はじまりのはじまり
勢いで書いた物で処女作、初投稿になります。
早めに更新したいとは思いますが、すでにプロローグで行き詰っている始末続くかは未定です…。
そんな作品ですが気長にお付き合いいただけると幸いです。
誤字・脱字ありましたら指摘していただけると助かります。
剣と槍がぶつかり合う。
剣は柄の部分に最低限の装飾が為されているが実用に特化された両刃の剣。
刀身からは純白の光が立ち上り、それが魔剣だと語っている。
持つのは純白の軍服に身を包みんだ青年。
槍は柄と石突きに装飾が施された柄は朱に塗られ一メートルはある刃を持つ直槍。
刀身にはいくつもの魔術文字であるルーンが彫られ、それらが淡い光を放ち形式は違えどこれも魔槍だと語っている。
待つのは漆黒のローブを身にまとう壮年の男。
場所はザイロン帝国首都セドライトの王城にある謁見の間。
余裕で数百人は入れる広間は意趣を凝らされた装飾があちこちに見られ部屋全体が一つの美術品として完成されていた。
しかし二人による戦闘の余波によって装飾が施された柱は根元から切り倒され、数年かけて描かれた絵画が描かれた壁には大穴が空き、綺麗に磨かれた大理石の床は所々が捲れ上がり無残な姿を晒している。
かって賑わっていた城下町は炎に包まれ、頑丈な城壁の内と外では列国の連合軍五十万と多くを亜人で構成された帝国軍十万による混成軍が剣を槍を戦斧を打ち合わせている。
整備のいきとどいた通りは両軍の流した血で赤い川を作り、その流れは時が経つほどに太く早くなっていき城下全体を覆っていく。
「君との勝負も今日で最後かと思うと名残惜しくなるね、魔王殿」
「年長者に対して敬語を使いたまえよっと、勇者君」
青年が剣を正眼に構えながら言う。
それに対して男は鼻で笑うと槍の穂先を青年の喉下に突き込む。
「いやいやどうも敬語は苦手でね、努力はしているんだが、かえって相手を怒らせることの方が多くてねっと」
青年は槍を身を捻ってかわしながら男をからかっているのか真面目なのかわからない口調でかえす。
それを、許さんと言うように男の槍は速度を上げながら青年の胸を、腹を、頭を狙って槍の穂先を突き込むが青年は舞うように避けて男と距離をとった。
「僕と君の仲だし、それくらい許してくれても良いと思うんだけどねぇ」
「親しき仲でも礼儀ありというだろう」
青年は肩を竦める。
「親しきっていっても、殺し殺される間柄だけどね僕達は…女神様が決めたね」
「…そうだな、女神が決めたボードゲームの駒だ」
二人の口元に苦笑が浮かぶ、それは苦虫を噛み潰してなを無理して浮かべたような笑みだった。
「面白くないねぇ」
「まったくもってな」
青年は片手で剣を持ち舞台役者のように男に突きつける。
「だけどそれも後少しで終わりだね、苦労したんだよ列国へ赴いて連合軍への参加を促して回るのはね」
「御苦労様と言っておこうか、正直これだけの規模の軍隊を集めてくるとは思っていなかった」
青年は嬉しそうに笑う。
少女と見間違う程の美貌に相応しく、微笑みを浮かべ花のように。
何度も剣を交え、語り合い、剣を交え続けた男の賛辞への嬉しさに。
殺したくて。
殺したくて。
殺したくて。
八つ裂きにしてもまだ足りない…夢にまで見た相手と剣を交え、その魂を刈り取り握りつぶす機会を得られることに。
男は獰猛に笑う。
常に冷静で寡黙な男には珍しく、犬歯を除かせ獣のように。
何度も槍を交え、語り合い、槍を交え続けた青年の努力と権謀術数の見事さに。
殺したくて。
殺したくて。
殺したくて。
木っ端に砕いてもまだ足りない…夢にまで見た相手に槍を突き刺し、その魂を塵となるまで踏み砕く機会を得られることに。
「「では始めるとしよう」かねぇ」
帝都での戦いは激しさを増し、道には死体が重なり合い既に地面が見えなくなりっていた。
兵士達は死体の上を走り、剣を振り、足蹴にしていた死体の仲間入りをしていく。
血の川は計算され尽し整然と並ぶ建物を堤防として城下の隅々まで行き渡った。
