第2章 その5 その母の懸念とお昼ご飯
休憩が終わって、準備が整ったので出発だ。街に着くのは明日の午後予定。つまり、今夜は野営するのが決定になっている。そういやこの馬車って、川の字に寝たら丁度3人分なんだなぁと意味もなく考える。
カタカタ、ゴトゴト。森の小道を走るドゥバード車。揺れが心地良くて、つい居眠りしてしまう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ねぇ、オズ。アルフの事、どう思う?」
「…どう思うとは?」
「アルフの光魔法と、鑑定の事よ」
「…あの…『光の針』は、アルフのオリジナルだろう。数は異常だったが」
「そう!魔法のレベル的には、弱い筈なのにあの魔力効率の良さが攻撃力を高めてる。一本でもアルフの年齢的に難しいはずなのに…そしてあの本数。30個も形体維持なんて…」
「32だな。想像だが、あれは意識を分割して魔法を発動させてるんだろう」
「意識を分割?」
「高位のエルフが、確か出来る芸当だ。それでもあの数の形体維持は無理かもしれん」
「…そう…可能性はある訳ね」
「ああ。鑑定も有り得る話だ」
「……………」
「エミー、懸念は理解する。だが、正しく導いてやれば良い」
「…そう、よね…私達が導けば良いのよね」
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ん〜困った…というか本気で自重しないと、いけないって事だよなぁ。え?なんでお前エミーとオズの会話聴いてんのって誰かに突っ込まれそうだが、寝てるのは身体と思考の1つだけ。並列思考を幼い頃から多様してたせいで、今では8つまで思考を別ける事が出来る様になっているのだ。だが、これ以上は精神崩壊しかねない(実際に頭痛が痛い状態だった)ので、もう増やす事は止めている。そして1つの思考で、魔法の制御をたくさん出来ないかと考えてやった結果、4つが限界だった。そして他の魔法ではあまり上手くいかないのだ。せいぜい2つが限界。考察するに、『針』が私にとって一番親しみある想像し易いものだからと帰結した。
前世では、休みの日の度に裁縫をしていた。パッチワークなど、テレビを観ながらでも手が勝手にやっていたくらいだ。
まぁ、現状の魔力量にも寄るので『光の針』が一番、多数の敵に攻撃出来る効率の良い魔法になるのだ。広範囲を攻撃出来る風魔法スキルも持っているが、制御が難しくスキルレベルを上げてない為、魔力消費も激しいので今のところ使用は控えている。閑話休題。
ふむ、そろそろ使用した魔力の半分くらい回復したかな。
起きてみると、太陽が丁度、頂点に差し掛かる頃か。お腹も、ぐー、と鳴ってしまった。
「あらあら、起きて早々…お腹が空いたから起きちゃったのね」
オズと話しながら、私のことを気に掛けていたのは気付いていたけど…
「母様、お腹が空きました」
「もうちょっと走った先に、休憩場所があるからそれまで我慢ね」
まるでハートでも出そうなウインクだな…まぁいいや。別の思考でこれからの行動指針を考えながら、周りの風景を楽しむ。家の周りに比べたら、随分と空が抜ける様になってきた。雲も疎らで、如何にも晴天だ。まぁ今いる大陸は春の大陸だ。雨が降る事はあるけど、シトシトとしか降らず気温も20度位で非常に過ごし易い。樹々も青々と繁っており、実に恵まれた大陸だ。
お?少し開けた場所、小川が近いところに出たな。多分、周りからは判り辛いだろうがいい感じに休憩出来そうな広さに一本の木があり、その根元には簡易のベンチの様に丸太が横たわっている。
「此処で昼休憩にするぞ」
オズが宣言するや、ロドルも「クワァ〜」と鳴く。ふむ、普段から此処が休憩場所なんだろうな。んじゃ、昼御飯を作りますか。馬車から飛び降り、小川の方へ進む。そして魔力感知と地図作成のスキルを合わせて使う。この世界の魚も微量ながら、魔力を持っている。川面を見ながら、魚を認識してマークする。すると『地図作成』が後は勝手に光点を多数付けてくれる。認識を2〜30セメル程度の魚だけに変更。これで狙いの魚に、光の針を飛ばして仕留める。勿論、威力は最低限にして。刺さって浮かんでくる魚を捕る。これを繰り返し、ロドル、ペルニーには5匹づつ、エミーやオズには3匹、私には2匹分を確保すれば終了だ。
俎板と小型のナイフを魔法鞄から取り出し、魚のお腹に切れ目を入れ内臓を取り出す。小川の滸で内臓を捨てて身側を洗う。内臓は流れていきながら、川の中にいる他の魚や沢蟹っぽい奴らが啄んでいる様だ。
身を綺麗に洗ったところで、塩…多分、藻塩じゃないかと思うのだがエミーに手渡された調味料の1つだ。量が少ないから節約しながらも塗す。魔法鞄から串を何本か取り出し、口から刺していく。ロドルとペルニーには刺さずに、そのまま投げて寄こすと上手い具合にキャッチする。うん、美味しそうに食べてるね。
オズが焚き火を用意してくれたので、周りに小石で串を立たせる様にする。焼けるまで待てば完成だ。出来たら、塩が足りないかもしれないので、黒胡椒を掛ける。
黒胡椒は、偶に森で見掛けるのだが、胡椒の実というのが成っている事がある。一見すると、ただの黒い石にしか見えないのだが詳細解析で発見した。その胡椒の実を細かく擂る。すると黒胡椒になるという訳だ。閑話休題。
これで焼き上がりを待つだけだ。
「ねぇ、アルフ。何処でそれ覚えたの?」
「ん?偶に父様が捌いてたよね?それ見て覚えたよ」
「そっか。アルフは凄いね〜」
頭を撫でてくるエミー。実際は前世でもやっていたが、こっちの世界の方が簡単な事が多い。オズは本格的に作ってくれるので、美味しい。料理レベルもⅣと高いし。だが私は料理レベルⅡしかない。上げても良いが、SP値が勿体無い気がして上げていない。因みにエミーは料理レベルⅠ…うん、それなりに美味しいからね。
そうこうしてる内に、焼けた様だ。香ばしい香りが食欲を唆る。
「焼けた様だな。食べようか」
「じゃ、ご一緒に…」
「「「いただきます」」」
誤字脱字等ありましたら、ご報告頂けると幸いです。読んで頂いた方々に感謝を。
次回も来週土曜日の18時更新予定です。




