第2章 その6 その野営場所での遭遇
他の先生作品を読んで…◯の勇者は面白いですね。アルフ君は針の勇者に…いや、なりませんからね絶対(笑)
「胡椒が効いて美味いな」
父親であるオズに、言葉少なに褒められる。その笑顔は仄かなのだが、元の顔がイケメンだけにグッと心に響く。天然のジゴロだろうか。男の子な私でも惚れそうになってしまう。
「どんどん、親離れしちゃうのね…母さん悲しいわ」
エミーには子離れしてくれと、心から思う。なにしろ食べ終わった後は、私を後ろから抱き締めて離さないのだ。こめかみや耳は、メロンに挟まれて気持ち良いが、長く抱き締められると過剰に疲れるので程々にして欲しい。オズは一人、無言で片付けをしてくれている。少しは我が子に嫉妬して、エミーとイチャイチャしても良いんだよ父様。
1時間程の食事休憩を終えて、出発する。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
陽が傾き始めた頃、森を抜けた。正確にはトナンの森は山々に囲まれていて、普段は人が入らない様な森なのだ。私達が通り抜けたのは樹々が小道を隠す様にある山と山の間の小道。街はどちらの方に見えるのかとキョロキョロしてると、東側の方に曲がる様だ。
「もう少し行くと、街道に出る」
これまで南に下る様な道程だった。それも殆ど道とは言えない獣道に近い。だが、ここはなだらかな下りの平原が広がっていて、その先に街道がある様だ。地図作成にも、初めて道らしき線が入り始めた。
「街道に入って1キメルも進めば、休憩出来る場所がある。そこで今夜は野営だ」
「今夜は一緒に寝ましょうね」
あ、ああ。またあの寝苦しい夜が来るのか。エミーと一緒に寝ると、必ずと言っていいほど抱き締めてくる。私は抱き枕か、抱き人形かと錯覚するほどだ。これまでに何度、窒息死しそうになったか分からない。ルナマリアが家族の一員になってからは、半数の夜をルナマリアと一緒に寝る様にして安眠を得たくらいだ。当然、ルナマリアと寝た次の日の朝はエミーの機嫌が若干悪い状態で起きてくる。我が子だけに可愛い、と思うのも理解出来なくないがそろそろ子離れを切にお願いしたい。今現在も、私は後ろから抱き締められたままなのだ。そう、昼御飯を食べてからずっとだ。
仕方なく魔法鞄から魔法関連の本を読み、別の思考でイメージ力を向上させる。
「アルフはお勉強好きよねぇ。そんなところはオズに似たのかしら?」
と言ってくる。動けないから、やれる事を考えた結果なのだが。元から本を読む事は好きだったし。
そうこうしていると、目的の野営場所に到着した。其処には別の…こちらは本当の馬車だな。派手ではないが流線を多用した装飾が綺麗な赤い馬車だ。サイズも二頭立てで大きい。馬車の前には、ハーフプレートアーマーみたいな鎧を身に付けた女性が立っている。テンプレじゃない事を別の思考で祈りつつ…。
「貴様達は、何者だ!此処は我々が使用している。別の場所へ行け!」
オズとエミーは二人、眼でアイコンタクトを取って…エミーは徐に馬車を降りる。あの、母様、頼むから離して欲しいのだけど。
「私の名はエミーレシア。御者をしてるのはオズィール。共にA級冒険者だ。べナールの街へ行く途中、此処で野営をしたい。何なら、身分確認して貰っても構わない。この辺りはグラスウルフや野盗も偶に出る。良ければ共に野営をさせて頂きたい」
上目でエミーを見る。口上は凄く格好良いのだが…私を人形の様に抱き締めたままだからね、ある意味台無しだからと意味を込めた眼で見てみたが、エミーは『格好良いでしょ』って感じでウインクしてくる。どうして…ちょっと残念な母なのだろう。
此方の口上を聴いていたのだろう、馬車の中の人と何かしら相談している女戦士。御者をしてる人は、警戒して周りを伺っている。姿を見るに前世で見た執事服を着ている50代の男性だ。ふと眼が合ったので、軽く会釈をするとやんわりとした笑顔を返してきた。その後、御者窓から執事や女戦士へ何やら語った様子なのだが、女戦士の憤慨した顔に隣りの執事が窘めていたり。溜息を大きくついて諦めた様に項垂れる女戦士の姿を見るに…。
「わかった。先ずは身分確認させて貰おう」
と女戦士は近付いて来る。髪は金髪でセミロング。鎧は鋼鉄製のハーフプレートアーマー。剣は束や持ち手の装飾が豪華だな。オズがゆっくりと武装解除して御者席から降り、女戦士に左の手を開いて差し出す。すると手の平から光るカードの様なものが。遠目で文字は読めないが、詳細解析で見ると…ステータスカードと出た。思わず、エミーを見上げる。
「アレは『登録カード』なの。街の出入りとか身分を証明する時に出すのよ」
ふむ、まぁ身分証明書か。自らの手の平を出してみるが、当然ながら出ない。ただ、『仲間管理』が発動しあのカードの様な画面が眼に映る。成る程、コレでどう他人に見えるのか分かる訳だ。どうやら修正も出来そうだから、後で色々と試してみよう。
女戦士が今度は此方に来る。エミーも流石に私を下ろして、左手の平から登録カードを出し確認させる。ようやく解放されたよ。凝りを解そうと首を捻ったら、ポキポキと鳴っちゃったよ。それを見て女戦士も、ぷっと噴き出しやがった。え?何か面白かったの?
誤字脱字等ありましたら、ご報告頂けると幸いです。読んで頂いた方々に感謝を。
3月は特別な為(単に拙筆な私にとってというだけ笑)連投の企画を考えてます。




