プロローグ
時は二十世紀初頭、数え切れない程の激動があるであろう世紀の幕開け。ここから世界は大きく進んでいく事となる。
進歩と破壊を交互に織り交ぜながら新たな時代へと受け継がれる意思は、いつの日か自らの紡いだ物語へと形を変えていくだろう。
既に神々は不要となった故に、人は神なしでも生きていく事が出来ると宣言するために、人は物語を紡ぎ語り世界を凌駕する。
しからば語るのは、超越の物語。神へ至る道≪ロード≫を駆け上がる物語を作り出す、荒唐無稽な御伽噺。
誰が神を超える人間を作り出そう言うのか? 一体どこの誰が機構のブリキから魂を作りだ出すと言うのか?
両者は共に神に至る道。片や自らが作り出す生物を以て既存の神を凌駕し、片や自らが器を作り魂までも作り出すという神に勝る技量を以て自身を神の領域へ上る。
片や人は神の喰らう事で駆け上がる神殺しを肯定し、片や神に作られた己たちが新たな存在を作り出す事こそ存在意義とする。
二つは互いに矛盾する。人間は今だ完成されていない故に上を目指し、人は既に完成しているが故に新たに下に存在を作り出す。
人は完成しているのか、いないのか? ただ、それだけの話。されど二つの意見の根底にある感情は同じだった。
そしてその感情とは、『人はかくも美しい』この一文に集約される。
≪銃殺姫≫
果たしてそれはいつだっただろうか? 奇妙な魔術師がくだらない誇大妄想を語った時だろうか?
分からない。ただ、動機はやはり魔術師の言葉だろう。なぜかその妄言がありえないと否定できなくて、その事をいつも感じていたような気がして、信じる以外に道は残されていなかった。
曰く『世界には神がいる』曰く『その神を凌駕する術がある』
何時からか、常々思っていた。人間は、どこに行くのだろう? いや、どこに行き着くべきなのか?
だが、どのように湾曲した答えであろうとその方向性は決まっている。滅びの道などありえない。ならば、進むべきは上しかない。故に私の答えは『進化』すること。どこまでも、どこまでも。その際限がどこなのか?
しかし、そのような事誰一人として分からないだろう。ならば一度、神に上り詰めてから、それを考え始めればよい。
『ならば、神を越える手段を私が用意しよう』
そのために魔術師が私に与えたものは、秘術でも奇跡でもなかった。天に上がるには踏み台がなくてはならない。ならば、与えらたのはその未知の世界に踏み込む為の通貨。天に至る資格は神である事、故にその高みに上がるためには神を参考にするべきだ。そうつまり、払うべき通貨とは神の骸に他ならない。
それは一つ一つは小さな部位ではあるが、その数は数十にもなった。それをどこから手に入れたのかは魔術師が答えた事はない。いや、知る必要がないから私が質問をしなかったからなのかもしれないが。
ただ、それを以て創り上げた。
都合四体。神の血肉を持った魂喰らいの超越種―美しき≪殺戮姫≫達。加えて一つ魔術師たる彼が用意したもう一人、すべての火種となる戦乙女を以てこの死の舞踏開幕する。
五人の女神。≪吸血姫≫、≪毒殺姫≫、≪殺人姫≫、≪斬殺姫≫そして≪銃殺姫≫。さあ、頂上の決戦を始めよう。喰らい上れ、神の座に届くほどの魂になれば神に似せられて創られたその身体も神の領域までたどり着く。
止めれるものなら止めてみるがいい世界の調律者≪セブン・ゲート≫、我々人間は此処まで来た。
「人はかくも美しい。故にその身は神に成り代わり、神を超越するべきだ」