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シンデレラになってみました  作者: 椛こま


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27/52

シンデレラになってみました 27話

 

 何故、何故、あんな事故が起こってしまったのか?

 悠人は何度も同じことを自問する。もちろん答えは分からない。

 「何故だ」

 顔を歪めて頭を抱え込んだ。

 「もう一度説明が必要ですか?」

 村瀬が聞き返す。 

 「・・・いや、いい」

 悠人は姿勢を整えると何事もなかったように手で次へと示した。

 「何だか怪しいな?」

 太刀川が進行を止める。

 「何かありました?さっきから様子がおかしいですよ」

 その場にいる村瀬、山崎も、もちろん気づいている。

 「奥様関係でしょう?」

 もちろんそれも分かっていて、プロとしてそっとしといて差し上げていたのだ。

 「何をやらかしたんです?」

 太刀川は身を乗り出して悠人に詰め寄った。

 村瀬と山崎も気持ちは前のめりになる。自分たちはプロなのでもちろん興味があるなどとおくびにも出してはいけないが、この空気の読めない秘書のおかげで理由が分かるのなら、ぜひ知りたい。二人は黙って悠人の返事を待った。

 悠人はまったく聞こえてはいないと手元の進行表を捲った。

 「あ、無視ですか?駄目ですよ、無視は。だいたい社長が心ここに在らずだから悪いんですよ。気になって仕方がないじゃないですか」

 太刀川は悠人と書類の間に顔を挟み込んだ。

 悠人は耐えられなくなりその顔を押しのけた。

 「何ですか?喧嘩したんですか?あの可愛らしい奥様が怒るところなんて想像できないですけど・・」

 「いい加減にしないか、太刀川」

 悠人の一括に太刀川は黙り込んだ。

 村瀬と山崎は一瞬目を合わせると、残念そうに頷いた。

 「進行の確認はこれでいいのか?」

 いつも以上に声を固くして悠人が問い正した。

 「流れはこれで結構です」

 村瀬が応える。

 「十三様のVIPの方の到着はまだ未定ですので、分かり次第報告いたしますが、万全な対応をお願いします」

 山崎たち三人からは少し離れた席に座っていた男が発言した。

 「林さん、その方ってやはり扱いが難しいのですか?」

 太刀川の立ち直りは早い。

 林は十三の秘書だ。

 「難しいですね」

 林はきっぱり断言する。

 「でも、対応策とかはありませんので、ご本人のやりたいように過ごしていただけばいいと思います。御不満があればはっきり口に出されますので、その都度改善していくしかありません」

 「それで大丈夫なのですか?」

 林はにっこりと笑った。

 「大丈夫でない場合もありますが、何をしてもお怒りを買ってしまうこともありますので、出来る事をしっかりやる方がいいのです」

 太刀川は神妙な顔で頷いた。

 「私はなるべく遠くからお相手したいと思います」

 「悠人様、VIPのお付きの方はセキュリティーに対して何かご要望がおありでしたか?」

 悠人は返事をしない。

 「悠人様?」

 山崎は聞こえなかったのかともう一度声を掛けた。

 悠人は微塵も動かない。

 「橘さんは何か言っていましたか?」

 林も声を掛ける。

 悠人は八ツと我に返った。 

 「いや、セキュリティーは十分だと言っていた」

 声が固くぎこちない。

 山崎はチラリと太刀川を窺ったが太刀川はVIPの話に肝を冷やしたらしく、まじめに進行表を確認している。

 「林は橘さんとは面識があるのか?」

 「もちろんありますよ」

 「あの人はどんな人物なのだ?」

 その場にいる全員が一瞬固まる。

 「どんな人物と言われましても・・・」

 林も曖昧な質問に返事を濁す。

 「私が初めてお会いした時からもうお付きをしていらっしゃいましたよ。その時から秘書兼ボディーガードでいらして、VIPのお身の回りのお世話はすべて受け持っていらっしゃいましたね。ですので、お若く見えますが見た目通りのお方ではないと・・・」

 林はそこで言葉を濁した。

 「林さんが初めてお会いしたのって何年前ですか?」

 太刀川の復活に山崎は心の中でガッツポーズをした。

 「二十年前になります。そのころと何ら変わらぬお姿ですね」

 「二十年前!それはすごいですね。30代前半に見えるけどそうではないということですか」

 太刀川は頷いた。

 「で、どうして社長は橘さんの事を、気に掛けるのですか?さっき二人でセキュリティーを確認している時に何かありましたか?」

 悠人の動きが止まる。

 「あれ?何ですかまた無視?ということは何かあったということですね」

 いいぞ太刀川、山崎は心の中で叫んだ。

 「何があったんですか~」

 「何でもいいだろう!」

 畳みかける太刀川を悠人は声で制した。耳元で大声を出されて、太刀川はのけ反った。

 「私だって何が起こったのか判らないのだから、答えようもない」

 悠人はバンっと机を叩きながら立ち上がった。

 「明日の流れは把握した。変更があったらその都度教えてくれ。VIPの到着時間が分かったらすぐ連絡を」

 言い残して悠人は部屋を出て行く。

 残された人たちはその場で顔を見合わせた。

 「いったい何があったんですかね~。何だか明日は波乱の予感ですね」

 太刀川は瞳を輝かせてみんなを見渡した。

 


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