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神代の戦い

おかしい……プロローグが終わらない。

一応次回でプロローグは終わる予定です。

本編どうなってるの?

すいません!! すいません!! もう少し待ってください。

 真っ暗な空間だった。

 それは真っ暗な部屋という意味ではなく、宇宙(そら)に太陽や星が無かったらこうなるだろうという無限に続くような真っ暗な世界。

 その空間の中心であるように拳大の宝玉が浮かんでおり、その中では様々な形の天体が自己を主張するように輝いている。

 そこに二人の人物が降り立つ、1人は勇者、1人は魔王。

 いや降り立つというのは不適切かもしれない、なぜなら彼らの足は地に足が着いておらず身体は無重力空間のようにフワフワと浮いている。


「ずいぶん殺風景な所だねぇ、神座というのは。僕はもう少し絢爛豪華(けんらんごうか)(きら)びやかな所を想像していたのだけれど」

「確かに殺風景にも程があるな…」


 神座。

 その名の通り神がいる座だ。

 此処に至るためには神へと登りつめる必要があり、2人は数十万の魂を取り込むことによって、それを成し遂げた。

 此処に、あの女神がいるはずなのだが辺りにいる気配はなく、二人の前では宝玉がユラユラと浮かんでいるだけだ。

 神のいる所に神がいない。

 それが意味する所は。


「逃げた?」

「あるいは…」


 魔王の言葉が終わる前に視界を埋め尽くすほどの光の奔流(ほんりゅう)が二人を襲う。


「ちょっ!!!」

「ふむ。やはりか」


 それを予測していたのか魔王は魔防壁を展開する。

 傾斜がつけられたそれは光の奔流の軌道を()らし真っ暗な世界を照らしながら遥か彼方へ消えていった。


「ふぅ、助かったよ」

「油断するな、此処はもう敵地だということを理解しろ」

「うん、すまないねぇ」

「謝罪はいらん、行動で示せ」

「――――― 相変わらず厳しい… もう少し優しくしてくれてもさぁ」

「何か言ったか?」

「いいや何も」


 老若男女全てを魅了してきた微笑で小声で呟いたことを無かったことにする勇者を渋い顔で見つめてから魔王は光の奔流が発生した彼方に目を向けた。

 先ほどまで感じなかった威圧が彼方から波濤(はとう)のように押し寄せてくる。

 かって経験したことのあるそれは、神威。神だけが纏うことを許された威圧であり多分に怒りの意思が混じっている。

 あの女神が激怒しているのだろう。良い様だと心の底から思いほくそ笑む。

 その怒りを恐怖へ、恐怖から絶望へ塗り替えてやると己の魂に誓う。

 滅神滅相。

 貴様の存在など跡形もなく過去からも、現在からも、未来からも、消し去ってやると。

 さあ―――― 我等の怒りを知れ!!!

 

 二人は空間を飛ぶように女神に向かって進んでいく、推力もなく、ただ念じるだけで体が思うように空間を飛翔する。

 彼方の距離はほとんど一瞬で縮まり二人は女神の前にたどり着く。

 言葉は不要。

 勇者は魔剣から神剣へと姿を変えた剣を女神の首へ、魔王は魔槍から神槍へと姿を変えた槍を女神の心臓へ、まずは挨拶だと、だが別にこれで死んでもかまわないと、むしろ死ね!!!と斬りかかる。

 だが二人の攻撃はそれを上回る暴威によって弾かれる。

 勇者は弾かれた剣ごと後方へ吹き飛び、魔王は弾かれた槍の流れに逆らわずに上方へと距離をとる。これは二人の武技に差が合ったのではなく、距離の差があったゆえの結果ではあるが、それを踏まえたとしても女神の暴威は2人の初撃をなんなく撃退したという事実に変わりなく。


「これはこれは」

「ふんっ、相変わらずの馬鹿力が」


 それでも二人は余裕を崩さない、少しでも弱みを見せるのは業腹(ごうばら)だとでもいうように。

 改めて二人は女神の姿を見る。

 勇者にとっては初めての、魔王にとっては幾度目かの邂逅。

 その姿は少女だ。年の功は十代からは間違っても出ていないだろうという幼い容姿。足元まで伸びウェーブがかかった髪は薄い金髪で見方によっては桃色に輝き、深海の色を切り取ったように()んだ碧眼。顔の作りは稀代の美術家がこれ以上はないというほどに手をかけたと言えるほどの黄金率で出来ている。

