4話 クッキングタイム
お選びくださりありがとうございます!
皆さんお料理ってしますか?
私はたまーにするくらいですかね。
第4話は3人でお料理をしていきます。
今回はギンカガミがお送りします!
お料理をする。よく考えると、こっちの世界に来てから初めての食事だ。
体感的に、こっちの世界に来たのはお昼ちょっと前くらいだった気がするな。
今日はお昼ご飯を食べたといっていいのかな?元の世界では食べたしなぁ…。
頭がこんがらがってきたので、細かいことは忘れて、早速お料理をしよう。
本日使う材料は、街で買ってきた野菜やお魚など。
僕もお料理はする方なので、そこそこ自信はある。まあ、ここには食品化学科の生徒がいるから
僕の料理が一番美味しいということはないと思うけど…。
「さて、早速始めていきましょう。」
僕がそう言って横を見たときには来夢はもうまな板と包丁の準備をしていた。
そんな中、建治が
「俺は料理は全くできない。」
となかなか衝撃的なことを言った。
「えーっと…」
来夢が微妙な表情をした。ちょっとショックを受けているな。
「ま…まあ、そしたらサポート係を…。」
ナイスアイディア、来夢。それくらいならさすがの建治もできるだろう。
「おーけー。」
建治は意気揚々といった顔で、早速買ってきた食材をあさり始めている。
では、気を取り直して作っていこう。今回僕が作るのは、ズバリ、サバの塩焼き。
それは料理じゃないと言われる気もするけど、そんなことは気にしない。
食べるものを作る。それが料理。食べれるものが完成すれば、たとえそれがカップ麺だったとしても料理としてカウントされる。(個人の感想です)
早速、サバをさばいていく。と言いたいところだが、この世界にはどうやらサバがいない。
代わりに、コシマというサバによく似た魚がいたので、それを買ってきた。
包丁を使ってウロコをとろうとすると
「違う!それはキャベツ!私がとってほしいのはレタス!」
と、怒声が飛んできた。どうやら、建治はキャベツとレタスを見分けられないらしい。
建治は慌ててキャベツのとなりにある野菜を手に取る。
「あー、ごめんごめん。これね?」
「それは白菜!レタスは建治の右にあるやつ!」
うーん、ここまでくるとむしろすごい気がしてきた。
二人の会話を聞きながら、コシマの内臓を掻き出す。
建治は、来夢に怒られて部屋の隅でちっちゃくなっている。しばらくすると、何を思ったのか、急に何かに気が付いたような顔をすると部屋を出ていってしまった。
どうしたんだろう。
不思議に思いながら身と骨を切り離す。
来夢は隣でチーズやらマヨネーズ(こちらの世界でマヨネーズというのかは分からない)などを混ぜている。まだサラダしか作ってないのに、すでに僕のよりも凝っている気がする。さすがだなぁ。
無事にコシマを3枚におろせたので、早速焼いていく。コンロやオーブンなどはもちろんないので街に売ってたガスバーナー的なものを使う。火炎魔法がタンクに入っているそうだ。
早速着火といきたいところだが、家が燃えたら困るので、外でやることにしよう。
外に出て、ボンベの口についているつまみを回すと、赤い炎が吹き出た。
そこらへんで拾った薪に着火!できない…。
そういえば、木の組み方が重要と聞いたことがあるな。確か空気が通りやすくするとかなんとか…。
「何してんの?」
玄関から建治がトコトコと出てきた。
「火をつけようとしてるの。」
「あぁ、火が付きやすい薪の組み方教えてやろうか?」
え、建治知ってるんだ。ちょっと意外。
「どういう組み方?」
「まあ落ち着け。まず、焚火というのは空気の流れが重要だ。」
おぉ、建治が珍しくまともなこと言ってる。明日は雨降るかもな。
「今回は何のための焚火?」
「鯖を焼くの。」
「あー、なるほど。では並列型でいこう」
こいつ、何でこんなこと知ってるんだろう
「やり方はすごく簡単。2本の薪を横向きにおいて、その上に薪を並べるだけ。」
すごい、確かに焚き火っぽい形だ。では早速点火を…
「え、何しようとしてるの?」
「え、見ての通り火をつけようと…」
「いやいや、そんな大きい薪に火はつかないよ。もっとちっちゃいのじゃないと。」
あ、そうなんだ。どうりで火がつかないわけだ。
「これを使え。」
建治が紙のようなものを差し出してくる。新聞紙だ。
「なんかバッグに入ってた。昨日の新聞。」
なんてラッキー。建治はそういう運の良さを持っているのかもしれないな。
では、こんどこそ…点火!
