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Take Rock5

私はこのROCK5をありったけ購入した。

店を出ると、相変わらずの電子レンジのなかにいるような暑さである。

右手には大量の500mlボトルの入ったレジ袋がぶら下がっている。

しかし、その重みを体が知覚し、疲弊するよりも先に私の頭の中は好奇心と喜びで満ち溢れていた。

私は夏の日に森を駆け回る少年だった。

ただ、違うのは空気は排気ガスですさみ、木々の代わりに立っているのは高層ビル群であることのみだ。



研究室につくと、そこにはいつもどうりの日常しかなかった。


微炭酸飲料ROCK5。

改めて見るとメーカーが何の勝算をもって、売り出したのか皆目見当のつかない飲み物だ。

気味の悪い重いパステルカラーのパッケージ、炭酸とは思えない粘度の高さ、強烈な匂い。

けれども、売れる見込みゼロのROCK5はただ発生する舞台を間違えてしまっただけなのだ。

私の勘がROCK5は地球上で最高の化学的密度をもつと言っている。

私は席についてROCK5を早速、様々な角度でみてみた。



私ほど善良で偉大で高貴であってかつ最高のマッドサイエンティストはいないだろう。テーブルや床、壁にまでROCK5との一時間ほど談話が刻まれている。

私ほどの科学者ならば初対面の物質と二人きりにされてもそいつの全てがわかってしまうのだ。

彼は言っていた。

「ぼくはいっしゅんでなにもかもこっぱみじんにできるんだ。どれくらいのものかって?だからなんでもっていってるだろ。このたてもの?ばかにしてんの!?とうきょう?そんなもんらくしょう。にほん?ばかいっちゃいけないよ。ぼくはねこんな地球ぐらいのおおきさならいっしゅんでおだぶつにできるのさ。どう?すごいでしょ?」




私はこの運命的な彼との出会いに息を飲んだ。

彼に会えたこの事実は仮に世界一の美女がガールフレンドになるよりよっぽど素晴らしいことだ。

なんたって彼は宇宙で一番の存在なんだから。

このことを学会にでも発表すれば私は一生楽して暮らせる。


彼は私の実験結果によると人の体内にはいり胃液と交わることで銀河系を一瞬ですっからかんにできる。

この絶対的パワーは国家レベルで競争して欲しがるはずだ。

この秘密をいま、私だけが手にしているのだ。


日曜日。

この日はどんよりとした曇り空が頭上を覆っていた。最寄り駅から山手線を使って新宿まで出た。

もちろん、Rock5と一緒に。

今日は新宿にある大ホールでこのRock5についての驚くべき事実を人々に伝えることになっている。


しかし、その前にある衝動がわたしを襲った

Rock5を一口飲んでみたい。

流石に実際に人体実験を行っていない研究成果を世界に発信するのは気が引けるし、緊張もしているから口がどうしても渇く。

一口でいい、このRock5を一度口に含んでみたい。



ドクトルはRock5を一口だけ口に含んだ。

その瞬間、世界中に交響曲第一番HIROSHIMAが響き渡り、何かが終わったのだった。


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