第1章 その29 その怯えと怒りと戸惑い
クレセントベアの事を、誤ってクレセトベアと記載してた部分を改稿しております。
神々とのやりとりを終えて戻って来た。まるで寝て、夢でも見ていたかの様な感覚だったが意識がハッキリしてきた。ゆっくりと眼を開ける。此処は転生してきた新たな家だ。顔を上げ、現在の状況を確認する。
外はもう夕暮れに差し掛かっている様で、随分と時間が経っている。神々と話していたのは30ミネル(分)にも満たなかった筈だ。やはり時間の流れが違うのだろう。
母であるエミーや父のオズは、キッチンでカタコトタンタン、ジャーと食事…夕飯の仕度でもしているのだろう。ちょっと獣臭がする事から、倒したクレセントベアの肉料理になるのだろう。
臭みがある食べ物は個人的に食べたく無いなぁ。前世でも口にしただけで、食欲減退や吐気したりしてマトモに食べれなかった。特に潮の香りがする海産物とか少しでも時間が経ったものは無理だった。
まぁ、料理上手なオズが一緒に調理しているなら、大丈夫だろう。
手元を見ると、ムーンウルフの子『ルナマリア』が安らかな寝息を立てている。未だ眼が覚めていない様子。しかしこの毛並みは気持ち良過ぎる。いつまでも触っていられるんだが。
ん?鼻がヒクヒクしている…匂いに釣られて起きるかな?
お腹部分を優しく撫でながら、見ていると鼻の動きが益々大きくなって…ニヘラっと笑う様な表情が。前世でも、犬が貰える餌を待ち切れないよって顔で主人を見るのによく似ている。口角が広がり涎がテラテラ…
微笑ましく見ていると、ゆっくりと瞼が開く。うん、綺麗な銀の眼だ。突然、起き上がり周囲を警戒する『ルナマリア』。そして…
私の右腕に噛み付いた。痛いけど、コレは予見していた事。動かず怯まずに、ジッと『ルナマリア』の眼を真っ直ぐに見る。10セクル(秒)程経ってから、ゆっくりと…通じるか判らないが…
「だいじょうぶ。こあくぅないよぉ?」
と笑顔で声に出した。威嚇してる表情が次第に険が取れて、戸惑いと怯えの表情に変わっていく。そしてゆっくりと噛み付いた右腕を放してくれ、ペロペロと疵を舐めてくれる。うん、もう大丈夫だな。
奥でオズに羽交い締めにされている、エミー。噛まれた途端に此方に飛び込んで来ようとしていたのだ。笑って左手でグッジョブを示してあげる。オズは「ほら、大丈夫だっただろ?」ってエミーに言って羽交い締めを解いて肩を叩く。エミーが赤ら顔で涙目だ。
「かーさま、だいじょうぶだよ〜」
笑顔で左手を軽く振って改めて応える。何かを言いたげに口を金魚の様にパクパクさせながらも、オズに促されて調理に戻っていった。後で甘えてあげなきゃね。
視線を戻すと、凄く済まなそうな表情を浮かべながら疵を舐めている。親ムーンウルフの時みたいに意思伝達出来れば良いのだが。
【ブブー。既に存在している才能です】
うん、だろうと思ってた。だから、もうひとつ試したい事の方が本命だ。
誤字脱字等ありましたら、ご報告頂けると幸いです。読んで頂いた方々に感謝を。




