第3章 その12 その前世と違う世界とギルドでの恐怖
もうちょっとで年を越しますね。令和元年がもう終わるのかと思うと、自分が更に歳をとったなと実感してしまいます。
街の中心部、冒険者ギルドのある建物を目指す。冒険者達は、迷宮街区や依頼をこなす為に意気揚々と出発していく様だ。
「本当に…異世界なんですね〜」
『頼むから、念話で喋ってくれるかな。ココが居た世界、多分【ニホン】なんだろうけど。其処とは違い、いろんな人種が住むこの世界はソウルグランディア。言葉や価値観、文化や技術も違う発展の仕方をしている世界。なんでココがこの世界に紛れたのかは知らないけれど、転移してきたのは事実。そして、まず元の世界には戻れないと思う』
「戻れないんですか?!」
『念話で喋れっ!』
『…ご、ごめんなさい』
『はぁ…私とルナマリアは、この世界に新たに産まれたんだよ。単に前世で【ニホン】に住んでいた記憶を持っているに過ぎないから、戻れないし戻る必要もない。大体、耳を見たら分かるだろう?私は長く尖っているし、ルナマリアは頭の上に獣耳がある。こんな姿で戻ったらパニック必至だよ』
『…ハロウィンもあるし〜、仮装する人もいるから大丈夫なんじゃないかな〜?』
『ハロウィン?収穫祭だったかな。あれは子供がお化けに扮して近所を回り、お菓子をねだるとかそんなんだよな?』
『…ん〜、大人も子供も仮装するお祭りだったと思うけど〜。渋谷のスクランブル交差点とか〜、多くの人でごった返していますね〜』
『『…は?…』』
『え〜?知らないんですか〜?超有名なんですけどぉ〜』
『アルフさん、そんなのありましたっけ?』
『…いや、前世でもそこそこ生きたけど、そんなイベント無かった筈だ。大体、渋谷は太陽光発電を軸とした環境特区として自然が溢れる街だった筈だ。盆踊りとかではないんだよな?』
『…え?環境特区?普通にビル群が立ち並ぶ若者の街ですよ〜』
『…なぁ、ココ。【ニホン】の正式な国名を言ってくれないか?』
『え〜?【ニホン国】。そのままですよ〜』
『…そうか…別次元の【ニホン】と考えた方が辻褄が合うな』
『え?』
それから色々と話してみるが、どうも大戦後から違う歴史の様だ。冷静に考えてみれば、この世界はグランデ様達が管理している。転移とはいえ、本来なら女神達が介在して…関わっていないのか?夜中にでも確認してみますか。
◇
予定よりも更に一ハウル(時間)ほど遅れてしまったが、冒険者ギルドに到着…。
「アルフちゃ〜ん」
「…お姉様〜」
私にはいつもの洗礼だが、ルナマリアに抱き着くのは…メルバさんか。後の事を思うと、遣る瀬無い気持ちになる。そしていつもの事だが、モリーさんに抱き締められると、周りから一斉に殺気が来るのだが私だと分かると直ぐに弛緩するのもお馴染みではある。
ステル姉妹は、冒険者ギルドの看板娘と言っても過言ではない。求婚され、断られってのは定番で、誰が射止めるのかと酒場では専らの肴である。
そして…私にもファンがいるのだ。それも老若男女問わずである。殆どの女性から、抱き締められたり求婚されたり養子にならないか等はまだ異性だから苦ではない。だが男共からも同様なのだ。流石に抱き締めや求婚は、モリーさんから止めが入る(本気の殺気)ので無くなったが、その後もこの世界では貴重な菓子をくれたり、アクセサリーや魔具をくれたりする。
私が何をしたというのか。普通にギルドで討伐系しかやってないにも関わらずなのにだ。
「アルフちゃん、ちゃんと食べてるかい?丁度お菓子が余ってるからこれでもお食べ」
名も知らないお婆ちゃん…余ってる?どう見ても先程買ったばかりのクッキーだよね?それも紙袋の中を見たら、二十枚も入ってる。買うと銀貨数十枚はするはず。遠慮しようとすると…。
「子供が遠慮するもんじゃないよ。ではね」
私の頭と頬を撫でて去って行くお婆ちゃん。ギルドを出る瞬間に見えてしまった。私を撫でた手を、自分の頬に撫で付けて恍惚に至るのを。
こっ、恐えぇ。
読んで頂いた方々に感謝を。
次回は…予定の土曜日ではなく、31日の大晦日を予定です。
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