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拉致された

焼け溶けた世界が眼前に広がる。

高温で無理矢理溶かされた街がガラス状の結晶になり人は跡形もなく消えた。

その光景を作った男は無表情にその光景をモニター越しに見渡し、何もかもを消し去ったのを確認したあと、自分の乗る巨大人形ロボットのコンソールを叩いて自動操縦モードに変えた。

「所詮、どれだけ喚こうが、どれだけ世界を変えようと頑張ろうが、待つのは周りを巻き添えに何もかもを破壊されるだけの結果だ」

男は自動操縦モードに帰還航路を任せ、街を見続ける。

壊れさった街を何時までも何時までも眺め続け、街が見えなくなる頃にふと寂しそうに呟いた。

「それでも、どこまでも、家族も友人も恋人も、何もかもを失ったとしても足掻き続けるのだろうな…………俺はそれを美しく思うよ」

男はそう呟いて目を閉じた。

オーバーヒューマノイドと呼ばれるロボットが産み出されたのは人が宇宙に進出してすぐであった。

最初は誰もが便利に簡単に安全に宇宙で作業が出来るようにと産み出されたロボットであり、それは人々を想って産み出された優しき巨人であれというコンセプトで産み出された人々のパートナーロボットであった。

だがいつの日かそれは、製作者の想いを踏みにじり、兵器へと姿を変えた。

現行の兵器を寄せ付けぬ悪魔のごとき性能を、とある天才が備え付け、優しき巨人を悪魔にかえた。

ブレインヒューマンシステム。

人の意識に直接繋がり、人の思考性能を限界以上に高め、あらゆる現象を巻き起こすシステムが、オーバーヒューマノイドに付与されたとき、世界の戦争事情は一色に塗りつぶされた。

ブレインヒューマンシステムには製作者ですら予想外の福次効果が表れた。

それは操縦者によって個人差は現れるものの、どのような人間が乗っても一定以上の戦果を上げ、さらには『脳の思考を拡張させた』結果、『超常の能力』まで発現させた。

結果、人の形をしており、人以上の動きをするオーバーヒューマノイドとはブレインヒューマンシステムは一番相性がよかった。

それはオーバーヒューマノイドには搭載不可能なレベルの破壊性能を持った異能、あらゆる物質を復元させる異能、感情を操作したり、視界を機能不全にしたりとあらゆる現象がブレインヒューマンシステムによって産まれたせいでもあった。

一番人の形をしたオーバーヒューマノイドが戦うイメージをしやすかった結果、オーバーヒューマノイドは本来の形を失い、殺戮兵器へとなった。



金がない金がない金がない金がない金がない金がない金がない金がない金がない金がない金がない金がない金がない金がない金がない。

なんにもない、カードは先日金が払えずブラックリストで親も小さな時に他界し頼れる親戚なぞいない。

これも全部パチンコってやつのせいだ。

あそこで単発終了さえしなければ俺は今日も笑顔で生きていた。

だというのに五万突っ込んで返ってきたのはゼロ。

おいおいどういことだよ、俺にどうしろというんだよ。

真面目に働いたところでパチンコに金使うだけだよ、止まらねーよ。

………どうしよう、リアルに自殺を考えるべきか、それとも自転車操業借金地獄で延命するか……。

いやもうこれは死んだほうがいいな、どうせこの先待っているのが地獄であるならば、普通に地獄に向かっていった方がいいよね。

死のう、飛び降りよう、どこぞの屋上から飛び降りよう、さあ死のう、俺こと伊藤隼人の人生はここで終了します。

じゃあな世界、じゃあな未来、俺はどこぞの屋上から飛び降りんぜ!!


「さあ俺の未来は閉ざされたぁんぬふぅぐぇええええええええ」


俺の意識は、頭にぶつかった固いものと、腹に抉りこまれるように極められ 、明るく来世に期待したいと思っていた先に膝から崩れ落ち黒く染められた。


自分自身が嫌いで、自分の環境も、自分の境遇も、社会も人間関係も全部嫌いだった。

まあ嫌いといっても関わりたくないなくらいの程度の低いものではあるがまあ全体的に人生だるかった。

だから刹那的快楽を求めてギャンブルだとか女だとか、『裏の賭け事』だとか、色々なものに手を出して、そして人生を壊したのだ。

まあ借金も数十万ほどで返そうと思えば、色々我慢すればすぐに返せる額ではあったのだが、まあ結局返さず膨らみ続けるのだろうとすぐに思い至るくらいには人生諦めていた。

何かか大きな転機だとか、まるで漫画のような事件に巻き込まれて人生を大きく変えたいと思っていた、だけどそんなことは早々無い、だから自殺しようと思った。

だというのに今の状況はいったいなんなのだ。

両手両足を縛られ、口は猿轡で喋れなくされ、まさしく拉致されたとしかいいようのない状況になっている。

なんだこれは、なんだこれは、なんだこれは!?

