white book
「なぁ、最近みんなやけに本読んでるのはなんでだ?」
「お前知らねぇのか?本の話」
「は?本の話?」
「どこの学校の図書室には必ず置いてある本ってのがあるんだ。
その本を読むと、本の中に取り込まれるか殺されるって言う都市伝説があんだよ」
「は?本の中に取り込まれる?殺される?」
「あぁ。だからそうゆう話が好きな奴が、学校の本を借りて読み始めてるって話だ」
「で、本に取り込まれた&殺された奴って居るのか?この学校に」
「いや、今のところ居ないらしい」
「へぇ…それでよく取り込まれるって話信じるな?」
「あ、でも、本に取り込まれた奴は居るらしいぞ?ネットとかでも書き込みがすごいし。殺された奴も多数居るとか居ないとか」
「あのなぁ…そうゆう話信じすぎるとバカになるぞ?」
「信じねぇのかよ?」
「あぁ、俺は嘘だと確定してるな」
「じゃあお前も借りて読んでみろよ。うわさでは背表紙が白い本なんだってよ」
「俺は本みたいな字がびっしり書いてあるものは嫌いなんだよ」
「…結局来ちまったわけだが…背表紙が白い?そんなのいっぱいあるだろ…」
っと不意に俺は一番下の段の一番端っこに目が行った。
タイトルも何も書いてない白い本があった。
「これか?まぁ、借りてくか」
俺はその白い本を抜き取った。
すると表も裏も白かった。
「なんだこれ?こんなのあるのかよ普通に」
…俺はページを捲って見た。
なんだ普通に書いてあるじゃねぇかよ。
まぁいいか。
借りてこ。
そして俺は家に帰って、早速読み始めた。
結構薄かったから3時間ぐらいで読み終わった。まぁまぁ面白かった。
文字嫌いな俺が最後まで読み終わったってすごいことだ。
…やべぇなぁ…ちょっと本が好きになっちまったかも…
明日も何か借りてこようかな…
翌日俺は朝早く学校に行って図書室に行った。
そして本を2冊借りて、教室で一人読んだ。
クラスの奴がどんどん入ってきた。
「あ、時田?お前読んでるのか。どうだ?」
「………」
「おい時田?」
ペラ…
「あ、あぁすまん…」
「お前かなり集中して読んでたが…文字嫌いじゃなかったのか?」
「嫌いだよ」
「じゃあなんで読んでるんだよ?」
「それは…ちょっと読むのもいいなと思っただけだ」
「ったく…お前まで変にならないでくれよ?」
「わ〜ったわ〜った」
次の日も俺は読んだ。
「時田無視すんなよ!!」
…ペラ……ペラ…
「………」
「どうしちゃったんだよ時田?お前文字読むの嫌いなんじゃなかったのかよ?
無機になって読んでるのか?悪かったからさぁ口聞けよ」
「………」
…ペラ……ペラ…
「と〜き〜た!!」
「んあ!?悪ぃ!!」
「お前なぁ…あまりはまりすぎんなよ?
わかっているんだが、翌日も俺は読んだ。
「時田またかよ?ちょっとは話そうぜ?」
ペラ…ペラ…ペラ…
斉藤が呼んでいるのに俺は本を読むのが止まらなかった。
止めようと思っても止めれなかった。
止めるどころか、毎日毎日読むペースがどんどん上がってるような気がする。
俺は体が重く感じながらそう思っていた。
「時田ぁ」
「………」
「はぁ…」
「あ…なんだって?」
「お前日に日に俺に気づくの遅いよな?はまりすぎなんじゃないのか?」
「大丈夫だって」
「本当かよ…」
次の日事件は起こった。
ペラペラペラ…
「おい時田」
ペラペラペラ…
「………」
ペラペラペラ…
「…はぁ…俺つまんねぇよ…話そうぜ?なぁ?なぁってば」
ペラペラペラ…
「………」
俺はついに読むのを止められなくなった。
なんでだろう…なんでこんなに読むのが止められないんだろうか…
授業が始まったのに止めれなかった。
「おい…時田。さすがにヤバイぞ授業まで本読んでるなんてさ。おいってば」
………。
「ったく…もう止めろよ?先生に叱られても知らねぇからな俺は」
斉藤が前を向いて授業に集中した。
…俺もさすがにヤバイと思った。
なんでこんなに止められないのか…
そうか…話が読めてきた。
背表紙が白い本。
…こいつを読んで、読み終わってしまうと読むのが毎日止めたくなくなり、最後には絶対止めない…
そうゆうことか…?
あの白い本は本物だ。
本物だったのだ。
俺は多分死なないと止まらない。
止まらないのだ。
このまま読み続けるのなら…
俺は必死に本を捲ろうとする左手を、必死に筆箱へと手を伸ばしてシャーペンを取り出して、机にあることを書いて、カッターを取ってそれで右手を切ってやっと止めた。
………。
目眩がして心臓がどくどくなる。
あぁ…俺はやっぱり死ぬんだ…
血がどんどん広がっていく…
そしていつの間にか俺の身体は机へとうつ伏せていた。
俺は眠るように死んだ。
「ねぇ知ってる?2年Bの時田先輩って人の話」
「知ってる知ってる。文字を読むのが好きでない彼がある日本を読み始めたんでしょ?」
「そう。そして、なぜか彼は読むのが止まらなくなって、それでついに授業中本に殺されたって」
――背表紙の白い本を読んではいけない。読んだら最後…死ぬ…