第3章 その11 その行為と想いのこうか
サブタイ…上手くハマると嬉しいもんです。
でも『その』から始まるのがちょっと辛い時があります。
面倒くさい事この上ないが、少しでも小銭に化けるならと雑魚共を衛兵所へ連行している。良かったのは、現場から二百メル程しか歩かなくて済む事だ。
南西の詰所に着くと当然、誰何される。
「なんだ?お前達…えっと…もしかして剣姫様ですか?その二人に此奴等が不埒でも犯したんですな!」
はい、勘違い入りましたぁ〜。母様、どんだけ有名人なんだよ。てか私も被害者になってる?冒険者の装備してるんですが…更に不埒って時代劇かっ!
本当に面倒くさいので、全て私が説明して書類などの署名も私がしました。なんでこの程度で一ハウルも掛かるんだよ。この街の衛兵なんだから、事務手続きだけでいいんだよ。衛兵なのに母様と握手なんて何処のヒーローショーだよ、まったく。
「ではアルフ君、後日ギルドから褒賞金も出るから。冒険者稼業、頑張ってな」
大勢の衛兵に見送られる私達三人。あの詰所に何処から湧いたのか十七人もいるって。
ちなみに、べナールの街には北門、南門、西門があり、堅牢な街壁の中に詰所がある。その詰所が八ヶ所、東西南北に均等にあるのだ。詰所には、対応室、控室、救護室、トイレ、壁上に上がる階段などが壁の中にある。文明レベルは低いのに防衛意識はこの世界も高いんだと感心した。閑話休題。
どっと疲れた身に、顔を洗うように軽く叩き活を入れる。先ずは武器の充実、ヴァルドゥさんのお店へ。
扉を開けるとカラーンカラーンと良い音色が心地良い。奥からドワーフにしては美丈夫が荷物を抱えて出て来る。
「らっしゃい。エミーに坊主か。研ぎか?」
横目でチラッとしか見てないヴァルドゥさん。思うんだが、何故ルナマリアの頭の上の獣耳に気が付かない人が多いのだろう。まぁ、どちらにしろ全て事情は説明しなきゃいけないしなぁ。
「そうか、エミーは逝ったのか。悪かったな」
「お気になさらず。それでルナマリアにもう一本、刀があると良いのですが」
「…待ってろ」
店の奥に…行かずにカウンターの下をゴソゴソと探って、一本の包みを出した。
「こ(れ)は影打だ。そのエミー…いやルナマリアが持ってる真打とほぼ変らねぇ」
差し出された刀をルナマリアが受け取り、刀身を晒す。鞘は全くの無垢だが、刃の部分は薄っすらと黒く光る。エミーが使っていた真打は光り輝く感じだっただけに、正に表裏な刀に見える。
「影打の方が若干、アダマンタイトの比率が多いんだ。まぁ、何とか何だろ」
「素晴らしいですね。お幾らですか?」
「…いらねぇ。真打渡した時に金は貰ってる」
本当かは分からないが、オーダーメイドだし試し打ちも含めた金額を請求するのは道理でもある。ここは有り難く戴くとしよう。それとは別に。
「重ね重ねになるんですが、私も小刀って無いですか?片刃の直剣でも良いですが。後、この子の革鎧や短剣も有れば助かります」
「…注文多いな…ちょっと待ってろ」
そう言って奥に行くヴァルドゥさん。んで、さっきからずっとチョロチョロと動き回ってるのが五月蝿い。
『ココ!物珍しいのも判らないでは無いけど、もう少し静かにしてくれないかな?』
「え?いや〜…」
『だって異世界だよ、武器屋だよ?こんなのニホンじゃ見ないでしょ!?』
怯えるよりは良いかもしれんが、一応女の子だよね?ルナマリアなんか大人しいじゃ…。
[ウットリ]
あー…変に目覚めなければ、良いなぁ。
暫くして、ヴァルドゥさんが箱ごと持ってカウンターの上に置く。
「そこの嬢ちゃんの革鎧と短剣だ。短剣は鑽の剣だ。鎧は…調整出来ん(る)から大丈夫だろ。坊主にゃ、試しで作った短刀をやる。合わせて…金貨百十枚だな」
多分、また安くしてるんだろうなぁ。ヴァルドゥさん、手間賃とか作成料とか取ってるのだろうか?試しに短刀に詳細解析を掛けると、価値は金貨九十枚。他も併せたら元手だけでも赤字じゃないか。ん〜しゃーない。
「鑽の短剣を後、二本貰えますか?予備に欲しいので」
「…待ってろ」
『ルナマリア!ココ!直ぐに店を出る準備をしろ!私がお金を支払ったら、急いで出るから』
『え?なんで…』
『何でも案山子でもだ。絶対だ!』
『分かった』
『は、はい、分かりました』
ルナマリアは理解が早くて助かる。奥からヴァルドゥさんが出て来てカウンターの上に二本の短剣を置く。
「これで良…」
「はい!これ代金です!」
お金をカウンターの上に置き、短剣を急いで受け取ってお店を出た。
◇
「急になんだって…あん坊主は」
急なその振る舞いに苛立ったが、カウンターの上に置かれた二枚の貨幣を見て気が凪いだ。
「ちっ…貰い過ぎだ。馬鹿野郎が」
今日はもう店仕舞いして、酒が飲みたくなったじゃねーか。
「前から大人びちゃいたが……まだ坊主で、いんだぜ」
悪態を吐きながらも、心が暖かくなった。少年用に武具を作るのも面白いかもなと思う。それとも妹を嫁がせんのも…。自然と口の端が釣り上がる位に。
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