 幼い容姿に纏うのは黒と白を基調にしたワンピースドレスで控えめにつけられたフリルが華やかさを演出している。


「どうして?」


 女神が始めて言葉を口にする。姿に似合った可愛らしい声はわずかに震えていた。

 その言葉は勇者に宛てられたもの。


「どうして、私に剣を向けるの? 違うでしょう? 貴方は魔王を倒すための勇者なのよ?」


 勇者が自分に剣を剣を向けるのは間違っていると女神は言う。


「貴方を導いたのも、貴方にあげた祝福も、貴方を助けた奇跡も、全部魔王を倒すためであって私に剣を向けさせるためじゃない、今ならまだ許してあげる。さぁ魔王を倒しなさい」


 なんて自分は慈悲深いのだろうという顔で言う女神に呆れながら勇者は想う。

 確かに自分は女神に導かれて此処まで来た。生まれた瞬間に女神の託宣で勇者となり、女神の祝福で力を得、危機を女神に救われもした。

 しかし、それは自分が望んだことでは断じてないと断言できる。

 望む者にとって、それは素晴らしいことなのだろう、女神に感謝し、崇拝を捧げ、魔王の首を献上するほどに。

 望まないものにとって、それは苦痛でしかない、生まれたときから人生の道を決められ、望まぬ強大な力を持たされ、死を望んでも女神によって生かされる。

 結局の所、今の結果は女神の見る眼がなかったということ。

 自分などを選んだからこうなったのだと。

 などということは教えるつもりもなく、必死の剣を女神に向かって放つことで返答とする。

 必死となるはずのその剣も女神の暴威によって難なく弾かれる。


「なんで? なんで私の望んだとおりに動かないの? 私の世界のものなのに、なんで私の言うことを聞かないのよ!!! ―――― もういい… もう勇者も魔王もいらない、壊れちゃえ、壊れてバラバラになって、私の前からいなくなって!!」


 信じられないモノを見たように取り乱した後、ヒステリーを起こし女神は二人に襲いかかる。

 そして女神の暴威が形を成した。

 それは戦斧だ、女神の小さい身体には不釣合いなほど大きく柄は長く槍のようで、無骨な両刃の刃は女神の体躯と同じほど大きい、それを軽々と扱う女神の姿は冗談のようで滑稽だが、脅威は特級、一撃も受けたいとは思わない。

 繰り出される一撃は技も何もないが、速度と威力は神速で勇者と魔王は距離をとる。

 それを逃がさないというように女神の戦斧が魔王を追う、その速度は2人の動体視力をもってしても捉えるのがやっとであり、魔王は避けられないとみると槍の柄で受け流そうとするが衝撃を逃がしきれずに後方へと吹き飛ばされた。


「魔王!!!」

「大丈夫だ、奴から眼を()らすな」


 魔王を吹き飛ばした戦斧は勢いを衰えさせることなく勇者に迫る。一撃で胴を両断されるだろうそれを剣で受けても剣ごと叩き切られるのが目に見えている。


「なら」


 次の瞬間勇者の胴は戦斧の一撃で両断され女神の顔に笑みが浮かぶ。しかし次の瞬間胴を両断されたはずの勇者が女神の顔に剣を突きこんでいた。

 女神が両断したと思ったのは余りに速く動いたことによって発生した勇者の残像であり、互いが神速で動く中でさらにその上をいく勇者の速度に女神は驚愕しながらも顔に迫る剣から身を捻って逃げる。


「逃がさん」


 その不安定な体勢の女神を逃がすまいと体勢を立て直した魔王が槍による連撃を女神の胴に向かって放つが女神は魔王に向かって先程放った光の奔流を撃ち込んで魔王を牽制し距離をとる。

