第3章 その16 その決意よりも先の事
何話分か話は書いてますが、清書していない為に間に合いません。
後は適当に食材を買い溜めして宿に戻る。当然、あの高級宿だ。また女将さんに抱き締められる歓迎をされたが、予定調和だ。此方も昨日と同じ様に頼む。金貨七枚は痛いが最大の八人部屋だけに仕方なし。
部屋に着いて直ぐに防音を掛けて貰い、先ずはイレースさんと正対する。何事かと身構える姿は可愛らしい。
「イレースさんには契約をして貰いたいと思います。それが出来ないなら、一緒にパーティーは組めません。それは私の才能や祝福について一切、口外しない事。例え親兄弟にもです。出来ますか?」
「勿論よ。仲間の情報を売るのは御法度よ。そんな奴は冒険者として失格だわ」
「なら契約しましょう。
『我を主として今後従い、主人の不利益なる言動を一切しない事を誓いますか?』」
『え?コレ何?目の前に…ホログラフィー?コレタップすれば良いの?』
ちょっと自分でも驚いたが、イレースさんだけでなくココや兄妹、エリスェールさんの目の前にも現れたのだ。まぁ、いいか。いち早く決断したのはシィル。次にエリスェールさん。テオ、イレースさんと続き、最後はココだった。そして気付いたのはイレースさん。
「ねぇ、アルフ君、コレ、契約じゃ無くて隷属になってるんだけど、どういう事かな?」
「大丈夫ですよ。それは【臣従の誓い】という特殊才能での契約です。他人には絶対に分からない様に、見えない仕様になっています。もしも他から奴隷契約されそうになっても、問答無用で弾きますから安心ですよ」
「そういう事を言ってるんじゃなくて…」
「嫌なら直ぐに解除しますよ。その代わり…」
「あぁ〜もう、分かったわ。このままで良いから」
すいませんね。ちょっと弱味に付け込んだみたいで。仲良くなって恋愛になったなら、結婚も吝かではないですから。
次はエリスェールさんだ。ていうか今日一日で三人分の身体欠損を治せるか微妙なところだ。でもやるしかない。先ずは【中回復】で、火傷部分を治していく。攻撃魔法と違って治癒させる魔法は、継続的に魔力を消費する為にどの程度魔力が必要なのかってのが解り辛い。
頭髪、顔、耳と順番に癒していく。髪は金髪だがベリーショート。長さまで復活はしないものなぁ。包んだマントを剥がしながら、身体表面の火傷も治療していく。裸身が露わになるが構ってられない。額から汗が滴ってエリスェールさんの身体へ落ちる。
かなりキツい。火傷が深層に至っているせいか、魔力の流れが悪いので治す速度が遅い。エリスェールさんも辛そうに顔を曇らせている。
「ルナマリア、エリスェールさんにランドセルに入っている濡れたタオルで顔を拭いてあげて。イレースさん、女将さんに桶とお湯を貰って来て下さい」
「分かったわ」
「御主人様、私達は何を…」
御主人様って私の事?むず痒いが今はいい。
「手は足りてる。君たち兄妹はお風呂に入って来るといい」『ココ、その兄妹とお風呂に入ってくれ。恥ずかしいなら妹と一緒だけでもいい』
『そーだね〜かなり汗掻いちゃったし、そうする』
「弟君、一人でお風呂に入れるか?」
「あぁ!?馬鹿に…イッた!シィル。痛い!殴んなって」
「御主人様になんて口の利き方をするのですか?直さないと許しませんよ?」
「分かった、分かったから。直すから」
「御主人様に謝って…」
「早く風呂に行け!気が散る」
「申し訳ありません、では失礼させて頂きます」
シィルって大人微ているな。言動はともかく今は仕切ってくれるのは有り難い。エリスェールさんの治療を続行していると丁度下腹部で止まってしまった。前の持ち主?はなんて事をしやがったんだ。中がズタズタになってやがる。【中回復】から【高回復】に切り替える。思わず、エリスェールさんの顔を見ると彼女も私を見ていた。
「主人、気に為さるな。お気持ちだけで…充分…ですよ」
欠損などを目的とした回復魔法はかなり難しい。
回復魔法は【小回復】、【中回復】、【高回復】、そして【完全回復】と段階があるのだが、どれも体力回復や怪我、欠損を治す魔法とされている。そう、例え【小回復】でも欠損を治す事が可能であるのだ。小さな傷も実は皮膚の一部を欠損しているので同じ事なのである。なら何故、回復魔法に段階があるのかなのだが、簡単に言えば術者の問題だったりする。魔力を流す量や密度を上げる為に段階がある。そしてしっかりと治そうと思うと、対象の身体記憶を引き出して再構築させるのが元々の回復魔法と私は結論付けている。多分、世間には余り知られていない。そりゃ段階で考えただけの方が分かり易いし楽である。【完全回復】などどれだけ魔力が必要か。【高回復】でさえ【光魔法】レベルⅣで推定百は必要なのだ。今はレベルⅦなので半分以下の四十程度で済んでいるから、なんとかなっているのだ。閑話休題。
ちょっと現実逃避仕掛けたが、兎に角もエリスェールさんは何とか全身復活出来た。
自分で言うのも何だが、副業(多分私だけ八個もの副業が出来る)とレベルのお陰か魔力の最大値は三百二十七。現在は百三十六。予想よりも結構使った。お陰で頭痛が痛くて、余計な考証していた訳だが。
腰のウエストポーチから、魔力回復薬を取り出し飲む。流石に全快はしないが頭痛は治まって来た。
「主人よ…本当に治したのか?これは夢ではないのか?」
「夢だったら、一瞬で治ってたんじゃないかな。つまり現実だよ」
かなり苦労して治したのに、夢だったら泣けて来るわ。まぁ、なんにしても良かった。わなわなと手を震わせていたかと思うと、急に起き上がり私に対して頭を垂れるエリスェールさん。え?何事?てか今の貴女はマッパなの気付いて。
「主人よ、この命いや血の一滴まで捧げる所存。是非とも配下に加えて頂きたい」
いや、既に【臣従の誓い】で配下と言っても過言ではないんですけど。それに貴女は私より百歳以上、上ですけどそれは良いのでしょうか?でも肉体的にどう見ても二十代にしか見えませんが。まぁ、頼れるお姉さんで良いかな。
「こんな歳下に、そんなに…」
「年齢は関係ありません!それに我等エルフは長寿の民。百年も経てば変りませぬ」
「あ!そうそう、それで聞きたい事が一つ。エルフは何年生きるの?」
「はっ!………解りませぬ」
「へ?」
「原初のエルフは千四百年程の歳になりますが、未だに衰える気配すら無く」
「は?寿命は…」
「未だ解っておりません。大体は魔物や戦争等で、早く死ぬ事はありますので…大体は百年から二百年と言ったところでしょうか」
マジか。そういや父様と年齢殆ど変わんないのかエリスェールさん。まさか親戚…は名前的にないか。でも知り合いの可能性はアリか。
「主人殿、出来れば、今後はエリスとお呼び捨て下さい」
あーうん、エリスね。うん頑張って主人ぽくなるから。それよりも早く服を着てくれるかなぁ。せっかく治したのに、風邪引かれたら溜まったもんじゃないから。
読んで頂いた方々に感謝を。
明日は本来の更新日ですが、お休みさせて頂きます。次回は11日更新予定です。




