第7話 二度目の事件
『マキナ』と呼ばれている少女は、レイに頼まれていた《《ある物》》を差し出す。
「やはり見つかったか。これで私の仮定は、真実に一歩近づいたな。しかし、《《既に犯人の目的は達成されたのだから》》、これ以上私が追求する必要も無いな。それにしてもその姿を消す能力は相変わらず便利だな。」
「今回は別に姿を隠す必要が無かったと思いますけど。私だってちゃんと客の一人として美味しい料理が食べたかったです。みなさんが広間に集まって美味しいお料理を食べている間、私は厨房にあった残飯を盗み食いしていたんですよ?ひどい扱いです。それも今に始まったことではありませんが。」
そう言ってマキナはレイを睨みつける。レイはただ「ははは」と笑う。
「この貧乏旅行において一人分の旅費が浮くのは結構大きいんだ。まだしばらくは『いない者』として過ごしてくれ。」
マキナはさらに強くレイを睨みつける。そして勢いよくベッドに飛び込む。
「今晩はベッドを貰いますからね!レイはそこで寝てください!」
「わかったわかった。とにかく有難う。これで下らない事件も解決だ。おやすみ、マキナ。」
事件が起きた翌日。朝食の時間になり、ぞろぞろと広間に人が集まって来る。ジャンの騒動を忘れられない宿泊者達は昨晩に続きぎこちない空気が流れていた。そこにケーニッヒが現れ、広間にいた宿泊者達に声を掛ける。
「みなさん、おはようございます。全員お集まりですか・・・あれ、ジェシカがいませんね。フランカ、彼女を呼んできてくれるか?」
「あ、はい。」
フランカは小走りでジェシカの部屋へと向かった。彼女と入れ違いで厨房から広間へと顔を出したティムがケーニッヒの問いかけに応えようとする。
「あれ、ジェシカならさっき・・・」
ティムが言いかけたその時、フランカの悲鳴が宿中に響く。レイは誰よりも早く悲鳴の元へと駆けつけ、フランカの安全を確かめる。
「フランカ、無事か?何があった?」
「レイさん・・・あれを・・・。」
フランカが指さした先はジェシカの部屋であり、そこには大量の血が飛び散っていた。レイは部屋中を見渡したが、またしてもそこには《《被害者の姿が無かった》》。遅れて駆けつけてきたケーニッヒが、その光景を見て腰を抜かす。
「ジェ、ジェシカは?!あの子はどこに?!」
ケーニッヒはレイの足にしがみつき、そう言った。
「ケーニッヒ殿、落ち着くのだ。ジェシカはこの部屋には・・・」
「どうしたのですか?」
声のする方向へ振り返ると、そこには仕留められた兎が入っている大きなカゴを抱えたジェシカの姿があった。
事件はまだ続いていた。