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Prologue 4th その妹の憂い

3章前の下準備、あの奴隷のお話です。




いつまで私達は、こんな所に居なければいけないのでしょう。今まで何も悪い事してないのに。


◇◇◇◇◇


私達、兄妹は一度死んじゃった。テル兄と一緒に買い物に行く途中で突然、車が突っ込んで来た。運転してる人は何故か笑ってたのだけは鮮明に憶えている。テル兄と一緒にお空を飛んでた。一面、すっごく真っ赤だったと思う。

そのあと、真っ暗になって…気が付いたら、テル兄と手を握ってた。周りを見たら、目の前にすっごく綺麗な女の人がいた。


「私は創造神グランデと申します。貴方達、ご兄妹ともお亡くなりになりました。ついては私の世界に転生する事になります」


無くなったって何がだろう。てんせーってなんのこと?テル兄が「此処は何処だ」って叫んでる。


「えっと…ですね、おふたりとも自動車に引かれて死んでしまったのです。なので、私が創った世界、ソウルグランディアで新たに産まれる事になったのです。解りますか?」

「ふざけんな!もとに戻せ!」

「ご、ごめんなさい。元に戻す事は出来ないのです」


まだテル兄が怒ってる様だったけど、この人は悪くないよね。だから握ってる手を引いて「怒っちゃダメ」ってテル兄に言ったら、なんか泣きたいのか困ったのかわからない顔してた。


「…では、おふたりとも転生します。御兄妹ですから、特別に兄妹として転生する様に致しましょう」


んー、と兄妹は兄妹だよね。意味がよくわかんないけど。テル兄も頭を捻って考えている。やっぱり何を言ってるのかわかんないよね。すると目の前が、また真っ暗になった。


◇◇◇◇◇


この記憶を思い出したのは、十歳になった時。テル兄…此処ではテオって名前だけど。聞いても知らなかった。逆にこんな所に入れられて長くなるから、おかしくなったんじゃないかって心配された。私はおかしくなんてなっていないのに。


この世界で産まれて、小さい頃は幸せだった。でも段々と、この世界でのお父さんとお母さんの仲が悪くなって、お父さんは出ていった。暫くはお母さん一人で育ててくれたけど、辛そうで。暫くして母に冒険者の人が優しく声を掛けてくれて…新しいお父さんになった。でもこの人は最悪だった。何年かすると、お母さんにお金がないのを怒って殴ってた。私達にも殴ったり蹴ったりしていた。最後には…。


◇◇◇◇◇


そして今、兄と二人で牢屋のような所にいる。もう此処には4年いる。奴隷として買われるのを待っているのだけど、兄妹ふたり一緒じゃないと駄目だとテオ兄は言い張っている。確かに一緒が良いけれど、片方だけっていうのもお呼びが掛らない。


たぶん、売れない理由。兄は右腕を、私は左腕と両眼を失っている。火傷も彼方此方(あちこち)にしている。原因は2番目の最悪なお父さん。お酒を飲んで酔った勢いで剣を振り回した。最後には火を放った。後で奴隷商人の人が言っていたけれど、そのお父さんは捕まって死刑になったそうだ。当然の報いだと思う。


腕などの欠損があると途端に売れなくなるんだ、と奴隷商人の人は言った。食べ物や着る物は最低限だけど、下手な人に売らない様にしてくれてるのも奴隷商人の人だ。もしかしたら、境遇を憐れみてくれてるのかもしれない。お陰でこんなに生き長らえている。普通は1年以内で、みんな売れるか死んでいく。

兄は「いつかどうにかしてやる。お前の眼もどうにかしてやるから」と言ってくるけど、無理じゃないかな。借金だってあるし、此処にいる是迄の生活費だってあるのだ。どうやって返すのか。もし万が一に返せたとしても、その後、どうするのか。たぶんテオ兄は何も考えていないだろう。


そういえば、私の片眼は本当は少しだけ見える様になっている。それでもほとんど開かないのだが。3年ほど前だろうか、とある母子が私達を見に来た人がいたのだ。テオ兄がその子に噛み付くかのように何やら文句を言っていた。でもその子は構わず、私に向けて手を翳したのだ。本当は翳したのか分からないけど、凄く暖かい手の感じがしたのだ。私の左眼がほんのりと暖かさに包まれ、少しだけ瞼が開いた。見えなかった筈がぼんやりと見える。それだけで凄く嬉しくなり、涙を流してしまった。

テオ兄の罵倒が酷くなり、直ぐにその母子は何処かへ行ってしまった。御礼すら言えなかったなぁ。



いつか…誰か買ってくれるのだろうか。まだ希望を持ってても良いのだろうか。




読んで頂いた方々に感謝を。


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