七行詩 811.~820.
『七行詩』
811.
愚かな男は 道化の仮面を被っている
誰かを探すこともなく
誰にも探されることはない
踵を鳴らし 無様に踊りましょう
自分の存在を確かめるために
喉を鳴らし 惨めに歌いましょう
自分の存在を知らせるために
812.
一息では 伝えきれない思いがある
私は 試してみたことがある
この目が貴方に向かう理由を 並べようとした時に
一息だけでも どれほど次々と出てくるものか
終わらない歌が 一つあってもいいでしょう
永遠に完成することはない
軌跡は続き 足跡が止まることはない
813.
冬の夜は長い方がいい
明日を夢見る子供たちに
安息を与えてあげてください
冬の朝は寒い方がいい
寝惚けた重い瞼から
熱を奪って 目覚めさせてください
朝と夜を 繰り返し夢へと歩を進める
814.
いつか貴方に見てほしい
貴方に出会ってから始まり
貴方の居ないところで 変わった私を
あれから自分なりに頑張ったのです
貴方がその輝きを掴んだように
もう昔には戻らない
間違いだらけでも 続きを始めましょう
815.
真冬の夜に 扉の外で
戻らぬ人を 待ったことはありますか
貴方はきっと 知らないでしょう
その間 私を温めていたものが 何なのかも
そして再び町中で見つけたとき
何を恐れ 呼び止めることを 躊躇ったのかも
ここまで私を温めていた 貴方はどんな顔をするのか
816.
千の夜が明け さらに千の夜を越え
長い準備をしてきました
しかし万全とは言いがたい
また更なる準備が必要でしょう
この船が海に出たら
すぐに戻ることはできないので
再び港に着く頃には 貴方が迎えてくれますか
817.
偉大な音楽家の言葉
「ミュージシャンと付き合うなら
その人が貴方を大事に思うなら
貴方のために書かれた曲が 一つでもあるはず」
それは全く正しかった
私のために書かれた歌などなかった
だから私は今 貴方の傍には居ないのだ
818.
二人きりの会話は 言葉を選ぶには速すぎて
全てが声にはならない
伝えることができたことには
まるで意味などなかったかもしれない
私が欲しいのは 時間だけ
全てが言葉になりきるまでの時間か
或いは 中身のない会話も 重ねてゆけるだけの時間か
819.
どうか許して、
僕はただ 貴方を笑わせたかっただけなんだ
偽りなく 伝えることで壊したものを
たくさんの嘘で 修復しようとしたけれど
一体 他に何ができただろう
独り立ち尽くし ある時は大地に腰を下ろした
考えたとしても 何も出てこないんだ
820.
幸せは人それぞれで
いつも人との間にあるとは限らない
一つの好意が生まれた場所には
同じだけの傷が生まれるでしょう
それが誰のものであれ
全ての人が 無傷のままでは居られない
その時 傍に残るものが 幸せへの鍵となるでしょう
すみません、予約漏れがありました…!