おっさん、死にましたとさ
俺は小山内健司<おさない けんじ>俺は今、大空へ飛び立とうとしている。これは比喩ではない、と言ったらわかってもらえるだろうか?そう、俺は今ベランダの柵を乗り越えようとしているのだ。自殺である。
俺は今年で37才、10年ほど前に会社をクビになった、不況のせいだ。それ以来俺は絶望しながら生きてきた。
しかし、まぁ日常ってのは長く続かないもんだって改めて実感したよ。今日の朝、ATMに行ったら貯金がゼロだったんだわ。人間何があるかわかんないな、クビになってなかったら今頃幸せなんだったんだろうな。
そして現在、6階建てのアパートの403号室のベランダから俺は今身を乗り出している。最初は冗談のつもりだったけど、段々ギャラリーが増えてきて俺も真面目になって来た。そして悦に入った俺は柵の上に立ち,,,
落ちた。うん、落ちた。田舎の母ちゃん、ごめんな、去年から送ってもらったリンゴ、あれまだ食べてねぇや
地面が迫って来た時声がした。
〈称号【日常の破壊者】を入手しました。自動的に効果が発揮されます。〉
はぁ?意味わかんねぇ。その時、首が折れるような異様な音がした。
そして視界が暗くなっていく。あぁ死ぬのか。意識も遠のいていく。
どうやら俺は、走馬灯にすら嫌われているらしい。