いや、百歩譲って拉致されたということは理解しよう、したくもないし、完全に厄ネタに巻き込まれたのだがまあ許そう。

だが、だがだ、理解できないことが一つ、どころか沢山ありすぎて言い切れんが、本気で理解できない光景が目の前に広がっている。

何故、何故俺は、オーバーヒューマノイド―――人形巨大ロボット―――のハンガーで縛られたまま放置されているのか。

テレビで見覚えのあるオーバーヒューマノイドや自分が『裏の賭け事』で操縦したことのあるやつ、そして次世代機として期待されている構想段階でしかないはずの機体までそこには置いてあった。

正直訳が分からなすぎて思考が真っ白になりかけではあるものの、どうにか冷静に周りを見渡してみれば、整備の人だとかここで働いているであろう研究員が見事に俺を無視して話し込んでいる。

近くを通っていく人ですらチラッとこちらを見ては無視していく。

いや無視しないで今の状況を教えて欲しい、そしてできるなら屋上に連れてって欲しい飛ぶから。

などと考えていると、一人の研究者であろう白衣の男がゆっくりとしたペースで俺の所にやってきた。

「おい、そこのあんた。おうあんただ、今にも死にそうな顔したあんた。あんた拉致されてきたタイプだろ? 残念だったな、お前の才能が認められちまったせいでお前はもうじき死ぬことになる。本当に残念だったな」

いきなりなにを言ってるんだこいつは、胸元のネームプレートには後藤と書いてあり、同じ日本人であろうことは想像に難くはないが、だからと言ってなんの親しみも湧かない、だって状況が訳がわからなすぎるから。

「むーむぐむがむぐ」

「ああ、猿轡されてちゃ喋れないよな、まあだけど言いたいことはなんとなく分かるよ? ここがどこだか知りたいんだよな?」

いえ、知りたいのではなく死にたいのです。

まあ時期に俺は死ぬてきなことをこの白衣の男がいっていたので死ぬのだろうがどうせ死ぬなら自分の意思で死にたい。

「まあここがどこだか教えるとするなら日本の宝須賀にある桧原研究所とかいう場所だ。なんでお前にそんな事を親切にいうのかって? お前が死のうが生きようがここの研究所はお前を絶対に離さず逃げられないからだ」

あ、そうですか長々と有難うございます。

興味はないことはないですが死に行く運命である俺は特に気にはならないです。

「だから、お前は生き延び、かつある程度の自由が欲しくばければだ。実験に生き延び、かつ多大な功績と出世が必要だ。そうすればある程度の自由ができる権力を持つだろうさ、あと高給取りにもなれる」

マジで? 借金返せる? パチンコ行き放題なレベルの金ももらえるの?

え、それなら俺頑張るよ? 人生ドン底からの復活ができるなら俺、死ぬ気で頑張るよ? だって死ぬつもりだったし。

しかもこれ、俺が待ち望んでいた大きな転機ってやつじゃね!?

「……なんか知らんがいきなり目が生き生きとしだしたな……そんなに魅力的な報酬だったか?」

「むーむん」

俺は全力で首を縦にふった。

「そ、そうか、なら頑張れよ、俺も期待してるぜ」

そういって後藤はひきぎみにどこぞかに立ち去っていった。

いや、結局ここががどういう場所なのか教えて貰ってないしなにをするのかも聞いてないのだが……いや、まあ、人生逆転するために頑張るだけだけどね、なんかの才能はあるっぽいし。

「むー!」

俺は体を芋虫のようにくねらせ気合いをいれた。

何故か他の白衣の職員は半径三十メートル以内に入らなくなった。


  ★

暫くすると、なんだか偉そうな髭をした白髪の白衣のおっさんというか爺が軍服のようなものを着たお供を二人つれてやってきた。

お供は凄い美男美女であったがそんなことよりマジですげー髭だなおい、配管工おじさんの髭を十倍伸ばしたような髭だよ、あんなの初めて見たわ。

「あーいいかね伊藤隼人君、君は我が研究所に拉致されたわけだが、そこは気にしないでくれたまえ」

おいおい、いきなりすごいこといったぞこの爺、俺じゃなかったらキレてるぞ。

「話は後藤から聞いておる、やる気は十分らしいではないか、拉致されたタイプでは初めてのタイプだ。期待しておるよ」

「むーむぐ」

「ああ、それでは喋れんな、薫くん全ての拘束をはずしたまえ」

「はい――――失礼します」

そうして薫と呼ばれた茶色がかった髪をしたポニーテールの美人が俺の口の縛りをほどくと、体に巻き付けられた縄もほどく。

あー地味に食い込んでて痛かった。

俺は拘束を解いてくれた薫と呼ばれる女にお礼をいい、爺に向き直る、その時奇異の目で見られたが俺なんかした?

「あー、えっと、これからお世話になります? 伊藤隼人です、えっとお名前をうかがってもよろしいでしょうか? いや、無理ならいいのですが」

まあとりあえず社会人の嗜みとして自己紹介をする、どうにも間抜けっぽいがそこはほら、やっぱ常識だし…………まあ拉致するような人たちが常識を常識として認知してくれるとは思わんが。

そう思っていると、爺は愉快そうに笑った。

「くはははは!! 貴様、中々に面白い狂いっぷりだな、普通ここは怒り狂って胸ぐらを掴むところだよ、ふむ、よい、教えてやろう。私の名前は一條榊いちじょうさかきここの研究所の全てを取り仕切るものだ」

なるほど、つまり超偉い人だということか、なんでそんな人がここに?

「今までの1番生きがいいと聞いていたのでな、一目見ようと思ったのだよ、ふむ、正解のようだ、これは楽しみだな」

「えっと……一体何が楽しみなんで?」

「そんなの決まっておるだろう!! 君の体に改造を施し宇宙人との戦争のためのスーパー戦士を作るのだよ!!」

…………な、なんだって!! つまり宇宙からの恐怖の大王!! ノストラダムスてきあれか!! これはあの編集者に手紙送らなきゃ!!

「つまり君はスーパーロボットを駆るスーパー戦士になるのだ!! ワシのロマン叶えてくれるな? ちなみに手術式は完成してないから人体実験の要素を多く含むが我慢してくれたまえ」

……いや、肩にポンと手を置いて慈愛の眼差し向けられましても……え、ウソ、マジで? マジなの?

こんなとち狂ったことマジで言ってんの? 怖い。

「さあレッツ人体実験!!」

「――嘘だろぉおおおおおおおお!! 」

俺は人体実験された

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