第2章 その16 その世界での初入浴と貫禄
ヴァルドゥさんの店での買い物も終わり、夕刻。更に街には人でごった返していた。エミーはしっかりと私を抱き抱えて、ヴォレシズ家別邸へと向かう。朝早くから起きていたせいか、道中は寝てしまっていた。
「アルフもやっぱり冒険者になるのよね。本当なら危険な事はさせずに学校とか通わせたいのだけど」
別意識でエミーの独り言を聞く。ん〜学校か。そういうのも悪くないとは思うけれど、早く自活して不便なくいられたらそれで良いと思う。学校生活って基本的に縛られるって事になるのが嫌なんだよね。前世での学校生活は、それなりに楽しかった気もするがあんまり友達とか一緒に行動するなんて事が面倒で、大抵は一人行動が多かった。この世界では魔法とか錬成などあるし、学校も楽しいかもしれない。
まぁ、独り身での気楽さを味わってしまった独身貴族だった私としては、冒険者ってのが一番向いている様に思うんだ。
門に辿り着くと、門兵さんと使用人さんが揃って「お帰りなさいませ」と挨拶してきたので、眼を覚ます。
「只今戻りました〜」
眼を擦りながら返事をしたら、使用人さんが寄って来て頭を撫でてくる。この人は…確かリュネさんだったかな?応接室で一目散に頭を撫でてきた人だ。年齢は26歳か。子供の欲しいお年頃なのかもしれない。良い人いないのかな?
屋敷に入ると、セレナ様が「アルフ様〜おかえりなさ〜い」と駆けてきたので、エミーに促して降ろして貰ってセレナ様を抱き止める。いや傍目から見たら姉が弟を抱き締める絵だよな。ゼパルジャンさんがニコニコと笑顔だった。はぁ。
その後、一緒に食事をして客間にてまったりとしていると、使用人のリュネさんが「お風呂の用意が出来ておりますのでどうぞお入り下さい」って。マジで?お風呂あるんだ。
いつも通りエミーと一緒に入る事に。オズは男性用のお風呂があるとか。やっぱり貴族様って金持ちなんだなぁと思いつつも、久々のお風呂だ。家では簡易シャワーしかなかったから、ウキウキしてしまう。
で、お風呂なのだが…ローマなどの公衆浴場みたいなものを想像していたのだが。此処は銭湯ですか?下地は大理石の様になっていて、浴槽は1つだが、大人が数人入っても余裕の大きさ。身体を洗う場所も三ヶ所もある。竜の頭を模した蛇口からお湯が出てくる様になっている。これ魔石を使ってお湯が出るんだ。温水とかの術式を組んでるのかな?
「ほら、アルフ?身体洗うわよ?」
テンション上がって子供みたいに…あ、子供だった。冷静になってお風呂用の椅子に座る。このお風呂って転移者とか記憶持ちとかが、設計したのじゃなかろうか。それも同郷だと思う。後でそれとなく聞いてみよう。
考えているのが長過ぎたのだろうか、何時の間にか私の身体だけでなくエミー自身の身体も洗い終えた様で頭からお湯を掛けられた後、一緒に入浴する。思わず「ふぅ〜」と声が出てしまって、エミーが苦笑する。仕方ないのだよ。私には少し熱い温度なんだから。
それでも、風呂は良い。実に癒される。世の中の様々な嫌な事や悩みなどが、お湯に溶けて薄らぐ気がする。前世じゃ不運な事ばかりで…なんか脱衣所がやけに煩いなと思ったら、浴室の扉が勢い良く開かれる。
「アルフ様〜、一緒に入りましょう〜」
と、セレナ様が小走りに入って来た。使用人のリュネさんも後から静々と入って来る。ちょっと驚いたが、考えたら此処は女湯だ。まぁ、一緒に入る事もあるか。この程度で動じる程、私は精神的に若くない。大体、裸を見たからどうなるとか思ってもいない。魅力的な肢体など、エミーで見飽きているのだ。
洗い流したのか、セレナ様とリュネさんは浴槽に入ってくる。それでも余裕のある浴槽だ。脚を前に投げ出してエミーの胸を背にして寛ぐ。
「お友達と一緒にお風呂に入るの、初めてなんです」
そう言ってくるセレナ様。初めてだから興奮覚めやらぬのか知らないが、一応、私は男なのだがその辺は気に留めないのだろうか?目線を追うと…あ〜意識はしてらっしゃる様だ。未だ子供の身体だし、此方が騒がなければ大丈夫だろう。それよりもリュネさんの方が怖い。フンスーフンスー鼻息荒いんだけど。全身隈無く見られている。眼が合うと、笑顔になるが…キモ怖いのだが。
私としては湯に浸かって、心身共にリラックス出来れば良いので無視を決め込もう。
会話もなく、暫くして逆上せそうになったので、エミーと二人でお風呂を出る。直ぐに追い掛けるかの様にセレナ様とリュネさんが出てきた。私はエミーに、セレナ様はリュネさんに全身を拭いて貰う。うん、サッパリした。ほへーっと呆けていると、セレナ様がクスクス笑っている。
「アルフ様、なんかお父様みたいな雰囲気ですよ」
前世からの精神年齢がそうさせるのか、親父っぽくなっていたか。気をつけねば。
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