9話 厨二病高校生
俺は一人ぼっちだ。
それは俺が誰とも違うから。
カッコつけだとか、そんなもんだよ。気にしないで欲しい。だけど、俺は言い続けるんだ。俺は他の奴らとは違う。
異質な人間性ってのは理解しているつもりだ。虐められていた奴が復讐したいと思うのも、理解できる。でも、理解ができるだけで俺は同情はしない。
力を願うばかりで、まともになにかをした事がないのでは、俺はそいつを認められない。
俺が虐められているやつを目にした時に思うのは、ああ、俺とは違うんだなってくらい。
俺は抗ってしまうし、抗う事が俺の生き方みたいになっている節もある。だから、自分が納得できなければ俺はそれを最後まで収める事ができない。だから、俺は弱いのだと思う。だから、俺は誰にも同調できない異質な一人ぼっちなのだとも。
俺がベッドの上で上体を起こして、近くを見る。吉田が寝息を立てていた。俺はコイツになにを思うのか。コイツは俺に何を感じるのか。
独り善がりと書けば独善だ。まあ、結局俺がコイツのことを見張るとか、助けるとか、裏切るとか、笑うとか。そんなことはどうでもいいんだ。
ずっと、何が正しいのか考えて、何も答えが出ないことを正解にしてしまった。
パンはパンでも食べられないパンはなんだ。ただし、これはなぞなぞではない。
という問題のように、俺たちが抱える善性と思しきそれは、結局、わかりやすいものであって、それでも断じられない。
ちなみに先ほどの問いの答えは「ない」だ。腐ったパンは食べられないとか、言うものもいるのだろうが、そう言うことではないのだ。腐っても腹を壊すことを覚悟すれば食べられる。
正義だとか悪だとか、それがぶつかって、果たして何が正義だとかと人は求める。
ただ、俺は歴史が後世の人間がそれを決めると言うのが正しいとは言えないのだと思う。
そして、現状俺たちがその場に立たされた時に、俺たちは正義を信じられるかを求めるのではなく、我が儘を貫いて進むことをしなくては。
俺たちには正義も悪もない。結局、それは我が儘を綺麗な正義で飾り立てたいだけなのだろう。
俺だって、同じなんだ。
取り敢えず、くだらない思考は放棄しよう。こんな考えがあるから痛々しい高校生だと言われても文句は言えない。
さて、この世界には未だ時計がない。それでも窓から光が差せばもう朝なのだと言うことも理解できる。
ベッドから降りて、吉田の体を揺する。
「おい、朝だぞ〜」
しばらく揺すっていると、吉田は身を捩り、目を覚ました。
「ふわぁぁ。あ、黒山くん。おはよ」
彼は眠たげな眼差しで俺を見て、そう挨拶した。俺はカーテンを開くと、さらに眩しい日の光が俺の目を刺激した。
「黒山くん、寝癖すごいよ」
そう言われて、俺は自分の髪の毛を触ってみる。確かに上に爆発している。
ただ、入浴するという行為は俺たちには許されていない。井戸まで行き、水をかぶる必要がある。
「ああ、井戸ってどこにあんのかなぁ……」
俺たちはこの世界のことをあまり知らない。来たばっかりで、何があるのかも理解していないのだ。
「メイドさんに聞いてみる?」
「できるだけ年配の人がいい」
俺がそう言うと、吉田は夢がないなと苦笑いした。
「若いメイドとか話しかけづらい」
俺がそう言うと、吉田は確かにと、納得した。
すごい久しぶりな気がします。