすぐに終わった。
「けんじー、そろそろ行くよー」
「はいよー」
1階から呼ぶと、2階から建治がトテトテと降りてきた。
さて、行こう!
***
門をくぐってすぐの場所にある掲示板に、指名手配の張り紙がしてある。
どうやら、強盗犯らしい。
「なかなか物騒だねぇ。」
「そうだなぁ。」
などと言いながら、隣にある武器屋に向かう。
僕の役割は狩りだから、ここで弓と矢を買おう。
建治はもう店に入っている。せっかちだなぁ。
店の中に入ると、レイピア、ダガ―、
ハンティングソードなどたくさんの武器がある。
弓矢ももちろんあった。日本式の弓も売っている。西洋風の弓しかないと思っていたからちょっと意外。
長さも弓力も様々だ。
狩りをするには短めのほうがいいのかな?
けど使い慣れたもののほうがいいしなぁ…。
こういう時は店員に聞いてみよう。
「すみませーん!」
店員の姿が見えなかったので大きめの声で読んでみると、初老の店主が奥から出てきてくれた。
「弓を買おうと思っているんですけど、
狩りで使うのは短めの弓のほうがいいですか?」
「まあ、持ち歩くことを考えると短いほうがいいねぇ。
ただ、長いのを買っていく人も結構いるねえ。」
ふむふむ。結局はどっちでもなんとかなりそうかな。
なら、慣れている和弓にしよう。
「では、これとこれを下さい。」
長さが合う弓と矢を手に取り、会計を済ませる。
当然だけど結構高いな…。
弓矢を受け取り、建治のほうを見ると、両刃で70㎝くらいの剣をまじまじと見ている。
店主によると、ブロードソードというそうだ。
気に入ったらしく、護身用に買っていた。
よし、これで必要なものは買えたかな。
そう思って外に出ようと振り向くと、1振りの日本刀が目に入った。
特に特別なところもないけど、なぜか引き込まれるような魅力を感じる。
「あのー、この刀って…」
「ああそれも売り物だよ。人気がないから1振り銀貨9枚でいいよ。」
日本刀1振り銀貨9枚はだいぶ安い。建治が買ったブロードソードは金貨2枚だった。
「ちょっと持ってみてもいいですか?」
「ああ、いいよ。」
目釘を抜いてなかごに目をやると、ちゃんと銘が切ってある。
しかも日本語で。
よく見ると
「和泉守兼定」
と切ってある。それも、「定」のうかんむりの下は「之」に見える。
「ノサダだ!」
思わず叫んでしまった。ノサダといえば、新撰組副長である土方歳三の佩刀で有名だ。
名刀を異世界に来て見つけてしまった…。それも服4着くらい分の値段で。
「これ、下さい。」
「お、おう」
よく考えるとなぜ日本の名刀がこの世界にあるのかがちょっと不思議だな。
お金を払い、刀を受け取った。少しでも売れやすくなるようにと研がれていたから、
すぐにでも使えそうだ。できれば使いたくないけど。
あれ?そういえば、平民って帯剣していいのかな…。
「大丈夫だよぉ」
聞いてみるとそういう風に言われた。よかった。
建治は剣帯も買っていたけど、僕は剣帯だと抜きにくい気がしたので、太めのベルトで帯刀することにした。
店を出ると、来た時よりも人通りが多くなっている。
お昼ご飯の準備かな?
「建治、ほかに買うものある?」
「金槌とか買いたいな。」
そんなわけで、今度は道具屋に行った。
金槌は結構安め。よかった。
けど、これらを買ったからもうほとんどお金が無くなっちゃったな…。
早くお金を稼がないと。
***
「ただいま~」
家に帰ると、来夢はまだ本を読んでいた。
まあ、辞書並みのページ数だからなぁ。
「それ、面白い?」
「特別面白くはないけど、便利そう。」
「ガイドブックみたいな感じ?」
「そうそう、そんな感じ。」
なるほどねぇ。僕も後で読んでみよう。
「そろそろ夜ご飯作るか。」
「うん。」
3人でキッチンに向かう。
今日は何を作ろうかな。
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