表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編

white book

作者: 幸仁あずき

「なぁ、最近みんなやけに本読んでるのはなんでだ?」

「お前知らねぇのか?本の話」

「は?本の話?」

「どこの学校の図書室には必ず置いてある本ってのがあるんだ。

その本を読むと、本の中に取り込まれるか殺されるって言う都市伝説があんだよ」

「は?本の中に取り込まれる?殺される?」

「あぁ。だからそうゆう話が好きな奴が、学校の本を借りて読み始めてるって話だ」

「で、本に取り込まれた&殺された奴って居るのか?この学校に」

「いや、今のところ居ないらしい」

「へぇ…それでよく取り込まれるって話信じるな?」

「あ、でも、本に取り込まれた奴は居るらしいぞ?ネットとかでも書き込みがすごいし。殺された奴も多数居るとか居ないとか」

「あのなぁ…そうゆう話信じすぎるとバカになるぞ?」

「信じねぇのかよ?」

「あぁ、俺は嘘だと確定してるな」

「じゃあお前も借りて読んでみろよ。うわさでは背表紙が白い本なんだってよ」

「俺は本みたいな字がびっしり書いてあるものは嫌いなんだよ」




「…結局来ちまったわけだが…背表紙が白い?そんなのいっぱいあるだろ…」

 っと不意に俺は一番下の段の一番端っこに目が行った。

 タイトルも何も書いてない白い本があった。

「これか?まぁ、借りてくか」

 俺はその白い本を抜き取った。

 すると表も裏も白かった。

「なんだこれ?こんなのあるのかよ普通に」

 …俺はページを捲って見た。

 なんだ普通に書いてあるじゃねぇかよ。

 まぁいいか。

 借りてこ。




 そして俺は家に帰って、早速読み始めた。

 結構薄かったから3時間ぐらいで読み終わった。まぁまぁ面白かった。

 文字嫌いな俺が最後まで読み終わったってすごいことだ。

 …やべぇなぁ…ちょっと本が好きになっちまったかも…

 明日も何か借りてこようかな…

 翌日俺は朝早く学校に行って図書室に行った。

 そして本を2冊借りて、教室で一人読んだ。

 クラスの奴がどんどん入ってきた。

「あ、時田?お前読んでるのか。どうだ?」

「………」

「おい時田?」

 ペラ…

「あ、あぁすまん…」

「お前かなり集中して読んでたが…文字嫌いじゃなかったのか?」

「嫌いだよ」

「じゃあなんで読んでるんだよ?」

「それは…ちょっと読むのもいいなと思っただけだ」

「ったく…お前まで変にならないでくれよ?」

「わ〜ったわ〜った」




 次の日も俺は読んだ。

「時田無視すんなよ!!」

 …ペラ……ペラ…

「………」

「どうしちゃったんだよ時田?お前文字読むの嫌いなんじゃなかったのかよ?

無機になって読んでるのか?悪かったからさぁ口聞けよ」

「………」

 …ペラ……ペラ…

「と〜き〜た!!」

「んあ!?悪ぃ!!」

「お前なぁ…あまりはまりすぎんなよ?




 わかっているんだが、翌日も俺は読んだ。

「時田またかよ?ちょっとは話そうぜ?」

 ペラ…ペラ…ペラ…

 斉藤が呼んでいるのに俺は本を読むのが止まらなかった。

 止めようと思っても止めれなかった。

 止めるどころか、毎日毎日読むペースがどんどん上がってるような気がする。

 俺は体が重く感じながらそう思っていた。

「時田ぁ」

「………」

「はぁ…」

「あ…なんだって?」

「お前日に日に俺に気づくの遅いよな?はまりすぎなんじゃないのか?」

「大丈夫だって」

「本当かよ…」




 次の日事件は起こった。

 ペラペラペラ…

「おい時田」

 ペラペラペラ…

「………」

 ペラペラペラ…

「…はぁ…俺つまんねぇよ…話そうぜ?なぁ?なぁってば」

 ペラペラペラ…

「………」

 俺はついに読むのを止められなくなった。

 なんでだろう…なんでこんなに読むのが止められないんだろうか…

 授業が始まったのに止めれなかった。

「おい…時田。さすがにヤバイぞ授業まで本読んでるなんてさ。おいってば」

 ………。

「ったく…もう止めろよ?先生に叱られても知らねぇからな俺は」

 斉藤が前を向いて授業に集中した。

 …俺もさすがにヤバイと思った。

 なんでこんなに止められないのか…

 そうか…話が読めてきた。

 背表紙が白い本。

 …こいつを読んで、読み終わってしまうと読むのが毎日止めたくなくなり、最後には絶対止めない…

 そうゆうことか…?

 あの白い本は本物だ。

 本物だったのだ。

 俺は多分死なないと止まらない。

 止まらないのだ。

 このまま読み続けるのなら…

 俺は必死に本を捲ろうとする左手を、必死に筆箱へと手を伸ばしてシャーペンを取り出して、机にあることを書いて、カッターを取ってそれで右手を切ってやっと止めた。

 ………。

 目眩がして心臓がどくどくなる。

 あぁ…俺はやっぱり死ぬんだ…

 血がどんどん広がっていく…

 そしていつの間にか俺の身体は机へとうつ伏せていた。

 俺は眠るように死んだ。







「ねぇ知ってる?2年Bの時田先輩って人の話」

「知ってる知ってる。文字を読むのが好きでない彼がある日本を読み始めたんでしょ?」

「そう。そして、なぜか彼は読むのが止まらなくなって、それでついに授業中本に殺されたって」





 ――背表紙の白い本を読んではいけない。読んだら最後…死ぬ…

 







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