第2章 その30 その祝うべき日の災厄
いきなりですが、三年後になります。
今日で十三歳になる。私だけ歳を取る訳でもないので、お祝い自体はしなくても良いと思うのだが、こういうのはキッチリしたがるのがエミーの良いところというか、子煩悩というか。いくら子供だからといって私が何もしないのも、気が引ける&自己鍛錬&小遣い稼ぎを兼ねようと思い、オズと一緒に夕飯用の獲物を狩りに行く事にした。
「アルフ、準備はいいか?」
「はい!父様。準備万端です」
「エミー、行ってくる。夕方前には戻る」
「いってらっしゃい。アルフ、気を付けてね」
「はい母様、行ってきます」
エミーはお弁当を二つ渡してくる。今日のお昼はグラパンだ。昨日食べたグラタンの残りをタネにして、コロッケを作りパンに挟んだもの。冷めても美味しい様に作っているが、暖かい方が良いので私の鞄に入れる。
眼で『行くか』と告げてくるオズ。ホントにこの父様は、歳を重ねてもイケメンすぐる。産まれて眼が見える様になった頃からみてるが、姿や立ち振る舞いなど全く変わらない。まぁエルフだけに十年やそこらで変化はないのかな(笑)。
因みに私は背が伸びた。だが十三歳で身長が百二十七セメル…前世ではもっと高かった気がするのだが、ハーフエルフって特性でもあるのだろうか?出来れば成人である十六歳迄には百七十セメル以上にはなりたいものだが。
家を出ると、ロドルが『クワァ〜』と挨拶してくる。
「おはよう、ロドル。狩りに行ってくるね」
「クーワワァ〜」
『気を付けていけ』と言っている様に聴こえる。この三年で、私も多少だがレベルも二十九となっているし、オズもいるからトナンの森にいる魔物の殆どは問題無いだろう。ロドルに手を振り、森に入る。
フォレストウルフやゴブリンなどは、もう私一人でも問題無くなってしまった。元より生物を記してくれる地図や魔力感知があるので、殆ど無理なく過ごせる様になってしまった。
トナンの森では、もうレベルアップは厳しいかもしれない。山脈を行けば、偶に逸れのドラゴン系がいたり、蟻や蜘蛛系がいるらしいから其方で稼ぐのも…あ〜でも山脈の方には行くなって、エミーに口を酸っぱくして言われてるんだよなぁ。昔、大怪我したとか言っててエミーと二人でシャワーを浴びていた際に、傷痕を見せて貰った(他にも見せられたが想像すらしたくない)が、余りにリアルに語るので幻痛の様な錯覚すら覚えたものだ。
◇◇◇◇◇
今日はフォレストウルフが四頭に、クレセントベアが一頭。肉としてはクレセントベア一択だけど、革は良い防具になるから重宝するんだよね。それにギルドに卸すにも、ブーツや革鎧などに仕立ててからの方がお金になる。勿論、商品にしてしまった物は商人ギルドに、魔石は冒険者ギルドにそれぞれ買取りをして貰う。私としては、一石二鳥ならぬ一石三鳥だ。
ホクホクな感じで帰路に向かうのだが、我が家の近辺で動いている光点を眼に映る地図にいくつか見付ける。最初は魔物かとも思ったが、動きが妙に細かく結界内にも入ったり出たりしている。オズも気付いた様で、凄く険しい表情になる。
「アルフ、引き付けておくから、真っ直ぐに家にいるエミーを呼べ。三人で対応すれば、対処出来る」
オズの言葉を聞いて、確信に変わる。アレは人だ。それも悪意ある人。何しろ、結界を張っている周りから家を窺う様な光点の動きだ。家の周りにある結界は、魔物に対してのみしか働かない。カモフラージュとして、獣道っぽいものを家には辿り着かない様に工作し、ロドル達の引く車の轍は極力消しているのだ。それでも…いや、今は悔やんでいる時ではないか。急いで戻ってエミーに知らせ、合流して事に当たるのが最善だ。
オズとは別行動で、急いで戻る。家の周りの拓けた場所に、到着する寸前に違和感を感じて止まる。なんだ?何がおかしいんだ?家も見える範囲では、今のところ問題無さそうだ。ロドル達の小屋も…そうだ!鳴き声がしないじゃないか!
地図を見るが、小屋の中には小さい光点が一つしかない。表示では『ドゥバードの卵』だけ。ロドル達も、そこそこ強い。ゴブリン程度なら蹴散らすくらいだ。単純に考えてレベル二十位じゃないと…それも鳴き声も出さずに、となるとそれ以上の存在の可能性もある。コレはオズと別れたのは不味かったかもしれない。
相手の光点は七つ。その内の一人は家にゆっくりと向かっている。残りの六つはオズに気付いたのか、オズの方向に待ち構えるように展開している。急いで、エミーと合流して、オズの支援に向かわなきゃいけない。
ロドル達が既に事切れていると判断してしまった事で、私は冷静ではなかった。
ロドル達の小屋の前に来た。くっ…ロドルもペルニーも共に…憤りを感じながらも、エミーを呼ばなければ、と振り向き様に左肩に衝撃が走る。そして小屋の中に吹っ飛ばされてしまった。
「ガキが今頃、お帰りかぁ?おっ死んじまったかぁ?」
なんか男の声がするが、吹っ飛ばされてよく聴こえない。ぐがっ!ひ、左腕が上がらないばかりか、肩が潰れてる!意識を失わずにいられたのは、ロドル達の亡骸がクッションになってくれたお陰か。すまん、後で埋葬してやるから勘弁してくれ。
なんとか無事だった右手で左肩に触れ…声にならない叫び声をあげる。左眼だけ開けて詳細解析をすると、複雑骨折してるのが解った。中回復を掛ける。癒しの光が収まると、ようやく左手が動かせた。まだ痛みはあるが、動く事は出来る。いくつか壊れた小屋の中から出て、男を確認する。
マテ。レベルが尋常じゃないぞ!人は鍛えたら、そこ迄いけるのか?半ば絶望しながらも男の能力を見て愕然としていた。
名前 ボルゾン
年齢 45歳
種族 人間(男)
職業 忍者
副業 探堀士
レベル 82
誤字脱字等ありましたら、ご報告頂けると幸いです。読んで頂いた方々に感謝を。
次週も予定通り18時更新です。
どうか読んで頂いている皆様へ。是非ともブックマークや評価を下からお願いします。




