同い年
土間に足を踏み込むと、中は見た目通りの立派な日本家屋だ。
目の前には大きなふすまがあり、三角の天井はとても高い。
一段上がった廊下は、揃った木目が高級感を感じさせるのと同時に、
過ぎてきた長い年月を思わせる重厚感がある。
スタスタと足音が聞こえたかと思うと、
左の壁から袴姿の少女が現れた。
「おかえりなさい、椿さん。伊織さん」
玄関まで出迎えてくれたのは、
茶髪を肩のラインで揃えた大人しげな少女だった。
手にはお茶とお菓子を乗せたお盆を持っている。
「七ちゃん、お婆ちゃんはどちらかしら」
「今は奥の間に。ちょうどお茶をお届けにいくところでして」
「あら、ありがとう。私たちも一旦荷物を置いたら向かうわ」
七ちゃん、と呼ばれた少女は、そこで視線を僕に移した。
「日照雨七海と申します。
これから、よろしくお願いします」
「あっ、こちらこそ、よろしくお願いします。
僕は、遠野伊織です」
落ち着いた一礼に、自分の番だということを忘れて、
僕は慌てて自己紹介をした。
土間にいる僕たちとは違い、
七海という少女は一段高い段差の上にいるが、
身長は僕と同じくらいだ。
緊張してしまった僕とは対照的に、
ふんわりと優しくほほ笑んでる姿は
見た目以上に大人びていると感じた。
「伊織さんのことは、椿さんから聞いております。
私のことは七ちゃんとお呼びください。
では、お茶が冷めてしまうと悪いので」
そう言って優しくほほ笑むと、
彼女はスタスタと行ってしまった。
丁寧でかつ優しい対応に、僕がぼんやりしていると、
「彼女、あなたの一つ下だったはずよ。高二だって言っていたもの」
「えっ?!それホントですか?!」
確かに見かけは幼いというか、同年代くらいだろうとは思っていたが、
あの佇まい、身のこなしをみていると年下とは思えなかった。
「ちょっと七ちゃんも緊張していたみたいだけれど、
きっと良いお友達になれると思うわ」
どこが緊張していたのか自分にはさっぱりである。
「そうだといいです」
年が近い、なら、きっと会話も弾むだろうか。
思えば病院に入院してから椿さんや先生などとしか話していない。
呼ぶには気恥ずかしいけれど、
七ちゃんの高校生活が気になるところもある。
それに僕だって、今の現状をきちんと理解してはいないのだ。
いつの間にか椿さんは靴を脱いでおり、
そのまま家にあがったので、
僕も急いで靴を脱ぎその後を追った。