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第2章 その34 その闇夜に走る白銀

二週間お待たせした事をお詫びします。



手槍の刃先を破砕されて、諦めるように眼を瞑り自分のこれまでの生き様を振り返る。

大した事もしてなかったなぁ。この世界に転生し、愛情たっぷりのエミーと、寡黙で凛々しいオズの二人を両親として持てたのは良かったかな。グランデ様に良い才能や祝福を貰って、短かったが楽しい半生だった。


『ザシュッ』


刺し殺されるという終わり方なのは頂けないが、痛みすら感じないのは重じょ…顔に何か液体が掛かる。ん?何故、顔に血液が掛かる?刺されて血が噴き出し、顎とか身体中に放射状に拡がるのならば判らんでもないが。それに痛みも未だに感じていないのが不自然だ。


「アル…フ…」


エミーの声が正面から聴こえる。は?いや後ろにいた筈だよな?何故前からなんだ?疑問に思って眼を開けると、そこにはエミーが、口の端から血を垂らして微笑む顔が。胸の下、鳩尾辺りから血に塗れた刃を生やしている。



は?



ちょ



ちょっとマテ



なにゆえ、エミーが刺されている?



刺されたのは私では…ない?



母から手を伸ばされて私の頬を優しく撫でてくる。目線を自らの左腰に一度向けた後、私に語りかけてくる。


「アルフ…逃げなさい。貴方一人なら…」


もう一度、左腰に一瞬だけ目線を向けた後、顔を半分ボルゾンに向け。


「アンタにアルフは殺させない!…グフッ」


ボルゾンがつまらなさそうに、刺した剣を抜く。

眼の端に映る名が、高速で明滅を始める。それもエミーとオズの二人同時に。



前世でも私が成人するより早くに、両親を亡くした。父は癌だった。虫の知らせともいうべきか、父が体調を崩す前に高校を出て直ぐに軍隊に入った。なんとか安心させて、少しでも回復の一助になればと。だが、入隊後一年程で亡くなってしまった。そして後を追う様に、母は自殺した。それだけ父を愛していたのだろう。私はどちらの葬儀にも泣く事なく、御見送りを済ませた。両親の為にも、私は強く生きねばと決意した。それなりの年数軍隊にいたが、ふと虚しくなり除隊した。それから仕事を何年かすると転々と変える様になった。いろんな職業を経る事で、どんな職業にも必要とされる部分があり、決して偏見の目で見てはならない事を学ぶ良い機会になった。そしてこのまま埋もれて死んでいくのだろうと、半ば達観しかけていたところで事故に遭い、この世界に転生する事になった。前世の様な科学が発達した世界とは違い、中世の様に思えるこの世界グランディア。生と死が軽いが、魔法があって凄く面白い世界だとおも…。



巫山戯んな!走馬灯なんかクソ食らえだ!


この世界でも早々に、それも殺されてしまうなんて許せるものか!エミーは凄く子煩悩だが、厳しく剣術を教えてくれた。オズは寡黙ながらも、森との接し方や生きる智慧を教えてくれた。そんな良い親を簡単に…


ボルゾン、此奴だけは必ず殺す。そう心に決めて睨む。


「チッ…順番が逆になったが、どちらにしろその餓鬼も殺してやる。それがせめてもの情けって奴さ。がっはっはっはっはぁ!」


身体中の血液が沸騰しそうな位に、震える。怯えではない、怒りからくる震えだ。優しく頬を撫でていたエミーの手が弱々しくなっていく。思わずその手を両手で挟み、叫ぶ。


「母さん、死んでは駄目だ!」


私の方へ向き直り、エミーは柔らかく笑う。


「ふふっ…初めて『母さん』って…アルフは優しい子ね…」


だっ駄目だ。死なせる訳にはいかない。そうだ、ポーションがある。それを飲ませれば、と思って右手を魔法鞄へと手を伸ばそうかとしていると、まるで拒否するかの様にエミーは抱き締めてきた。


「貴方一人なら…天才だもの…ね?」


眼の端に映る点滅が止まり、赤に変わる。オズが…そして後を追う様にエミーも。



クソッタレがぁ!絶対殺す!狙うは首切りのみ。

ハッキリ言ってそれしか、彼奴を殺す方法が浮かばない。だが、正面からじゃ無理だ。一瞬でも気を逸らす必要がある。だがどうする?光針も一発が限度。それ以上は偏頭痛が…って四の五の言ってられるか!

やるぞ…ん?


眼の端に映る、今までグレーだった名前に光が灯る。魔力感知をすると、直ぐにそれが確信に変わる。


「んぁ?…なんだ?」


ボルゾンは右の方、オズが足留めされていた方へ顔を向け意識を逸らした。チャンスはこれしかない!未だ奴の右眼は回復しきっていない。だから奴の後方に回る隙を作る為に、顔を向けた方向から光針を三本を撃ち込む。頭がガンガンと痛み、目の前が暗くなるが気にしてはいられない。


「なっ!…糞がぁ〜!」


ボルゾンは左手に持った剣で、光針を薙ぎ払う。その出来た一瞬の隙で、エミーの左腰にある小剣を抜き身体をそっと地面に横たえると奴の背後から右手に持った手槍を、奴の後ろ頭目掛けて投げ付ける。ボルゾンは危機を感じて首を右に反らしながら、此方に態勢を向け始める。そこへ渾身の力を込めて飛び掛かる。左手で持っていた小剣を、左手は順手、右手は逆手で持ち直して。


