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19話 ひのきんとリタ

 ドラゴンとの戦闘、そしてひのきんとの再会からもう十五分程度。

 ようやくひのきんも泣き止み、元のひのきんに戻ってくれた。

 抱きとめるためについていた膝に力を入れ、立ち上がる。


「感動の再会は終わったか?」


 傍らのリタが声をかけてくる。

 腕を組み、暇を持て余していた様子だ。


「ああ、おかげさまで。ずっと空気読んで黙っててくれてありがとな」

「いや、とても部外者のオレが口を出していいような雰囲気じゃなかったからな。オレだって空気は読める。それよりもアルバート、望み通りに助けられてよかったな」

「本当によかったよ。リタの助けがなきゃどうなってたかわからないからな。心の底から感謝してる」

「へっ、よせやい。チビ、お前も助かって良かったな」


 ひのきんに視線を移し、見下ろしながら言うリタ。

 そんなリタの言葉はひのきんの気に召さなかったらしい。

 ぷくう、と頬を膨らませ、ぴんと身体に力を込める。


「うぬぬぬぅ! だ、誰がチビなのじゃ! 妾は身長千ミリメートルなんじゃぞ! 充分に大きいであろうが!」


 ミリメートルで言うことによってちょっとでも大きく思わせようとしてるみたいだけど、ようは百センチだからな。完全なる幼児体型である。


「というかお主ら、いつの間にそんなに仲良くなったのじゃ! 妾が知らぬうちにぃ……!」


「名前で呼び合いおって!」と怒り心頭のひのきん。

 まあ、色々あったからなぁ。


「ふふん。なんだチビ、オレに嫉妬してんのか?」

「ち、違うもん! 妾が嫉妬などするはずが無かろう!」


 リタが優越感を顔に滲ませると、ひのきんはプイッとそっぽを向く。

 ククク、と小さく笑うリタ。どうやらひのきんの反応が面白いようだ。

 ひのきんは大抵のことには大きく反応してくれるので、その気持ちは分かる。

 ともあれリタは、さらにひのきんの感情を揺さぶる。


「オレとアルバートが、あんなことやこんなことをしてたとしても……か?」

「あ、あんなことやこんなこと、じゃとお……!? あ、アル、嘘じゃよな!? 嘘だと言うてくれ!」

「いや、何もなかったぞ」


 縋るような目で俺の服を掴んだひのきんに言う。

 これ以上からかうとさすがに可愛そうだしな。

 返答を聞きホッと安堵の息を吐いたひのきんを見て、リタはケラケラと腹を抱えて笑った。


「あはは、本気でビビってやんの。面白いなお前」

「ぬ、ぬぐぐぅ……!」


 ギリギリと歯を擦り合わせるが、言い返す言葉が見つからないようだ。

 ここはひのきんの味方をしてやるか。

 再会したばかりで、俺自身だいぶひのきんへの気持ちも高まっていることだしな。


「ああでも、そう言えばリタには『身体中を好きに触っていい』とは言われたっけ」

「なんじゃと!?」

「お、おい! それは言わない約束だろアルバート!?」


 会話が始まって以来初めて、リタの顔に焦りの色が浮かんだ。

 それを見て事実だとわかったのだろう、ひのきんは微笑を浮かべながら小さな拳をポキポキと鳴らす。

 こええ。とても外見幼女には思えぬ迫力だ。


「おい武器狩……そこのところ、詳しく教えてもらいたいものじゃなあ……? うちのアルを誑かしたのかえ……?」

「ち、違えよ! 誤解だって!」

「ええい、言い訳むよー! こちょこちょこちょー!」

「お、おい止めろ、くすぐるなっ! くふっ、くはははっ!」


 砂漠の真ん中でくすぐる美少女と、くすぐられる美少女。

 俺はそんな二人を笑いながら見守った。

 ひのきのぼうが盗まれた時はどうなることかと思ったが、こうして手元にも帰ってきたことだしめでたしめでたしだな。




「ひ、酷い目にあった……」


 ひのきんによる数分間のお仕置きが終わった後、リタは疲労一色の声を出す。

 そしてくすぐりのお仕置きをしたことで、ひのきんの溜飲も下がった様子である。

 態度だけは最初と変わらぬ強硬姿勢をとってはいるけど、多分ポーズだ。

 本心から怒っている様子は見られない。


「ふん、妾を怒らせるからそうなるのじゃ」

「からかって悪かったよ」

「わかればよいぞ。まあ、ちと妾もやり過ぎた。悪いの」

「うんうん、二人ともあっという間に仲良くなって何よりだ」


 正直波長が合わないかもしれないと思っていたが、杞憂だったようだ。

 二人を見ていると自然と笑顔になってしまう。

 うんうん、やっぱり仲がいいのが一番だよな!


「何を言うておる、アル。次はお主にも仕置きするのじゃぞ?」

「へ?」

「アルバート、お前オレを嵌めやがって。覚悟しとけよこの野郎……!」

「え、あれ、リタも?」


 ……あれ、おかしいな。いつの間にか風向きが変わってないか?

 どうしてこうなった?

 じり、じり、と下がるが、ひのきんとリタも併せて前進してくる。


「ここは協力するぞ、ひのきんとやら」

「わかっておるわ、リタとやら」

「待て待て待て待て、に、二対一は卑怯だぞ!? な!?」

「「知るかぼけー!」」


 そんな言葉を綺麗にハモるなよ!

 俺の決死の逃亡もむなしく、数分で拘束されてくすぐり地獄を受けることになった。

 ドラゴンとの戦いよりもきつい戦いだったぜ。

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