覚悟の行動
―7―
銃の弾数は十分に揃えた。
猟銃の整備もした。
後はその場所に向かうだけである。
居間で最終確認を終えたタケルはポーチと銃を背負って、壁に寄りかかり寝ているおっさんに声を掛けた。
「おっさん、行くぞ! 」
おっさんは欠伸をして目を擦り、横に立て掛けてあった自分の大剣を手に取る。
「分かってる。そんなに急かすな」
タケルは気の抜けた相方の姿を見て腰に手をやり、ため息をついて、早足に玄関に向かった。
すると、扉はいつの間にか開いていて、その前にはアルマの姿がある。アルマはタケルの顔を見て、言葉を発した。
「……行くんだよね」
タケルは当然だと頷く。
見れば彼女の格好は、仰々しい銃も、きっちりとした指定の服も、ポーチも揃って、いつでも狩りにいけるものだ。
彼女は銃を握りしめてタケルに言う。
「昨日、迷惑掛けといて言えることじゃないのは分かってる。でも、私も行きたい。今度はちゃんと力になって……あなたにお礼がしたい」
それを聞いたタケルは、自分とは違う彼女の銃と、指定の服を見て首を振った。
「……お礼なんて、必要ないだろ。それは全部、アルマが自分で努力して得たものだ」
アルマは唇を噛んで一歩踏み出し、タケルに訴える。
「違う! 私は……! 」
しかし、タケルの答えの前に、彼の背後から低い声がした。
「まぁ、いいじゃねえか。数がいて困るもんでもないだろ」
それは間違いなく、剣を引きずってやってくる、おっさんの声である。タケルは目を細め、口を尖らせた。
「おっさん……! 」
おっさんは含みのある笑みを浮かべ、アルマに言う。
「そんなことより、今日は飯ぐらい食っていくんだろ。何食いたい? カレーか? それともオムライスか? 」
タケルはおっさんの側に走り寄り、おっさんの頭を思い切り叩いた。
「……って、何意味ありげな顔でどうでもいいこと聞いてんだ! 今日行く場所分かってんのか!? 」
叩かれたおっさんは頭を擦りながらも、呑気な声で答える。
「王が《居た場所》だろ? 」
※―――※
異獣達が人を、家を、畑の草を食らう様を高台から俯瞰しているのは、大きな黒い塊。それは一見、勇猛な獅子のようであるが、それにしては幾本もの足と羽を持ち、異様な雰囲気を纏っていた。
そして、悲鳴の最中でも、彼はその名を疑うように何の指示もかけない。
ただ、広大な荒野の向こう、遥か遠くに見える大きな都市に目線を移して問いかけるように悲しげに唸る。
ふとしたとき、村から鳴き声が聞こえた。その声は人間の槍に刺されて傷ついた小さな異獣のものらしい。獅子はそこに舞い降りて、槍を持っていた人間を踏み潰した。
逃げ惑う人間たちの中で、獅子の横にいた小さな異獣は、獅子がどけた足の下、潰れた死体を必死で貪る。
《つづく》