ボルゾンは仰け反った態勢になりながらも左手で剣を払ってくる。だが、その左手に足を掛け奴の首を払う。狙い違わず首を捉えたが、若干浅い。完全に刎ねる事は出来なかった。


「ゲフっ…」


仕方ない、もう私には余力は微塵もない。だから叫ぶ。


「ルナマリア!」


オズの相手をしていた奴等を、一瞬で狩ったモノの名を呼ぶ。目の前に、光速の速さで突き進んで来る白銀の光。もっと早く帰って来いよ、と心の中で呟く。


「ガァウアァー!」


横薙ぎに払った勢いを使って振り返ると、ルナマリアは奴の残った首を綺麗に刎ねていた。



天からの恵みは、若干強さを増して降り注いでくる。まるでその惨劇の後を、慰めるかの如く。


【ピン…ポー…ン。ズザッ…『久遠…ザーッ…の呪魂』…が完全に解除されました。アルフのレベルが41にアップしました。ルナマリアのレベルが42にアップしました。】


久々にアナウンス聴いたたけど、なんだか途切れ途切れで雑音混じりだなぁ。てか『久遠の呪魂』?ってなんだよ。そんなのステータスに無かったよな?今度、グランデ様にでも聞いてみますかねぇ。

あ〜駄目だ。完全に動けん。頭はガンガン、クラクラするし、視界はほぼブラックアウト状態だから眼を瞑っている。動けるくらい回復したら、ボルゾン一味を片付けないと。いくら数日で死体が還るとはいえ、あんまり気持ちの良いものじゃないしなぁ。

ルナマリアは、大きくなった。へたり座った私の雨避けが出来る位に。体長4、5メルくらいはあんのかね?てか私の顔を舐めるの止めてくれんかな。そんなに濡れてないだろ?それよりもルナマリアの方が…あんまり濡れてないな?いや雨を弾いてる感じなのか。それにしてもよく帰って来てくれたよ。一年も経った頃に、もしかして死んでるんじゃないかと疑ったくらいだもの。

眼に映る表示が赤にならないと、死亡扱いにならないって気付かなければ…アレ?また濡れてきた?いや、うん、また舐めてくれるのね。


『ルナマリア、ありがとう』


あ〜酷くなってんなぁ、。困ったもんだ。



小一時間ほど休んだところで雨も止み、雲間に夕焼けを残す空模様。未だ頭痛はするが身体は動きそうなので徐ろに立つ。少し蹌踉めくが、ルナマリアが支えてくれた。傍らの…エミーの亡骸を見遣る。顔はとても死んだとは思えない程、微笑を携えていた。参ったね。親じゃなければ、惚れてしまうほどの美人さんだよったく。ゆっくりと身に付けていた装備を外していく。エミーやオズの戦いは終わったのだから。胸当てはミスリルの鋼板を貼ったもの。重いなぁ。バルドゥさんに打ち直して貰おうかな。愛用の剣。ミスリルとアダマンタイトを混ぜた、多分一級品の武器。使ってやりたいが、今の私には長過ぎるんだよなぁ。

装備品を魔法鞄に収納していると、エミーの身体から光るカードが出てきた。登録カードって、亡くなると出てくるのか。軍隊のタグみたいなモノも兼ねているのかね?徐ろに手を伸ばして取って見てみた。詳細に『息子溺愛者』って書いてある。これ、マズイんじゃないか?個人情報保護は無いのかこの世界。


エミーの登録カードと遺体を、魔法鞄に収納する。次はオズの方へ。私が赤ちゃんの頃は割と饒舌だったが

、外に出て遊ぶ頃には寡黙な人になった。元々がそうだった様で、イケメンで寡黙ならモテたのでは?と思ってエミーに聞いてみたら、本人に殆ど色恋に興味がなかったそうな。だから自分からグイグイと押して、なし崩しに…ってどうでもいいか。オズの側まで来ると、悲惨と言うよりも酷い状況だ。顔だけじゃなく、身体の隅々まで斬られている。多分、殺しただけでは飽き足らず切り刻んだのだろう。


顔の部分に右手の平を向けて『小回復ヒール』を掛ける。顔の傷が幾分、マシになりイケメン顔が伺える様になった。魔力に余裕があれば、全身の傷を直したいくらいだが今の私には余裕がない。装備品を外して、エミーと同じ様に魔法鞄に収納する。天を仰いでいると、またルナマリアが目元を舐めてくる。


『大丈夫。さっき程じゃないから』


落ち着いたところで、今度は野盗?強盗?良く分からんが此奴等の処理だ。装備品や持ち物などを回収していると、此奴等もエミー達と同じ様に登録カードが出て来る。


見ると、職業欄には探堀士だったり剣士だったり…賞罰には窃盗やら殺人が並んでいる。こんな糞どもにエミーとオズは…怒りがまた沸々と沸き上がってくる。

最後に…ボルゾンだったか?の死体を見遣る。鎧の能力によって流石に生き返っては来なかった様だ。此奴もカードが出ている。思わず叩き割ってやりたいと思うが、不壊品な為にそれが出来ない。それが更に内に怒りを齎す。こんな、こんなに良い才能持っているのに、こんな最低な事をする。なんと勿体ないことか。どうせなら私が欲しいくらい…。


【ピンポーン、悠々自適の効果が発動します。既存しないギフトの申請を受諾。得られるのは『簒奪報酬』です。10年後に悠々自適がまた発動します】


そういえば、今日はあれから十年経ったんだっけ。すっかり忘れてた。





この話で2章終わる予定が…次で終わると思います。

読んで頂いた方々に感謝を。

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