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蒼と紅と翠と  作者: 高浦
5/6

【4】

ウルフとの戦闘後、十数分程度でヘネリアに到着した。


妙な事にあの後は一度も戦闘がなく、良いんだか悪いんだか…と複雑な思いを抱いていた。




「久々に来たなぁ…此処」




広場中央にある大規模な噴水と、その水を浴びてはしゃいでいる子供を見つめつつ私は呟いた。


此処は確か、『彼奴』に出会った場所だ。




「来た事があったのか」



「まぁね」



「…取り敢えず、まずは学園の方を行くぞ軽く覗きに行くぞ」



「了解ー」



私は軽く頷くと、学園の方へ向かって歩いて行くルークの後ろを追った。






†               †               †






「…でけぇ…」



「だね、生徒数も年々増えて来てるらしいし」




ヘネリアにあるヒアリス学園の中に入ると、中々の魔力を感じた。


この学園内では、剣術、魔術、治癒術等の技術を学んだり、モンスターについての実験が行われているらしい。


噂では、総合順位トップ4の実力が桁違いで、生徒の間では『四天王』と呼ばれているのだとか。

と言っても、私はその『四天王』のトップと知り合いなのだが。




「取り敢えず、どっから回る?」



「待て、ジュリ

……一回出るぞ」



「えっ、る、ルーク?」




私の声を無視し、早歩きで学園を出るルークの後を走って追った。




「ちょっとちょっと、ルーク?

いきなりどうしたのよ」



「…視線が痛い」



「は?」



「…視線が痛かった」




ばつが悪そうに、目線を斜め下へと落としながら呟くルーク。


…意外だ。あまりそういうのは気にしないのかと勝手に思い込んでいた。




「…で…どうするの?」



「この服だといつも目立つ…お前みてぇな格好してぇ」



「えっ!?

私みたいな!?


ルーク…もしかして……スカート履きた―」



「馬鹿かお前は?」



「ごめんなさい」






†               †               †






「はい、これ


私ドアの前で待ってるから、着終わったら呼んで?」



「ん、おう」




ルークは、私からルーク用の服一式を受け取ると、部屋に入って扉を閉めた。



此処は宿屋の一室。

ルークの着替えと、今日の寝泊まりの為に予約したのだ。



そしてあの服は、先程のルークの要望に応えて、二人でヘネリアにあるフリーマーケットへ行って買った物だ。


因みに、私の服装に似せる為あの服は主に私が選んだ。

だから、私の趣味全開の服になってしまった。まぁ本人は気にしていない様だったから、私も気にしない様にしようと思っているが。




「着替え終わったぞ」




何て考えていると、部屋の中から声がした。




「おー、じゃあ入るよ?」




そう言いつつガチャリと扉を開け、部屋へと入る。


その後、私は数秒硬直した。

その様子を見たルークは、いつも以上に眉を潜めながら尋ねた。




「…どうだ」



「…似合う…似合うよ!

いやー、似合いすぎてびっくりしたわ」



「そう…か?」




こてんと首を傾げるルーク。

何だコイツ…可愛いぞ。




「似合うだろうとは思ってたけど…予想以上だった」



「そうか、似合うなら良かった

じゃあ…もう一度行くか」



「はーい」






†               †               †






「…黒蝶?」




学園へ入ると、突然耳元で囁かれ背筋がぞくりと震える。

嫌なくらい聞き覚えのある声だった。




「…久しぶりじゃん、セクハラヒューガ」



「相変わらずつれないなぁー」




けらけらと笑いながら言うコイツ―ヒューガ・ノーズが総合順位1位、即ち四天王のトップでもある男だ。


男性にしては少し長めで、黒に近い濃さの紫色をした髪。切れ長で黄緑の瞳。長い前髪で隠した右目。

髪色が映える、学園指定の白い制服を着ているソイツは、

つて仲間に近い存在であった男だ。




「相変わらず似合わないね、その制服」



「だろ?知ってる

…ところで―」




建物を見回していたルークが此方を振り向くと、丁度ルークの方へ視線を移したヒューガと目が合う。

その瞬間、ヒューガの目付きが変わった。


まずい。

私は咄嗟の判断でヒューガのふくらはぎ辺りに蹴りを入れ、ルークの方へ向き直す。




「ってぇ!

んだよ黒蝶!?」



「黒蝶じゃない、今はジュリ


…ルーク、この馬鹿はヒューガ・ノーズ。んまぁ…一応仕事仲間だった奴」



「…ルーク?

って事はやっぱお前…ルーク・ジャネットか


…何で貴族の野郎が黒蝶と一緒に居んだよ…ふざけんな」




しまった。火に油を注いだかも知れない。


ヒューガは、あまり良い生い立ちではなかった為、貧しい者の事を考えずに自分だけ裕福な暮らしをしている貴族を強く嫌悪している。


それから―私と親しくする男性の事も、だ。




「ちょっと、やめてよヒューガ」



「…ルーク・ジャネット…ねぇ」




ヒューガが、切れ長の目さ更に細めてルークを睨んだ。

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