24のまにまに脚の雑談
【進化の部屋】
何もない空間に白の部屋へと続くドアがある。
クマ一頭とカエル一匹とカピバラ一匹がいる。
遠闇『ねぇちょっと確認なんだけどさ、地球上の動物が四つ脚なのってなんで?』
宵闇|《そういえば脚と翼の関係性は13のまにまに話しかけてそのまま流れていたね》
しらず〔ふむ。どこまで話したんだったか……ああ、そうだ。“動物の脚は魚類の鰭が発達したもの”という話をしたんだったな〕
『そのあとおたまとカエルどっちが先に生まれたのか問題で紛糾してた』
《思えばだいぶ初期の段階で脱線したよね》
〔海中と違って陸上に近づけば重力の負荷は大きい。重い胴体を支えるためにより適した形と骨格へと進化していったんだろうと言われているな〕
『じゃあ、なんで四つなの?』
〔そこが難しい。はっきりしないんだ。たまたま四つ脚の生物が地球環境に適していたから生き残ったと言ってしまえばそれまでだが、そもそもそれ以外の本数の動物が過去をさかのぼっても存在していたという話は聞かない。つまり、魚類の段階で既に四つ脚への道しか示されていなかったという事になる〕
『魚類の段階で?』
〔脚に変化しうる鰭の数が4つしかなかった……ということになるんだろうな〕
《動物の脚に進化したのは胸鰭と腹鰭だったっけ。他に脚になりそうな対の鰭を持つ魚はいなかったのかな》
〔調べた中では古生代に繁栄した”棘魚類”と呼ばれる種類だけは胸鰭と腹鰭の間にも複数の対鰭を持っていたようだ。しかし、残念ながら今の魚類からはそれは失われてしまっている〕
《つまり、地球環境に適していなかった?》
〔というよりは、不要と判断され進化の過程で失われていったんじゃないかと踏んでいる。速く泳ぐには尾鰭の方が効率が良いだろうしな。まあこれは生息環境の急変でたまたま生き残れなかった可能性も充分にある……複数の猿人の中でたまたま今の人類だけが生き残ったように〕
〔他には、四本あれば歩行に最低限必要な数が賄えるというのも理由に挙げられる〕
《重心が身体の中心に来るから安定するんだね》
〔そうだ。トカゲ体型ではもし前脚が一本欠ければ途端に歩行困難になるだろうな〕
『ねぇ、丸い胴体に二本の大きな前脚と一本の後ろ脚なら結構重心取れるんじゃない!? イメージは松葉杖二刀流!』
〔悪くないな。生態はちょっと考える必要がありそうだが〕
《イッポンダタラかな?》
『でもさ、虫はもっと数が多いじゃん。なんで動物はそうならないんだろ?』
《もしかしたら時間の問題かも。四足動物が陸上に進出してまだたった5億年程度しかたっていないし、その間に環境が安定していて姿を変える必要性がなかったのかも》
〔確かに、まだたった5億年だな。その間虫は動物よりもずっと速いサイクルで世代交代を繰り返し様々に多様化してきたわけだ〕
『ケ~~~ッ! こちとらおめぇら四足動物とは年期が違わぁ! 大人しくママのおっぱいでも吸ってなァ~ッ! byムカデ』
『って事か!』
《とりあえずその挑発はほ乳類以外には通用しないよ? 遠闇君》
〔さっき言ったように四脚のうち一つ欠けると歩行は困難だ。だが六脚あれば一本欠けても歩くのに不自由しない。二本欠けても欠けた場所によってはまだ歩ける。あらかじめ失うこと前提の数を用意しているのかもしれないな〕
『ふーん。それなら動物もスペア脚用意すれば良かったのに』
〔外骨格の虫に比べて、内骨格の動物の方が一本におけるエネルギーを多く食うのかもしれない。そのかわり、内骨格はより頑丈で筋力を生み出す〕
《量より丈夫さを取ったんだね》
〔そうなるな〕
『そっか。虫とは目指した方向が違うのかぁ』
〔まあ、これはあくまで魚が起源の地球上の動物の話だ。そうじゃない動物をつくるためにも私たちはここにいるんだ。やりたいようにやってみるといいんじゃないか〕
『おーしわかった! これを元にSFの部屋でもって色々考えてみるよ! ありがとしらず、宵闇君、じゃまたね!』
〔……はりきって帰って行ったが、今の話を他のブレインズにどれだけ説明できると思う?〕
《なんやかんやで済ますと思うよ》
つづく