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世界が俺の邪魔をする  作者: キヨ
第一章 懐かしき故郷での日々
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第八話 婚約話

 アルフは自室で研究をしていた。

 研究と言ってもそこまで難しい事ではない。むしろアルフにとっては簡単な分類に入る研究内容だった。

 その研究内容とは呪いについてだ。


 そもそもの始まりはヒースが王都で親友の公爵から頼み事をされた事から始まる。

 親友の頼み事と言うだけで断れないのに、その内容がその公爵の愛娘に掛かった呪いの解呪と聞いて、直ぐ様二つ返事で答えたらしい。

 ヒースは魔法について詳しくなく、呪いの解呪をする事になったリーナとアルフに「もし自分の息子が呪いに掛かったらと考えると断れなかった」と言っている。

 そう言われるとリーナとアルフも断れず、なしくずし的に呪いの解呪をする事になったのだ。


 しかしリーナは呪いは専門外であり、解呪のやり方は想像もつかない状態で、困り果てた両親の姿を見てられなくなったアルフが呪いの解呪を引き受けたのだ。

 勿論ただの子供には任せられない話だが、アルフにはワイバーン討伐と言う立派な功績があるし、アルフ本人にも勝算があった。

 アルフはワイバーンをどうやって倒したのか、呪いの解呪のやり方はどうするのかなど聞かれては困る話題もあったのだが、その辺りは上手くはぐらかして、今は部屋に閉じこもって研究中と言う訳だ。


「一からやるってのはやっぱり厳しいな」


 何故呪いの解呪に一からの研究が必要なのかを一言で言うと、技術の独占だ。

 技術の独占と聞くと悪い事でもしている様だが、魔法技術に関しては仕方無い面がある。

 王都では魔法技術を教える学園があるが、そこで教わる魔法は基礎の基礎であり、誰でも知る事の出来る魔法が殆んどだ。

 一方呪い等の特殊な魔法は、親から子へ、師匠から弟子へと言った風に広まりにくく、絶えてしまいやすい伝え方で伝えており、当然その魔法を使うには並々ならぬ苦労と長い時間を費やす事になる。

 呪いはその特性もあり殆んど絶えてしまった魔法技術で、呪いの解呪はアルフでも一から研究せざるを得なかったのだ。


「大体は解ったんだけどな……術式が問題だよな」


 普通の魔法使いなら数年は掛かる研究をアルフは僅か数日で進めていた。

 これはアルフのチートな魔力量だけではなく、アルフの前世での少々特殊な趣味が生かされた結果だ。

 アルフはアニメや漫画を見たり読んだりする事で、転生直前は異世界転生物にはまっていた。これだけ聞くと日本ではそれなりにありふれた趣味に聞こえるが、アルフが少々特殊なところは魔法や陰陽術の存在を信じて、実際に調べまくった事だろう。

 東洋西洋を問わず、インターネットを使ったり、実際に現地に行ったりして集められた情報には、残念ながら魔法や陰陽術の存在を決定付ける物は見つからなかったが、そうして集められた情報は今異世界に置いて見事に役立っていた。


