16のまにまに目の雑談
【進化の部屋】
何もない空間に白の部屋へと続くドアがある。
クマ一頭とカエル一匹とカピバラ一匹がいる。
遠闇『ついに! ついに探検2を乗り越えたぞー!!』
宵闇|《こんなに長引くなんて、不甲斐なくてごめんよ遠闇君》
『謝ることないよ宵闇くーん! 立場が変わればもしかしたらこうなっていたのはオイラだったかもしれないんだから!』
《ううん、あれが遠闇君ならきっと勢いに任せてうまいことやれていた筈だよ》
しらず〔確かに遠闇なら適当に不憫な目に合わせておけば物語が展開するからな〕
『適当に不憫な目に合わせるって何!?』
〔お騒がせキャラは物語を動かすのに欠かせないストーリーテラーという事だ。最悪【幻想の部屋】に遠闇召喚でテコ入れも考えていた〕
《そうだね》
『そうだったの!? そんな計画オイラだけ全然知らなかったんですけど!?』
〔サプライズで呼び出して驚く反応を楽しむ予定だったからな〕
『そんなサプライズってある!?』
《でも遠闇君と一緒に回れなくてちょっと残念かな。また機会があったら一緒に探検しようか、遠闇君》
『いつでも呼んでよ宵闇くーん!』
〔いやとにかく宵闇もお疲れ様だったな〕
《1年も進行を止めてごめんね、二人とも》(※執筆当時)
〔そう心配しないでも、今回は環境設定をそこそこに複数の生物設定を試行したことも要因だと思う。今後に生かしていこう〕
『んー、もっと生物といっぱい触れ合ってみたらどうだろう。触ってみたりひっくり返してみたり、そうした反応を思考すると面白いと思うよ』
〔……確かに、ファーブルも見ているだけではなくちょっかいを出しているな。遠闇の癖にたまに鋭いことをいうものだな〕
『なんかオイラだけ扱い雑だけど言っとくけどオイラも君も同じブレインズだかんな!?』
《わかったよ、参考にしてみる。次は【SFの部屋】の生物設定だね。がんばって遠闇君》
『おうともよ! でも久しぶりすぎて進行役のやり方忘れちゃったな!?』
~思考実験16 一つ目リベンジマッチ〈Aチーム〉進行中~
『……ってわけで進めてみた! 進めてみたけど、なんか一つ目談義で止まりまくってる!』
〔そっちにも一つ目フェチがいるのか、まったく……〕
『そっちにもって?』
《【幻想の部屋】でも一つ目生物を作りたいブレインズがいたんだよ》
〔ブレインズは皆で一つの意識集合体だからな、どちらのチームに居たとしてもおかしくはない、か。まあしかし、SFの部屋ではBチームとは違う結論にたどり着きそうではあるな〕
《そうなんだ》
〔生物としての身体能力も目の用途も全く別物だからな〕
《僕たちのチームでは、この辺りが問題になって諦めたんだ》
・性能の良い目を維持するエネルギーを得るのが難しい
・性能の良い目を持っていても用途がない
『エネルギーかぁ』
〔脳にしろ眼球にしろ、構造が複雑になればなるほどそれを維持するエネルギーが必要になるようだ〕
《一つ目候補だった【ムチムー】という生物は獲物があんまり栄養価高くなくてね、体の大きさを維持するだけでエネルギー使い切っちゃうかなって感じだよ》
『ふーん。用途がないってのは?』
〔生物そのものの足の遅さから、捕食にも索敵にも使い道がない=この生物は眼球が発達する方向への進化はしないだろう、ということだな〕
『なるほど、そこいくとこっちで今考えてる【ヤツアシテンモク】っていう一つ目生物は、足も速いし維持エネルギーもちゃんと獲物から得られるね。こっちの一つ目生物は実装できそうだ!』
《それは何よりだね。しらず、もし今後一つ目生物を考える時の為に情報をまとめてくれるかい?》
〔了解した〕
〔そもそも一つ目生物が生まれないのではないか、という点に関しては現世界に先例があることからブレインズはほとんど問題にしていない〕
・ミジンコ
・ミジンコサイズの古代生物カンブロパキコーペ
・爬虫類等の頭頂眼
・ヒトデ
〔ミジンコは元々対の複眼が一つになったもののようだ。とはいえネット上だと資料が少ない。いくつかの記事と某専門家の方から口頭での情報だ〕
〔カンブロパキコーペも体に対して大きな眼を持っている。これは元々が対だったのか、それとも異なる成り立ちなのかはまだほとんど判っていないようだ。これも【ヤツアシテンモク】と同じく複眼一つ目だぞ〕
〔頭頂眼はどうやら別れた一つが頭頂眼へ、もう一つが松果体へと形を変えているようだ。ミジンコとは違い細胞の一つが全く違う機構へと変化する場合があるというのは覚えておいて損はない。中には四つ目を持つトカゲもいたらしい〕
〔ヒトデは足の先に光に敏感な目を持っている。現世界の生物はまず光に反応する原始的な感覚器官を手に入れ、それを進化させて明暗が判る複眼、より複雑化したレンズを持つ複眼、水晶体を持つ眼球を持つに至った。【ムチムー】の一つ目模様に仕込んだ“何らかの感覚器官”は、将来これらの目に成長することを期待したものだな〕
『現世界に一つ目がほとんどいない理由についてもよろしく頼むじぇい』
〔上で述べたように一つ目に至るルートは確実に存在する。にもかかわらず現在微生物を除き一つ目が存在しない最も大きな理由は"二つある方が有利だから"に尽きる〕
〔草食動物は顔の横に目があることで広い視界を確保する。肉食動物は顔の前に目があることで獲物との距離を測る。どちらも一つ目では出来ない事だ〕
〔一つ目の生物は微生物より大きくなろうとした時、目の数で不利に立たされ種の生存ができなかったともとれる〕
〔そこへいくとそこそこ大きい【ヤツアシテンモク】は大変だな。厳しい生存競争となるかもしれないぞ〕
『もともとこっちの部屋は生き残れなくっても恨みっこなしよの弱肉強食世界だからね、滅んだら滅んだ時さ~』
《ある程度は食物連鎖の助けも期待できるね。被食者の全体数が減れば捕食者の数も減ってバランスが取れる》
『ま、これで次回一つ目生物増やしたくなった時も下調べはバッチリだな!』
《これ以上一つ目生物増えるかなぁ?》
〔正直なところ一つ目フェチな奴らはもう大人しくしててほしい気がする……〕
つづく