第2章 その27 その光魔法の効果の違い
ケリーさん…こんな所で出てくる筈では無かったのですが。まぁ、好きなタイプなんで良しとしよう(おい
金貨四十枚の治療費は、一介の冒険者が右から左に出せる金額じゃないよなぁ。
前世で考えると、金貨四十枚は四千万程になる。物価は其々違いはあるが、概ねそんな感じだ。閑話休題。
「もしも私が治したら、いくら支払ってくれますか?」
ブーツを検品している手を止めて、私を見つめてくるケリーさん。眼はブロンズなんだねぇ、まるで前世での同郷に見えるよ。
「あっははは。い、いや失礼。アルフ君はそんなに才能豊かなのかい?羨ましいね」
どうやら冗談だと思っている様だ。その様子を見て、エミーから暗黒オーラが立ち昇っている。これはマズイ。
「母様でも治せると思うけど、私が試してみたいんだ。駄目かなぁ?」
直ぐに暗黒オーラが立ち消えたが、逆に焦るかの様に私の耳元で「私でも中回復しか使えないわよ」と言ってきた。え?ハイヒール使えないの?てかミドルヒールでも治りそうな気がするんですが。
「そんな高名な冒険者様なのか?お名前を伺っても宜しいか?」
「私はエミーレシア。一応、Aランク冒険者よ。こっちは旦那のオズィール」
名前を聴いて、ケリーさんは眼を見張って固まって…あ、震え出した。知ってるのかな?
「け、けけ、剣姫、エミー様ですか!?ま、まま、まさかお会い出来るなんて…」
なんか感動してらっしゃる。てか、そんなに有名人なの母様?視詰めると、気恥ずかしいのか顔を赤く染めているエミー。でも胸は張るのね。余計に滑稽に見えるから、止めて。取り敢えず話を戻そう。
「ケリーさん、私が治療の魔法を試しに使っても宜しいですか?」
「え?あぁ、構わないが…君では無理だと思うぞ」
「効果が無い様なら、お金は貰いませんよ。効果があったら、幾ら払ってくれますか?」
「んーそうだな。余り余裕がないので、金貨十二枚って処が限界だ」
ふむ。まぁ、予想の範囲だな。がめついのも嫌われるし。
「なら、上手くいけば、金貨十枚を報酬として貰えますか?ではいきますよ?」
決めるが早いか、直ぐに取り掛かる。先ずは、光の魔力を両手に溜めてケリーさんの右脚を触診と内部の状態を測る様に確かめる。言っていた通り、外傷は綺麗に治っているのが解る。内部は…筋肉?いや、筋…ん?これは魔力の通り道が断裂している様に感じた。魔経絡とでも言ったものが、この世界での全ての人にはある。大きく傷付いたりすると、魔法が使えなくなったり不随になったりするのだ。ケリーさんは太腿の大腿骨辺りに傷が残って…成る程、ウルフの牙の欠片が大腿骨に残っているのか。これだと、摘出してからでないと治しようがない。うーん、この世界じゃ外科手術なんてない。代用出来るもの…異物を排除…高位の魔法『高回復』では確実に治せるんだろうけど、今の私では魔力が心許ない。
魔法の性質を考える。回復の呪文は高位に成る程、怪我だけでなく欠損や状態異常、汚染されたものの浄化…そうか、浄化だ。異物自体も浄化すれば不思議と消え去る。
左手の魔力を清浄に。右手の魔力を中回復に。そして混ぜ合わさる様に魔法を行使する。うが、魔力半分以上持ってかれた。フラフラする。高回復だと、今のレベルじゃ一発昏倒間違いなしだから、上手くいって良かったよ。
「ア、アルフ?今の、何したの?」
「え?えっと…複合魔法?」
「「「は?」」」
ケリーさん、エミー、オズの三人共に唖然として冷汗を掻いている。え?そんなに驚く事なのかな。
「ケリーさんが歩くのにも不都合だったのは、ウルフの牙の欠片が太腿の中に残ってたからなんだ。それを取り除く為に、左手に浄化の魔法を、右手に中回復の魔法を発現させて混ぜ合わさる様に行使したんだ。上手くいって良かったぁ」
子供に戻った某探偵の様に、そう伝えても三人は固まったまま冷汗を掻いている。私も魔力が少なくなったので、冷汗を拭ってソファーに沈む。もうちょっと鍛えて身体レベルか、スキルレベルを上げないと辛いなぁ。でもSPを使い過ぎるのも、後々困る場合がありそうで、余裕がないと…。
まだ鳩が豆鉄砲を食らった様な顔をしていたケリーさんだが、徐ろに脚を動かして確かめ始めた。座った状態から一通り自由に動く事を確かめ終えると、素早く立ってその場で足踏み。そしてアスリートヨロシクとばかりに、手を開き五指を揃えてその場で限界まで腿を上げて高速足踏みに移行。いや、目の前で其れは危ない人ですよ?いい加減、治ったのも解るでしょ?
「おおををっ!マジで治った!動ける!脚が軽い!走れるぞ!」
叫んだかと思えば、今度は不随だった右脚を殴っている。あ、あの、また怪我するよ?今度は治さないよ?
「アルフ君!治った!治ったよ!君凄いね!将来は治癒の魔導士かな?ウチのパーティーに入らないか?歓迎するよ!」
捲し立てる様に勧誘してくるケリーさん。嬉しいのは分かるけど、ちょっと落ち着いて欲しい。オズとエミーが私の肩を、ちょいちょいと突ついて内輪話をしてくる。
「アルフ、状況が落ち着いたら先程のやり方を教えろ」
「アルフはやっぱり天才ね」
え?普通に考え着きそうな事なんだけど…魔法や才能使うのは単発なのかな?効率的に考えたら出来そうなものだけども。それとも『並列思考』が関係しているのかなぁ。
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