第3章 その9 その路地に迷い込んだ者
話を書いてて思うのは、何故このキャラ出てくるんだ?まだ後の話じゃなかったのかって事が多い事です。お陰でキャラ管理大変なんですが汗。
私は兎に角、夢中で走り続けていた。眩しい光のカーテンを潜る様に抜けても尚。もう息も絶え絶えで、身体もガクガクとする様に。膝に力が入りきらずにカクンとなって転けてしまった。大きな傷を負った訳では無いけど、全身痛いやら力が入らないやらで立ち上がれない。
私はとある酒場で働いていた。所謂、水商売だ。何故この職業だったかと言えば、単に実入りが良く身体を売る事もない事が決め手だった。何故なら親が残した借金を返す為に。本当は十六歳の未成年だけれど、お家もあるのに施設に入ったら面倒すぐる。私は自由がいい。
働き始めて一ヶ月、精々が手を握られる、身体の何処かを撫でてくるくらいなら我慢も出来た。お店に何度も来る常連客に気に入られた迄は良かったが、軽いスキンシップだけでは飽き足らず私自身を求める事が多くなった。当然、断ったがお店の副店長がグルになり嵌められた。
何とか信号待ちで止まっていた車から降りて、逃げた。兎に角、走って逃げた。
天に向かって整えようと呼吸をする。見上げた空は綺麗な青空だった。白い雲も浮かんでいる。
え?
待って
つい先程まで夜じゃなかった?
夜の繁華街を通り抜けて住宅街に入るくらいだったはず。
だからあの光のカーテンは高架の電車から漏れる光とばかり…
大きく深呼吸をして、周りを見る。身体的には落ち着いたが、気持ちは騒ついたまま。だって、夜だった筈なのにどう見ても昼間。今いるのは、どー見ても住宅と住宅の間の狭い路地。その家もクラシックと言うよりも、古めかしい年代物な建物。窓がサッシじゃなく、跳ね上げの木造ってどういう事?そういえば、電柱は一切無いわね。この辺りは全て電線地中化出来てるのかしら?
正面から人がやって来た。一瞬、追い掛けて来た連中かとも思った。何喋ってるか分からないが和気藹々と喋っている笑顔に悪意は見えなかった。外人さんかなぁ?ただのコスプレ好きなオタクかしら?だって鎧みたいなものを着ていたり、腰には剣があったりするし。
私に気付いたのか、三人は話しかけて来るが言葉が全く分からない。英語?フランス語?ドイツ語?それっぽいニュアンスとか発音もあるけど、全く解らない。英語なら日常会話程度なら理解出来る。でもそれ以上は全く解らない。私を指差し…いえ服かな?なんか三人で話している。そう言えば、お店の衣装のままだった。ラメの入った青いドレス。膝上で切れているので、座ると見えそうで見えない三角形が男を惹き付けるとか何とか。てか、そんな事はどーでも良いのよ。
相談し終えた三人はあからさまに下卑た表情になる。わっかり易い男たちね。私は商売してないわよ。
「私は売らないわ。買うなら他を当たって下さい」
私だって世間を知らない訳じゃない。そう言う職業もあるのは知ってる。でも私は商売はしない。だから三人に伝える。何かポカーンとした顔で固まった。ちゃんと聞こえたのかしら?
「#%¥:-*〜、@#*%¥-;#:!」(おい此奴〜、何喋ってるか全くわかんねーぞ!)
「%*…€£&#¥$〆々€!」(へっ。剥いちまえば何だって構わねーよ!)
全くもって話してる言葉が解らないけれど、下卑た笑い顔だけは続いているので、嫌な予感しかしない。まだ距離は三メートルはある。大声で叫んで逃げれば、誰か助けてくれるはず。後ろを振り返りながら叫ぼうとするが途中で止められてしまった。
「助け…ムグ」
あの三メートルもの距離を、一気に詰められた事に驚きと動揺が隠せない。拘束を外そうと抵抗するも、ガッチリとして放して貰えそうもない。この先の顛末に絶望し、涙が自然に溢れ落ちる。
連れ去られそうになった時、行く手を遮るかの様に小さな天使が現れた。
「今、助けるよ」
その子はニホン語で答えた。大柄な女性を従える様に駆け付けた天使。逆光で判り辛いけど、紛れもなく天使。だって身長は一メートルちょっとくらい。こんな幼児が、この状況に助けるって言ってくれた。これが天使じゃなかったら、夢でしかない。
「ルナマリア、回り込んで逃がさない様にして」
大柄な女性が一瞬で消えた。次の瞬間には後ろにいたのだ。嫌気のする男達に拘束されて気持ちが悪いのに、何処か現実離れしている。やっぱり夢なのかな?
読んで頂いた方々に感謝を。




