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夜陰
静謐なる夜は嫌いではないが、好きでもない。
私の家の周りには何もない。
昼も夜も動的な景色変化は見られない。
人の気配はいつだって微塵もない。
だが何故だろう、夜には何かの気配が在る。
物質的な緊張が空気に潜んでいる。
まさに夜の静けさの中にこそ現れうる不快感。
昼夜逆転した私にとっては夜こそ親愛なるモノであるが、決して相容れうるモノではない。
夜とは越えられたモノだ。かつて人々に恐れられていた絶対的な闇は、既に今の人類にとっては大したものではない。
階級区分的に考えると、かつて人間の上位種であった夜は、今となっては完全なる支配下たる下位種なのだ。
とはいっても、必ずしも下位ということではなく、私のような孤の中の者には、厳しく厳かに台頭する。
誰だって下位のモノに支配されるのは嫌だろう。
そんな、不快感に満ち満ちた夜に包まれた静寂には耐えられない。
喧噪よりも静寂の方がもちろんいいが、闇の中では縋りたいものだ。




