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第3章 その6 その挨拶は前世での話

遅れてしまい申し訳ありません。



先ずは落ち着く為に、荷物を寝室に置きに行く。其々、私とルナマリア、イレースさんとヴァレルさんで寝室を使う。ベッドも相変わらず良いものだ。前世は普通にあるスプリングマットがこの宿にはあり、掛ける布団も何の羽毛を使っているかは分からないが、羽毛布団だ。前世では慣れ親しんだものが、この宿にはある。うーん、後でミランダさんに何処で売っているのか聞いてみよう。あんまり高くないと良いのだが。


リビングに戻ると、丁度ノックの音が鳴る。どうぞと声を掛けると、ミランダさんと一人の少女が丁寧にお辞儀をしてから、ワゴンを押して入ってくる。


「食事とお茶を多目で持ってきたわよ」

「ありがとう、ミランダさん」

「一応、明日までの分で良いのよね?」

「とりあえずはそうですね」


ミランダさんが応えてくれている間に、もう一人の少女がテーブルの真ん中に燭台の様な物を置き、食事の準備をしてくれる。少し緊張しているのか、カチャカチャとフォークやスプーンを鳴らしている。髪は燻んだ金色で、後ろで縛って纏めている。背は150セメルくらい。着ているメイド服で判り辛いが、スレンダーの様だ。よく見ると首輪をしていて…更に耳先が尖っている。準備を終えたところで、ミランダさんが彼女を紹介してくれる。


「この子はリリィよ。張る・・のはこの子がするわ。そして一晩、守りもする。良いかしら?」

「リリィです。よろしくお願いします」

「はい、此方こそ宜しくお願いしますね」


リリィと呼ばれたエルフの少女…詳細解析すると、かなりなお姉さんだった。レベルも私とそう変わらないのに隷属。まぁ、過去まで解らないし詮索するのも野暮だ。リリィさんは両手を燭台に翳し、ぶつぶつと呪文を唱える。掛けて貰うのは、風系の結界魔法。所謂『静かなる場(サイレント)』だ。貴族、王族等には外部に漏れると不味い内容の会議や話し合いもある。それを防ぐ魔法だ。元々は戦闘時に相手の魔法を封じる為の魔法としていたが、個人に対して掛ける事が難しく、範囲としての有用性が会議の方に軍配が上がり今に至る様だ。


掛け終えて、ふうっと息を吐くリリィさん。魔法としての難易度はそこまでない筈だが、時間調整が難しいのだろう。


「終わりました」

「それじゃ、アルフちゃんゆっくり寛いでね。2ハウル程で片付けに来れば良いわよね?」

「ええ、それでお願いします」


ミランダさんは気さくに手を振り、リリィさんは丁寧にお辞儀をして出ていった。


「では、食事しながら今後を話しますか?」

「…あ、ああ、そうしようか。ではお嬢?」

「そ、そうだな」


何故、ヴァレルさんとイレースさんは固まっていたのだろう?不思議に思いながらもテーブルに着き料理を眺める。もう完全にファミレステイストだ。ご飯にスープ、メインは薄切りに切り分けられたステーキに野菜が添えられ、付け合わせに芋等を煮浸しにしたものと大根の…此処ではスズシロって名前らしい(七草かよ)…お漬物。飲み物は少しだけ柑橘系を絞った冷水と、湯気をポットの注ぎ口から発たせた紅茶。


『人になって良い?』


そうだな。ルナマリアも一緒に食事したいよな。良いよと念話で了解すると、直ぐに変現する。


「…は?」

「へ?」


ヴァレルさん、イレースさんも初見なだけに驚いた…いやヴァレルさん剣に手を掛けないで!魔物じゃ無いから!月狼な事等を説明して事なきを得た。「幻想種とは…」とのヴァレルさんの独り言は、聞き流す事にした。四人で席に着く。


「では、食べましょうか」


両手を合わせて「いただきます」と言うと、追従してきたのはルナマリアだけ。まぁ、この世界には無い習慣だからなぁ。




読んで頂いた方々に感謝を。


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