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雑記  作者: 真四知杣華
2018年3月
99/100

故由

この家に居るのもあとほんの僅かになった。この世に生を受けて18年、ずっとこの家で暮らしてきた。私はあまり思い出に浸ることの無かった人間ではあるが、流石に名残惜しいものがある。


荷造りも終わり、やることもなくなった私は、掃除をしていた。ふと目に留まったのは、小学校低学年あたりに作ったであろう、ダンボール製の宝物入れだ。


中には当時のお気に入りのおもちゃ、DVD、シール、自作の節分のお面、筆ペンで描いた落書き、など。えも言われぬノスタルジーを感じた。今ではほぼ忘れ去られていた在りし日の断片が突然舞い戻ってきた。


そして一際目を引いたのは、その箱の底にあった一冊の本であった。小学校低学年のとき、すなわち今から10年程前買ったであろうその本は、まるで新品同様のようなきれいな出で立ちで佇んでいた。


その本というのが、小泉吉宏氏著の『ブとタのあいだ』というコミックエッセイだった。当時としては、このゆる〜い感じのテイストの絵が気に入り、購入したのだと思う。今パラパラと読み返してみると、活字の多さにびっくりした。中身は活字が大半で、各章の終わりに4コマ漫画が一つある、という構成だった。当時は、今よりも勿論活字に対する耐性が無かったため、活字は完全に読み飛ばし、4コマ漫画しか読んでいなかったようだ。それだけでも充分楽しんでいたような記憶がある。それ故、当時ササッと読み終わり、本に傷や乱れがつかずにきれいな状態が保たれていたのだろう。


衝撃的だったのは、今になって見てみると、非常に為になる内容であったことだ。自分とは一体なんなのか。生きるとは一体なんなのか。そんな、深いことが書いてあるとは全くもって思いもしなかった。


人生に迷いがちな私にとって必要だったものは、過去既に手に入れていた。存外不要だと思っていた過去にも答えはあるものだな、なんて感慨に耽りながら、この本を引越し先に持っていくことを決めた。

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