赤い炎が燃え上がり、あたりが急に明るくなった。
よし、後は焼くだけだ。
***
焼きあがった鯖を持ってリビングに入る。いやぁ、なかなか達成感があるな。
ん?なんかジュージューという音が聞こえる。そして卵が焼けるにおい。
…なんで?
キッチンに入ると来夢が卵焼きを焼いている。薪もないのに火が使えてる。
「え、来夢、その火は一体どこから…?」
「ん?魔法だよ?」
その手があったか…。僕の努力は一体なんだったんだ…。
というか、街に行った時も思ったけど、魔法ってそんな簡単に使えるのね。
気を取り直して、来夢の斜め前にある鍋をのぞき込む。中には美味しそうなシチューが入っていた。
「おぉぉ、美味しそう。」
鯖をずっと持ってるのは大変だからお皿に載せようっと。
…あれ?ちょっと待てよ?
恐ろしいことに気が付いた僕は、キッチンにある収納の扉を片っ端から開ける。
やっぱり無い。お皿が。
これは大問題だ。来夢もこのことに気が付いたようで、しまった!という顔をしてこっちを向いた。
街に行って買ってくるという手もあるけど、時間がかかってしまう。
せっかくなら出来立てを食べたい。けどお皿がない。さあ、どうしよう。
来夢と2人で頭をひねるが、いいアイディアが浮かばない。
しょうがない、僕が街に行って買って来よう。
そんな時、リビングのドアが開き、建治が入ってきた。手に何かの袋を持っている。
「ん?そんな困った顔してどうしたんだ?」
「お皿を買い忘れたから料理が載せられないんだ。」
だから買ってくると言おうとしたとき、建治がニヤリと笑った。
な、なんだよ。
「そんなことだろうと思ったぜ。だから、ほら。」
建治が持っている袋から何かを出した。これはまさか!
僕たちが今一番必要としているもの、お皿だ!
「なんで持ってるの⁉」
「買ってないなと思ったから、さっき街に行って買ってきた。」
す、すごい…。建治が先のことを見通して行動してる!
ちょっと感動的だ。
「助かったよ。ありがとう!」
建治は超ドヤ顔をしている。
なんだか今日は建治がやけに役立つ。
明日は雨だな。
さて、建治のお陰で出来立てにありつけそうだ。
3人で協力したからできた、異世界に来て初の料理。
早速いただこう。3人で席に着く。
「「「頂きまーす」」」
献立は、パンと、シチューにコシマの塩焼き、シーザーサラダだ。
もぐもぐもぐ…。美味しい。特にシチューがおいしい。僕が作っても絶対こんなにおいしくならないな。やはり来夢は料理が専門だけある。コシマの塩焼きもおいしくできた。よかった、火がつけられて。建治のほうをちらっと見る。
建治はすでにシチューと卵焼きのお皿が空にしていた。
コシマも半分以上食べられている。
小食な来夢とは正反対だ。
ふと、来夢が何かを思い出したように顔を上げた。
「そういえば、料理してて思ったんだけど、私たち、これからは家事もしてお金も稼がないといけないじゃん?」
その通り。こっちの世界に来てもお金が必要なのは変わらないし、生活していくには家事ももちろん必要だ。
「うん、そうだね。」
「だからね、役割を決めようと思ったの。」
「なるほど。」
建治が話に入ってきた。料理はもう食べ終わっている。
「じゃあ俺は道具とかフェンスとかを作る。」
うん。それはこの3人の中で建治しかできないな。
「じゃあ、私は料理する。」
うんうん。これも適任だ。
「僕は何をしよう。」
「狩寛は狩猟で食料調達だろ。猟師だし。」
建治が当然といったような顔で言う。
「あ、そうだった。」
すっかり忘れてた。そのためにわざわざ召喚獣とやらもつけてもらったのに。
「それじゃあ、決まり!これからよろしく!」
来夢が笑顔でそう言った。
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次回は11/14に投稿予定です。