上空から見たものがいたならば、帝都自体が血の赤によって巨大な魔方陣を描いているのを見ただろう。
だが今は上空から帝都を見下ろす存在はいない、故に誰もがその存在に気づかずに魔方陣の上で命を散らしていく。
そしてそれは謁見の間にて二人が始まりの言葉を口にした時に起こる。
鍔迫り合いをする者が、
槍で騎馬を牽制する者が、
騎馬の上から兵の指揮をする者が、
戦場にいる者達全てが戦場で起こった異変に気づいた。
まず戦場の至る所にある死体にそれは起こった。
体の端から光の粒子となって空へと昇っていき最後には、その者達が身に着けていた剣や槍そして鎧だけが残される。
「な・なんだよこれ」
「お・おい、お前それ大丈夫なのか?」
「お前こそ、手が……」
「え? は? ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
その光景に戦争中だということも忘れて見入っていた戦場にいる全ての者たちの身体も同じように体の端から光の粒子となって先の光を追うように空へと昇っていく。
「あ・あぁぁぁぁぁぁぁ」
「止まれ、とまれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
「なんなんだ、なんなんだよぉ、これぇ」
「嫌だ、こんなの嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
戦場は阿鼻叫喚の渦となり絶叫や罵倒が響き渡る。
そんな中、自分の体が光の粒子となり始めても動じることなく城を見つめる者達がいた。
それは勇者と今迄苦楽を共にした仲間、魔王の下に忠誠を誓った配下達。
ある者は赤髪を腰まで伸ばし黒と赤を基調としたローブを身に纏った女性。
手には杖を持ち、粒子化を拒むように全身に炎を纏っている。
「あ~クソ、あ~クソ、抗えると思ってたんだけどなぁ、流石は魔王ってことか…………クソッ。勝てよ絶対に!! 勇者」
炎は消え、杖が地面に倒れた。
ある者は全身を堅固な全身鎧で身を包んだ男性、兜の隙間から見える碧眼が強い意志の力を感じさせた。
両手に持つ子供の身長程はある盾には刃が取り付けられ男性が攻防一体の戦士だと語っている。
「行ってこい、勇者」
主が消えた後も、鎧は倒れることなくその場に立ち続けていた。
ある者は眼鏡をかけた銀髪の男性、肩まで伸ばされた銀髪から伸びる耳が彼を耳長族だと教えていた。
粒子化する身体を気にした様子もなく城を見続けている。
「御武運を魔王様」
眼鏡は割れることなく地面に落ちた。
ある者は全身を黒い毛皮で覆われた大柄な男性、鎧は申し訳程度に心臓を守るもののみで手には二メートルを超える大剣を持ち地面に突き立てていた。
男性を覆う毛皮は獣のものではなく自前のものであり、人の頭が載っているべき場所には狼の頭部が載っており男性が獣人だと教えている。
「魔王様に勝利を!!勇者殿に勝利を!!我等に勝利を!!」
大剣は地面に突き立ったまま主に別れを告げた。
帝都の空を幾万、幾億の光の粒子が舞っている。
粒子は渦となり二つの目標に向かって幾筋にも分かれ殺到する。
一つは勇者。
一つは魔王。
二人は光の粒子を避けることもせず、その身に受け取り込んでいく。
やがて光の粒子は一粒も余すことなく二人に取り込まれ辺りは静寂に包まれる。
二人の思考は同じ想いを紡いでいた。
仲間への、部下への、哀悼の意。
それも勿論ある、しかしそれを遥かに凌駕するこの想い。
とうとう辿りついた。この極致。
ああ、胸が躍る。
やっと貴様を殺しにいける。
かつて貴様の傀儡だった勇者はもういない。
かつて貴様に挑み敗れた弱い魔王はもういない。
さあ最後の戦の開戦を宣言しよう。
「「女神よ。我等は汝の手を振りほどこう。祝福などいらぬ。奇跡などいらぬ。ただ信念を貫ける自由をえんがために。我等の手で汝に永劫の死を与えよう。」」
そして世界は裏返る。
ここまでありがとうございました。
何かご指摘ありましたら、よろしく御願いします。