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近年の失楽園

作者: 枯木人

「ずるい。そう思わないかべヒモス?」

「どうしたよ? レヴィ。」

「いや、最近人間界の小説読んでんだけど、暴食とか強欲とかが優遇され過ぎて何かずるい。特にベルゼブブが最近人気でアレな気分だ。」

「しゃーねーだろ。元々あの悪魔かっこよかったし。『地獄の祭典』で変なイメージ持たれる前と大して変わらないんじゃね?元神だし。」


 レヴィアタン(人型省エネモード)は溜息をついた。


「だがよぉ。俺、最近真面目に凹んでんだよ。過去の俺輝いてたじゃん。海のレヴィアタンに丘のべヒモスっつーくらい暴れてて7つの大罪を司る大悪魔として恐れられてたのに……いつしか食用扱いだし最近じゃリヴァイアさんって美女扱いされたり、レヴィアたんとか変な感じにさせられて幼女にされるし俺のアイデンティティが…いや、元々俺は両性偶有だけどさ、やっぱイメージってあるじゃん。俺ヘブライ語で【水の怪物】だよ?大蛇だよ?幼女じゃないよ?」

「はっ!」


 そんなレヴィアタンの嘆きをべヒモスは鼻で笑った。それを受けて嫉妬を司る大悪魔レヴィはむっとして噛み付いた。


「何だよ。」

「お前なんてまだいい方だろ。俺なんて……食肉扱い。雑魚扱いで……最後の方のダンジョンじゃモブだぜ?ゲームだとある程度レベルが挙がったら確実に勝てる相手で物語だと相手の引き立て役にしかならない。しかもだ、コンセプトが固まってないからそれ以外の登場はなしだ。」


 だんだんと声に元気がなくなって行くべヒモスにレヴィアタンもかける声を無くして2人揃って落ち込みだした。そんなところに他の大罪認定大悪魔たちやソロモンの悪魔たちがやって来る。


「おっすおっす。元気してた?」

「あ゛ぁ?仕事無さ過ぎて元気余りまくって困るね。このままじゃ怠惰の大罪まで手にしちまいそうだよ。」


 先程話していた暴食や時々嫉妬の大悪魔でもあるんじゃね?と噂されているベルゼブブが酒を片手に声をかけて来た。


「あらっ珍しい。みんな集まってるじゃないの。」

「アスモデウスか……お前はキャラブレしないからいいよな。唯一の色欲の悪魔だし。男でも女でも問題ないし。」


 その言葉を受けてアスモデウスは持っていた酒瓶を握り潰した。


「あ゛ぁ?皮肉ってんのか?サラに本気でホレてた俺を。悪魔が人間に恋するなんて滑稽ってか?」

「あーまだ引き摺ってたんかよ。悪魔の癖に。」


 周囲がうんざりした感じになるのにお構いなしにアスモデウス(省エネ女体化バージョン)は発言者のべヒモスを指さして非難した。


「あー!悪魔差別だー!ひっどーい!悪魔だって恋したいし!糞ラファ公め……元々3対6枚の翼の2枚で顔を2枚で足を、隠して後の2枚で飛ぶ『空飛ぶ燃える蛇』って仇名の癖に……超絶イケメンに成り代わりやがって……お前なんて『聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな』って書かれた悪趣味な扇に埋もれて堕天しろ!今の俺なら愛せる!」

「ラファエルもだいぶ迷惑だと思うよ。後、あの扇は支給品だから彼の趣味じゃないね…」


 悪魔王ルシファー(省エネ優男バージョン)が苦笑い気味でアスモデウスを宥めた。


「はぁ、それにしても最近俺ら女体化し過ぎな気がする。」

「それは思う。でもまぁ昔に比べればいいと思うけど。何か雑ぜれば強いって感じで変に動物を合体させた形だったのは超体動かし辛かったし。」

「マモンはいい方だよ。人型が設定してあったから浮浪者みたいな格好だけどある程度簡単にうろうろしてたし。俺なんて何か知らないけどずっと便器とセットだぞ?これ考えた奴何思ってたんだ?」


 そんな悪魔談義に今日は珍しい悪魔が来ていた。彼ら全員がパッと見で誰か分からずに二度見して気付いた。


「うっそ、ベル?」


 そう、怠惰を司る大悪魔ベルフェゴール(無駄にイケメン。ファッションセンスが残念。だがイケメンだから着こなしてるバージョン)だ。


「あれ?前まで廃悪魔だったのにどうして……?」

「簡単さ。現世で俺は大忙しで仕事を熟してるからな。偶にはこういうのもいいと思ってな。」


 彼は手入れもしてない捻れた牛の角にサンタクロースより長く生やした無精髭、それに牛の尾を生やした廃人みたいな男の容貌をしていたはずだ。女体化は確かに人々を誘惑する美女だが…


「まぁ?大昔に『人間の結婚生活は幸福か否か』って議題で討論会したとき俺結婚は最悪だっつってたじゃん。それがある国で爆発的に広がってんのな。もう人生の墓場行きってのが一般化してるレベル。しかもその国じゃ働いたら負けって言う言葉もあってな……その上!便座が……メッチャ快適なんだよ…」

「何それあなたの独壇場じゃない!」

「しかも可愛いは正義とか言う言葉もあってな。もう女体化すれば俺完璧なんだよ。悪魔でも可愛けりゃまぁ仕方ないって感じで受け入れてくれるし!」


 怠惰の悪魔なのに熱く喋るベルフェゴール。レヴィアタンはその姿をいつか見たことがあった。


(……そうだ。これ、俺をフレンド招待するためにアプリをダウンロードさせようと色々言ってた時のモード…)


「っつーことで皆でしようぜ。デモンズロードコレクション!結構細かい所まで悪魔を網羅してるから皆もいるんじゃね?育成して自分のキャラを作ろう!」


 この後チュートリアルまでクリアしてゲームした後全員が女体化されていたので俺格好いい!を期待して頑張ろうと思ってた半分が脱落。残った面々は優遇されていたメンバーだったので男女があったり、はたまたTS上等でやりこんだ。


 本日も失楽園は平和だ。




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