第2章 その9 その羨望の眼差し
グラスウルフ17匹が馬車を取り囲む様に、迫って来ている。距離は260メル程。
「皆様、グラスウルフが迫っております。警戒を」
ゼパルジャンさんが声掛けしてくれた。私も付け加えるか。扉を開けて告げる。
「数は17匹。周囲を満遍なく取り囲んでるよ」
馬車から降りようとすると、ゼパルジャンさんに止められた。
「アルフ様は、中でお待ち下さい」
「え?私も戦えるよ」
「それは重畳。是非ともセレナ様を御守り下さいませ」
信用してい…いや私のステータスは見てるから、戦えるのは理解しているのだろう。だからこそセレナ様のナイト役をって事か。離れたエミーやオズも、此方を見て首肯いている。任せようか。扉を閉めてセレナ様を見るが、未だに夢の中の様だ。毛布を掛け直して上げてから、座る。
眼に映るマップを見ていると、1匹を除き一斉に急接近して来るグラスウルフ。接近戦になるまでに、オズがボウガンで2匹仕留めた様だ。エミーやゼパルジャンさんも問題なく斬り捨てていく。やっぱり強いな。レヴィは苦労しながらも、斬り付けているが、戦えている様なので大丈夫だろう。それよりも控えている1匹に注意する。ゆっくりと伺う様に周っている。残り距離100メル程で個体名判明、グラスウルフ・シュタルクと出た。
判明した途端に、この馬車を狙ってるのか猛スピードで迫って来る。エミーもオズもゼパルジャンさんも、ちょっと間に合わない様子だ。
仕方ない、やるか。向かって来る方の扉を開け、バゼラードを抜き放つ。
襲って来たグラスウルフ・シュタルクの、左前足の爪を防ぐ様に剣の刃を立てる。
ガキィンと甲高い音が響く。だが動きが止まった一瞬がグラスウルフ・シュタルクを倒す絶好の瞬間。
『光の針』を遥か上空から撃ち下ろす。4本の光の針が刺さり、グラスウルフ・シュタルクは絶命した。
その後、生き残ってた3匹のグラスウルフはリーダーだったのだろうシュタルクが死んだ事で逃走していった。取り敢えず、馬車にも傷が付かずになんとかなったな…ん?なんか服引っ張られてる?後ろを振り返るとセレナ様が起きていて、此方をジッと見ている。眼も潤んでいるから、もしかして怖かったかな。
「す、すす、凄いですわ!あんな大きなウルフを一人で受け止めるなんて。それに今の魔法はなんですの?上空から光が、ぱぱぱっと降ってきて…まるで流れ星みたいに綺麗でしたわ」
眼をキラキラとさせながら、食い気味に聞いてくるセレナ様。あ〜不味いかなぁ。周りを見ると、エミーは頭を抱えながら溜め息を吐いた。オズも仕方ないといった風情。レヴィさんは…口をあんぐりと開けて呆然と此方を見ている。顎外れてないよね?。ゼパルジャンさんは糸目でニコニコと笑顔になっている。この人だけは読めん。
「セレナお嬢様、アルフ様の御事情も御座います。追求よりも、先ずは感謝を述べる時かと」
「…あ、ああ、そ、そそ、そうね、コホン。アルフ様、ありがとう御座います」
「…いえ、セレナ様にお怪我が無く、無事に済んで良かったです」
ゼパルジャンさんの配慮で、一応は事無きを得たが…それからセレナ様は私に『様』を付ける様になってしまった。様付けなんて、前世でも無いから気恥ずかしい。
夜が明けて、朝日が昇り始める。取り敢えず、グラスウルフ達の処理をして毛皮など、半々に分けた。グラスウルフシュタルクの毛皮は、眉間と胴体に穴が出来ているが自分で使う分には問題ないだろう。片付けも終わり、セレナ様達と共にべナールの街へ出発する。セレナ様が一緒に同じ馬車で話したそうにしていたが、ゼパルジャンさんの一言で渋々と別々に乗り、街へ向かう事になった。
小高い丘から、徐々に下る様に走る。そして遠くにべナールの街が見えてくる。街を囲む白い城壁が、陽の光を浴びて輝いている様だ。
「あれがべナールの街よ。この国の副都になるかしら」
副都。だから立派な城壁があるのか。街並みも遠目で見る限り、前世の政令都市並みに大きい気がする。赤や白、茶色の屋根が1つの風景画を思わせるかの様だ。そして真ん中程に砦の様な、お城の様なものも見える。これがべナールの街か。
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明日も18時更新予定です。