 女神の神威が増していく、それは思い通りにいかないことへの子供の癇癪(かんしゃく)に近い怒りからくるものだったが二人を威圧するのには十分だった。

 しかし、それがどうしたと、戦意を燃やし、殺意を纏め上げ、2人の神威も増していく。 

 前哨戦はこれで終わり、さぁ主戦の幕を挙げるとしよう。

 神代の戦が幕を挙げる。


「邪魔邪魔邪魔邪魔―――― 邪魔なのよ!! 壊れちゃえ!! 消えちゃえ!! 死んじゃえぇぇぇぇぇぇぇぇ」


 女神からは最初こそあった(おごそ)かさは無くなり、姿特有の幼さを爆発させ暴れまわる。その姿は駄々をこねる子供のそれだが周囲に撒き散らす暴威は空間を切り裂き、衝撃が重なり合い視界を歪め、全身からは雷に似たオーラを(まと)い私に近付くなと辺りを威嚇している。

 身体を覆っていたワンピースドレスはボロボロに破れ既に服としての役目を果たしておらず、女神の幼い裸身は晒され、至る所が切られポッカリと穴が開いているところまである。


「君こそ邪魔だよ、僕の人生(みち)に干渉するな」  


 勇者の身体は光り輝き、その速度は神速で―――飛翔する三人の中でも最速。もともとは女神の祝福によって得た力ではあるが使えるものは使うのが戦争(いくさ)だと限界を超えて駆け抜ける。

 もっともっと速くと。左手は女神に切り落とされたが、それを代償にしたかのように速度はさらに上がる。これが最後だと。全てを賭けて女神に向かって勇者は(かけ)る。


「貴様が死ね」


 魔王の身体は異形へと姿を変えている。

 頭の左右からは天を突くように2本の角が生え、その周りを天体のように幾つもの目玉が飛び交い、身体は硬い鱗と獣毛に覆われ、背中からは蜘蛛の脚に似た触椀(しょくわん)が6本翼のように生えている。

 万人が醜いと想うだろう姿は女神の呪い、しかしそれは同時に王者としての威容も(そな)えていた。

 何度女神の刃を受けたのか神槍はとうに砕かれ身体の至る所が欠損している。それでも前へ、爪牙を奴に突き立てんと。全てを賭けて女神に向かって魔王は翔る。


 戦場は混沌。

 三人の戦闘によってもともとは凪いだ水面のようだった真っ暗な世界には波紋が浮かび、至る所に次元の裂け目が出来ており、軋みという名の悲鳴を挙げている。

 神同士の戦いがいかに凄まじいかを語っていた。

 しかしそれも終わりを迎える。


 それはもともと決まっていたかのように―――― 魔王の肩から腹までを女神の戦斧が切り裂いた。血は出ず内臓が傷口からこぼれることもない、神となったときに血と肉と骨で出来た身体は昇華され精神生命体のそれへと姿を変えている。

 しかし傷は深く魂を傷つけ、身体から神としての力を急速に奪っていく。


「あは、あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは。最初からこうしておけばよかった。さようなら魔王」


 哄笑を挙げながら女神は勝ち誇り、魔王の身体を両断しようと戦斧を振りぬく。しかしそれは魔王の両手が戦斧の刃を掴むことによって止められた。それと同時に魔王の背中の触椀が女神を抱きしめるように拘束する。

 

「ああ、さよならだ」

「ええ、さよならです」


 勇者と魔王。二人の別れの言葉と共に女神の胸にある小さい双丘の真ん中から剣先が踊る。それは先に腹部を大きく撃ち抜かれ既に死に体の勇者の神剣。断末魔の悲鳴も聞きたくないと剣先は上へと跳ね上がり胸から喉へ、喉から頭頂へと女神の幼い顔を切り裂いた。

 碧眼を目一杯開き女神は勇者と魔王を睨みつける。その瞳は憎悪に溢れ、勇者達を許さないと語っている。

 自分だけでは死なないと。

 貴様等も道連れだと。

 声無き叫びを女神は挙げる。

 次の瞬間、女神の体から全方位へ世界を破壊する程の光の奔流が(ほとばし)り勇者と魔王を吞みこんだ。     

 

今回も読んでいただきありがとうございます。

評価もしていただけると嬉しいです。

次回もよろしくー

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