第三章. その24 その陽も昇らぬ間に作る物
世間の騒ぎに巻き込まれてませんか?冷静に対処していきましょう。
てかトイレットペーパーもうそろそろ無いんだけど?
寝入ってから小一時間ほど経っただろうか、ベッドに潜り込む者がいた。
この手触りの気持ち良さは、ルナマリアだな。朝起きたらブラッシングしてやらねばと思う。月狼の姿で潜り込んでくるルナマリア。小さい頃からそれが当然だったのだが、そろそろ個別でも良いんじゃないかと思わなくもない。だが、この毛並みの手触りはなんとも言えない極上感がある。それ故に言い出せない擬かしさ。
取り敢えず、後二ハウル(時間)は寝よう。
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未だ日も昇らぬ時間に、目が醒める。【並列思考】を使う様になって、睡眠時間などの意識割りをし始めてから随分と精神的疲労は無くなった。お陰で、一日三ハウルも寝れば(思考別に見れば其々八ハウル程になるが)問題無く過ごせる様になった。ハーフエルフが何処まで長生きするかは解らないが、時間は有限だ。少しでも空いた時間にやるべき事をやって、知識を増やしたり趣味の裁縫をして小銭稼ぎをし、のちの悠々自適生活の糧とするのが今の目標だ。
ルナマリアを起こさない様に起き出し、洗面所に行って顔を洗い歯磨きをして髪型を手櫛で整えて【清浄】を自身に掛ける。【清浄】を掛ければ髪型を整える位で他はいらないのだが、前世からの習慣はどうも抜けない。
作業部屋に移動して、皆んなの下着作製をする。と言っても大した事をする訳ではない。以前に買っていた魔綿花の布…元はトレントの亜種、植物系の魔物が身体に実る綿花を精製して作った布…を裁断し立体成型を考えながら縫っていく。この世界の下着、特に女性用の下着はあまりにシンプル過ぎる。精々色を付けている程度の物が殆どだ。寝間着なども無いに等しく、唯一有ったのがシースルーのネグリジェ。もしかすると下着メーカー勤めの転移者は未だ居ないのかもしれない。別に私は下着メーカーで勤めた経験は無いが、彼女の下着選び等に同行し見たり選んだりしていたので、ある程度のデザインは刺繍で出来る。図柄がよく浮かぶのは花の模様をデザインしたもの。薔薇だったり、鈴蘭とかが割と良い感じと思う。母様にも何枚か作ったなぁ、と思いつつもエリス用の下着が出来上がる。うーん、布地が白だったのが気に食わないが、薔薇の刺繍糸は淡いピンクなのでまぁ良いだろう。因みに作っているのはフロントホックタイプブラと、腰横で結ぶビキニタイプ。この世界にはゴム製品が無い(隈なく探せばあるかもしれない)ので仕方ない部分だ。勿論、プラスチックも無いのでホックや調整の部分は全て金属(ミスリル製)で作っている。
興が乗って来たのでイレースのを作る。赤龍人なのだし、赤がベースの方が良いかと思い裁断した布地に色を染める粉を振りかけて紅く染める。色斑が出てないか確認して、裁縫。刺繍糸は先程使ったピンク糸を使って刺繍していく。色味的にはピンクよりも白だし、胸のサイズを考えるとちょっと大人しくなってしまうが赤龍人って種族が高貴さを兼ね備えていそうな気もしたので百合を模した刺繍にした。まぁ悪くない出来栄えかな。
こうして自分とルナマリアの分を除く五人分を作り上げると、外が明るくなって来た。
皆の朝食の準備に取り掛かる。と言っても大したものを作る訳でもない。サラダに、つみれ状にした肉団子を入れたスープ、後はコーンの様な野菜を乾燥させて粉にしたものに水を加えて練り上げ、団子にしたものを平べったく伸ばして焼いたもの、トルティーヤ擬きを作る。この世界にあるパンは発酵が弱いのが多くて、堅いものが多い。自作してみようかとも思うが、調理道具やらオーブンやら揃えないと…店売りじゃ普通に『堅いパン』か『柔らかいパン』位しか解らない。発酵させる菌はいるんだろうが調達方法が分からない。才能の『調理』を持ってても材料に関しては知識になるからなぁ。知ってる奴に教えて貰うか、図書館みたいなとこで調べるか。
悩んでいる間に、朝食が出来てしまった。外も薄っすらと明るくなってきている。肉団子スープは大鍋で作っている為、すぐには冷めないだろうし大丈夫だろうと庭に出る。
読んで頂いた方々に感謝を。