「闇属性と無属性魔法である契約魔法の複合魔法。ここまでは解ってるだけど……」


 アルフは呪いが闇属性と契約魔法の複合魔法であることまでは突き止めていた。これだけでも充分に称賛に価するが、目的は呪いの解呪であり、それだけでは不充分であった。


「術式をイメージで代用するのにも限界がえるだろうし……」

「アル、入るぞ」

「父さん? 良いよ」


 アルフが悩んでいると、ヒースが部屋に入ってきた。

 ヒースは机の上に山積みにされた本の量に驚きながらも、特に気負った様子もなくアルフに声を掛けた。


「どうだ? やれそうか?」

「呪いの実物を見てからだけど、たぶんやれると思う」

「おぉ! 凄いじゃないか! 流石アルだな」

「い、いや、俺がしなくても母さんがやったと思うから……」


 褒めるヒースと照れながも謙遜するアルフ。その風景は片方が転生者だとは思わない程、ごく普通の仲の良い親子の姿だった。


「いや、リーナは魔導師ではあるが風魔法が専門だから、呪いの解呪は出来ないぞ?」

「そうなのか?」

「そうだ。だから誇っても良いんだぞ?」

「いやー、誇る程の事でもないし……そう言えば魔導師ってなに?」


 アルフは褒められてもお世辞を言われていると考えるタイプだ。だがお世辞と本当に褒められいる時の区別はつくので、褒められているかどうかを取り違える事はない。

 しかし本気で褒められる事には慣れていないので、そういう時は今の様に一先ず話題を変え様とする癖が付いている。


 ヒースも自分の息子が褒められる事に慣れていない事も、それに伴う癖も知っているので、アルフの話題変えに乗ることにした。


「魔導師か、アルなら知っているだろう?」

「いや、知らない」

「知らないのか?」

「うん、階級的に魔法使いより上って事ぐらいしか知らない」

「あー、詳しく言うとだな……」


 ヒースは暫く考えた後、自分でも確認する様に話し出した。


「魔法や魔法使いの呼び方は色々あるんだが、その線引きはあいまいなんだ」

「あいまい?」

「そうだ。普段はアルフが言った様に魔法使いより魔導師が上。ぐらいの知識で充分なんだが、宮廷魔導師とかになるともう少し知識がいる」


 アルフは確りとヒースの話を聞いており、それに気を良くしたのか、記憶が戻ってきたのか、それともその両方かは解らないが、ヒースは先程よりも調子よく喋り始める。


「魔法の呼び方は魔法、魔導、魔術と三種類で、使い手の呼び方も魔法使い、魔導師、魔術師の三種類だ。魔法と魔法使いは普通の魔法の使い手を指す言葉だな。だいたいがこれだ」

「今の俺見たいに?」

「いや、今のアルフは魔導師で良いと思う。その魔導師は基本的に魔法使いの上位と言う考え方だ。具体的には人に教えられるかどうか鍵になってくるな。人々を導けるかどうかも大事らしい」

「……らしい?」

「言ったろ? あいまいだって。最後の魔術師だが、基本的には魔法使いの下位だ。だが術式に重きを置く人や、術式そのものを研究する人の事を指す事もあるから一概には言えないな」

「……あいまいだね」

「あいまいなんだよ」


 アルフはあいまいな定義に不安を覚えたが、そもそも魔法が何なのかはっきりとは解っていないのだからあいまいな方が良いと直ぐに考えを改めた。


 事実、今までこのあいまいな定義で問題が起きた事は無い。少なくも後数百年はこのあいまいな定義で充分だと判断されているのだろう。


「あー、それでだな」

「なに?」


 アルフは今まで調子よく喋っていたヒースが、調突然言葉を濁した事に疑問を覚えながらも先を促した。


「アル、ルンネに何かしたか?」

「……なにってなにが?」


 気にしている事を聞かれてアルフは少し反応が遅れる。しかしヒースは次の言葉を考えており、その遅れには気付かなかった。


「いや、なんかここのところずっと機嫌が悪し、何時も二人でいたお前らが一回もあってないから何かあったんじゃないかと思ってな」

「別に何もないよ。そういう時もあるし、そもそも何時も二人でいる訳じゃないんだけど?」

「あー、いやー、そうなんだが……」


 明らかにヒースの様子がおかしいのだが、これには訳があった。

 ルンネの機嫌が悪くなった事に伴って、リーナとフランも我慢してきた不満が漏れだし始めた為に、ヒースとアレンに対する家庭内での風当たりが強くなったのだ。

 彼女達は不満をにじませながらも何も言わないし何もしないが、それがかえってヒースとアレンの精神を削っていた。

 特にアレンは家庭内に味方も第三者も居ない為に孤立しており、精神的に衰弱し始めていた。

 このままではまずいと思ったヒースは、事情を知っている筈のアルフに話を聞いたと言う訳だ。


「と言うか、父さん達に原因があるんだから、母さん達の不満を解消してあげれば?」


 ルンネに嫌われる為に兄妹喧嘩してますとは言えないアルフは、事実を隠蔽しつつ話の変更を図った。

 だがリーナとフランに不満があるのは事実であり、それを解消できるのがヒースとアレンである事も事実だ。

 アルフの意見が全くの的外れでない事もあり、ヒースは当初の目的を忘れて追い込まれていた。


「い、いや、それが出来れば苦労しないと言うかなんと言うか……」

「騎士団の任務で半年は王都にいて、その間の領地運営は母さんに任せっきりで、パーティーや夜会は殆んど欠席し、そのしわ寄せが母さんに来ても何も言わず、たまに活躍したと思ったら書類の大半はこっちに送ってくる」

