2話 三人の騎士
「ふっ、その程度造作もない。私が全霊でお相手しよう」
もう、何も考えたくない。目の前の変態共が滾っていることとか、俺の言葉が火に油を注いでいくのを何もできずに見ているだけとか、ただの地獄じゃないか。
全霊でお相手を断ります。本気でお引き取り願います。何にもできないけど、何にもしないから許して!
「神官はどこに!」
あの神官はこの城の構造わかってないから!俺もわかってないけど、アレはまずいから!
むしろ宗教の方のやつだから衣装が大切な奴だったらアレおわってるからね!?
やべえ、もう完全に終わった。クラスメイトなんて助けてくれるような感じ見せないよ。やれやれ言ってるだけのやつと、俺を睨みつけるやつ。あとはアホみたいな顔するやつ。
そこのやれやれ教信者、立場変われよ!
「三人がかりでいくわよ!」
「おい、俺が最初だからな!」
「私だって譲る気はない」
何なんだよ、やめてくれよ。
「私のために争わないで!」
だから、お前は黙ってろぉ!
口を開くな、縫い合わせるぞ!
やめろ、俺を見るな。見ないでくれ。と言うかいっそ殺してくれ。
ポン。
肩にガシャリと少しだけの重さを感じて振り返る。
そこには鎧の兵士が親指を立てて、俺の肩を叩いていた。顔は見えないが、多分いいことあるさって言ってる気がする。
ーーお前は、目的忘れてるよね!?
こいつ、俺を捕らえるのが目的だったはずなのに、何をやっているのか。いや、別にいいんだけどさ。
王様は何をしてるんだよ。
チラリと王様の顔を見ると、放心したような、しかし、何故か取り繕うように取り敢えず、うむと頷いて見せている。
座り心地が悪いのか、何度もモゾモゾと動いている。
「よそ見してる場合かしら?」
うわ。
え、気持ち悪!
何でこいつビキニアーマーになってんの?さっきまで普通の鎧だったよね?しかも無駄毛が多いし、色々はみ出ちゃってるんですけど。
「俺を忘れてないか?」
あ、あと二人……。
おい、何だそれは。なんで、こいつは全身タイツなんだ?
この時代にあったのか?
色々時代設定打ち破ってるよな。
「ところで、お前はどこにいるんだ?なかなか見づらくてな……」
「ふん!」
俺はそいつの股間を全力で蹴りつけた。ただ、残りの二人がどうにもならん。
と言うか、あと一人はどこに行ったんだ。
「私はここに居るぞ」
後ろから声がして振り返る。こいつら本気で打首ならないの?
本当に不敬だよ。
お前、王様王妃様の前で何晒しとんじゃ!?
俺は声も出せずに慄いていると、そいつは何かを履き違えたのか大笑いしながら言って見せる。
「私の尊大さに驚いた……」
その言葉は最後まで吐かれることはなく、鉄の拳により吹き飛ばされ、中断させられた。
「ぶべら!」
そいつは勢いよく吹っ飛んで行き、壁に激突する。
「お前ら相手に屈するものか!」
だから、何も言わなくていいのに。この口は本当に無駄なことばかりしてくれる。何が原因だ。絶対俺じゃない。俺は絶対にこんなこと言わないから。
俺がぐちぐち、脳内で文句を垂れていると、扉が開かれた。
「教皇と神官を連れてきました!」
良く見つけられたね。と言うか、良く連れてこられたね。君、なんの権限もないよね。コスプレ野郎の言うことよく聞いてくれたよね。
「これはどう言うことだ?」
そう尋ねたのは教皇だろうか。何だか声色は穏やかだが、ひしひしと怒りを発している。
俺の方へとコスプレ神官がリアル神官を案内して連れてくる。
「大丈夫ですか?」
神官は美形の青年だった。
お目汚し失礼しました。