「そ、それはだな」

「言い訳が通用すると? 普通の貴族の女性なら離婚だよ? 母さん優しいから何も言わないけど」

「う、ぬ……」


 畳み掛ける様にしてヒースを論破するアルフ。

 話だけ聞くとただの駄目親父だが、ヒースは王都でも随一の優秀な騎士だ。

 駄目親父に見えるのは、ヒースが政治が苦手で書類仕事を毛嫌いするからだ。しかしヒースのステータスが脳筋寄りなのも否定しようのない事実でもある。


「フランさんは単純に寂しいだけだからアレンさんの方は問題ないだろうけど……うちは違うからね? 父さんが出来る事をしないせいだからね? 解ってる?」

「……すみませんでした」

「謝るのは俺に対してじゃないでしょ? 母さんに謝るんだよ?」

「……はい」


 既に充分に反省しているヒースだが、アルフの説教は続く。

 この長い説教は意図してやっている訳ではなく、アルフ本人も自覚していない悪癖だ。


 やられている方としてはたまった物ではないが、説教の内容は的を射ているので反論のしようがなく、なまじ反論すると説教の時間が倍になるので、誰も何も言わないうちに癖になったのである。

 本人も自覚していないので手の施し様がない。恐らくこの癖は今後も悪化するであろう事が安易に予測出来る。


「そもそも父さんがやれば出来るのに常に全力を尽くさない理由が解らないね。生きる目的がない訳じゃないし、三次元で美人の嫁さんも貰っておきながら怠惰に過ごすとか考えられないね。それとも現状に満足してますとでも言うんですか? えぇ? 人は常に自己研鑽の励む必要があるですよ。じゃないと退化するでしょうが? 違いますか? だいだい「あー、アル。ところでなんだが」……なんですか?」


 アルフの論点のズレ始めた、捲し立てる様な説教をヒースが割って入る事で止める。

 ヒースもアルフの悪癖は知っており、その止め方も熟知していた。

 アルフがそもそもか、だいだいを使った時に割って入るのがコツで、割って入る内容はアルフが簡単には無視出来ない内容でないといけない。

 つまりヒースの命運は次の一言に掛かっている訳である。


「好きな人とか居ないよな?」

「……居ませんがなにか? ルンネは妹みたいな存在ですし、友達すら居ませんよ」

「あ、あぁ、そうだな」

「なんなんですか? いきなり。これはあれですか? 俺に友達は本だけさ、とでも言わせたいんですか?」

「いや、そうではなくてだな」


 友達が居ない事を自虐するアルフをーー村に同年代の子供がアルフとルンネしか居ない環境の問題が大きいと考えたいーー安信した様子で宥めながら、ヒースは話を続けた。


「アルにはまだ言ってなかった事なのだが、呪いに掛かっているのは年頃の女性でな、かなりの美人らしい」

「……で?」


 年頃の女性、しかも美人と聞いて反応しかけたアルフだが、反応すると面倒な展開になりそうだったのでなんとか自制する。


 年頃の女性と言うと二十代程を想像するが、この世界では二十歳はすでに行き遅れである。

 この世界での年頃の女性とは十五歳から二十歳になるまであり、美人は美少女と言い換えて問題ない。

 つまりヒースの言葉を日本の常識に当て嵌めると「呪いに掛かっているのは美少女だ」となる。アルフが反応するのも仕方無いと言えるだろう。


「フェルゼンの奴が過保護なのと、呪いのせいで婚約者は居ないらしい」

「……」

「だが公爵家の娘が婚約者も居ないとなると色々とまずい。そこで今回呪いが解けたら婚約者を探す事になってな」

(嫌な予感しかしねーよ……ルンネをモフってるだけで満足だよ……あ、ルンネと喧嘩してたんだ……)

「だが過保護なあいつは娘の事を考えて家柄や利益ではなく、相手の人柄で決める事にしたらしくてな」

(やめてくれ……俺は平穏に過ごしたいんだよ……ちくしょう、アルフの奴め! なにが自由に過ごして良いだ! こんなイベント聞いてないぞ!)

「それであいつは親友である俺の所に話を持ってきたんだが……」


 ヒースは無表情のアルフがーー心の中は大荒れだがーー驚く所を想像してニヤニヤしながら、とんでもない言葉を発した。


「アル、その娘の呪いを解いて、婚約を前提に付き合ってみてはどうだ?」


 アルフは取り合えず、テキトーな事を言った本来のアルフに文句を言うことに決めた。


 裏設定その伍


 貴族の恋愛

 王国における貴族の恋愛は割りと自由だ。王家が自由恋愛を推奨しているのもあり、政略結婚は殆んど無い。


 王国騎士団長「うん、まぁ、良いんじゃないかな?」

 王国騎士副団長「政略結婚は許しませんよ?」


 尚、恋愛に関する文学も発達しており、様々なジャンルが存在する。


 王国騎士団長「そう言えば親友が自分の妻が読んでいた本を見て「腐ってやがる……」って言ってたな……何の事だ?」

 王国騎士副団長「少し憔悴した様子の知り合いに「淑女の嗜みに理解を示すのも貴公子の勤めだ」と言われたのですが……何の事ですかね?」

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